空の広さを教えてくれるオーダーメイドの1台:Bentley Mulliner「Bacalar」発表

普通のBentleyだけでは物足りないという人には、「Bentley Mulliner Bacalar」がぴったりです。Bentleyのビスポーク部門「Mulliner」は、この美しいオープントップグランドツアラー、Bacalar(バカラル)の発表にあわせて新部門を設立。ビスポークブランドとしての新境地を拓こうとしています。

一見したところ、「Bentley Continental GT Convertible」に似ているように見えますが、Bacalarはボディカラーと装飾に手を加えただけの単純なモデルではありません。屋根のない「バルケッタ(小舟)」スタイルを踏襲したBacalarは、同社が最近提供した中でも最も極端なオーダーメイド仕様といえるモデルで、わずか12台の限定生産となっています。ボディパネルは他のBentleyと共有されず、Continental GTと唯一の共通部品はドアハンドルです。

ドアとウィングはカーボンファイバー製で、リアのクラムシェルとトップデッキは軽量のアルミニウム製です。Mullinerはいくつかの部品について3Dプリントを採用しました。特注の22インチトライフィニッシュホイールを装着し、後輪はContinental GTより20mmワイドになっています。

あなただけの特別なグランドツアラー

12台のBacalarは、英国クルーにあるBentleyのMullinerワークショップでオーナーの好みに合わせて手作業で組み立てられます。Mullinerチームは屋根を考慮することなく、Bentley設立100周年を記念して昨年発表された「EXP 100 GT Concept」から多くの要素を取り入れました。

インテリアには、フェンランド地方から発掘された5,000年前のリバーウッド(倒木)が使用されています。BentleyはEXP 100 GT Conceptですでにリバーウッドを使用し、ほぼすべての部品を後のモデルで利用して顧客に提供すると発表していました。メタリック仕上げの塗装にも籾殻から出る灰を使用するなど、サステナブルな素材を多く取り入れています。

コックピットには新設計の、角度をつけたセンターコンソールを備え、ダッシュボードとドアにつながるシームレスなデザインとしました。乗員を包み込むラップアラウンド型の車内には2人分の座席があり、その背後にはScheduloni(スケドーニ)製のトラベルケースが収まります。

予算に実質的な制限が設けられていないため、Mullinerチームはインテリアの仕上げの限界点を超えることができました。エアベントやハンドルのコントロールスイッチ、インフォテイメント操作類、スピーカーグリルにはナーリング加工(表面をギザギザにする加工)が施されています。ダークブロンズとミッドナイトブラックチタニウムのディテーリングと組み合わされていますが、購入者は希望すれば別の素材を指定することができます。

ベルーガレザー、セミグロスレザー、アクセントレザーが組み合わされ、シートだけでも148,199本のステッチが施されています。D型のステアリングホイールにはアルカンタラをアクセントで使用。ギアシフターにはより多くのスエードが使われています。インフォテインメントタッチスクリーンのBentley Rotating Displayは、回転させて3連メーターに切り替えたり、ダッシュボードの中に隠したりすることができます。

パワーユニットには改良を施した6.0L W12 TSIエンジンを搭載。このエンジンは、12個のシリンダーから650馬力と667ポンド・フィート(900Nm)のトルクを発生させ、デュアルクラッチ式の8速トランスミッションを介して、アクティブオールホイールドライブシステムに送り込みます。Bacalarはフロントとリアのトルク配分をアクティブに調整することができますが、Bentleyによると、グリップが必要になるまではできる限り後輪駆動を維持するとのこと。エアサスペンションと48Vダイナミックライドシステムももちろん付属しています。

新時代を切り開く Bentley Mulliner

Mullinerの歴史は長く、その設立は16世紀にさかのぼります。当初、ファミリービジネスとして馬具製造工房を営んでいたマリナー家は、18世紀ごろに馬車の製造を始めたことがきっかけで馬車のコーチビルダーとして世間に認知されるようになりました。Mullinerは長い間、オーダーメイドの馬車を製造してきましたが、20世紀に入ると英国の自動車メーカーからボディ制作の依頼が増え始めます。

そしてMullinerは1959年にBentleyに買収され、社内の一部門となり、以来購入者の満足度向上に注力してきました。現在約40人の従業員を抱える同チームは、主に木工、皮革などを多用したカスタマイズに目を向けてきました。しかし今では、さらに野心的になっています。

MullinerはBacalarの発表にあわせてチーム内で新部門を立ち上げました。Mulliner Coachbuilt、Mulliner Classic、Mulliner Collectionsの3本柱を掲げ、本格的に始動しようとしています。今回発表されたBacalarは、ビスポークを専門とするCoachbuilt部門のポートフォリオの第一弾となります。なお、Classic部門は過去の名車の復刻モデルを製造し、Collections部門ではBentleyの主力車種のスペシャルエディションやカスタムモデルを提供します。

高級自動車メーカーにとって、より多くの車を販売することが利益を上げる唯一の方法ではなく、一部の顧客に対して信じられないほど高級なカスタマイズカーを提供することもひとつの道です。Bacalarの価格はまだ確認されていませんが、12台はすでにオーナーに割り当てられているとのこと。ビスポークへの需要が世界的に高まりつつある中、Bentleyは新たな道を切り開こうとしています。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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