日本未導入マツダ『CX-9』 7人乗り最上級SUVの実力とは?

マツダが北米で販売する2021年モデルの『CX-9』は、日本未導入の最上級3列シートSUVです。ミニバンを作らないマツダにとって、キャビンスペースを最大限に確保したファミリーカーであると同時に、快適性や運転の楽しさも追求した「マツダらしい」SUVと言えるかもしれません。日本の道路事情に合わせて開発された『CX-8』より、一回り大きなボディサイズ(全長5,075mm×全幅1,969mm×全高1,747mm)を持つCX-9とは、どのようなクルマなのでしょうか。

都会的で躍動感あるデザイン

直立したグリルや、円形のDRL(デイタイム・ランニング・ライト)を備えたシャープなヘッドライトなど、フロントエンドはマツダおなじみのデザインを採用。ホイールアーチの樹脂製クラッディングは、スタイルと実用性の両立を示唆するもの。全体的には、良くも悪くも中型SUVの『CX-5』を拡大したような印象を受けます。

2021年モデル マツダ『CX-9 Signature』

北米での販売価格は、ベースとなる「Sport」が34,160ドル(372万円)からと比較的手頃な設定。上位モデルの「Touring」は35,950ドル(392万円)からで、レザーのインテリアトリム、スライド式2列目ベンチシート、電動テールゲートが装備されています。画像のモデルは最上位の「Signature AWD」で、価格は47,980ドル(523万円)から。

パワートレインは全車共通の2.5L 4気筒ガソリンターボエンジンで、250馬力と434Nmのトルクを持ちます。これに6速ATを組み合わせ、前輪駆動方式を標準としています。全輪駆動(AWD)は、Signatureを除くすべてのモデルで1,900ドル(20万円)のオプションとなっています。

EPA(米国環境保護庁)の評価では、前輪駆動仕様の燃費は市街地モードで9.5km/l、高速道路で11.9km/lとなっています。AWD仕様では、市街地モードで8.5km/l、高速道路モードで11.0km/lとなります。

2021年モデル マツダ『CX-9 Signature』

試乗した米スラッシュギア編集部の記者は、「3列シートのSUVでは珍しく、CX-9は運転していてとても楽しい」と評価。見た目のサイズからは想像できないほど運転しやすく、ステアリングはやや軽めではあるものの、正確でライバル車よりも魅力的。サスペンションは硬めに設定され、快適性が少し犠牲になっているものの、フラットなコーナリング性能とスポーティーな走行感覚を生み出しています。

ドライブモードには「スポーツ」が設定されていますが、CX-9にはアダプティブ・サスペンションが採用されておらず、モードを切り替えても走りが大きく変わることはありません。6速ATも最新のライバル車に比べて魅力に欠け、低いギアを維持しようとするため、エンジンノイズは自然と大きくなります。低回転域のトルクを損なわない「ノーマル」モードの方が、CX-9のキャラクターに合っているのかもしれません。

高級感はあるが実用性に欠ける部分も

インテリアでは、2021年モデルの改良で10.3インチのセンターディスプレイに新しいソフトウェアが搭載され、Android AutoとApple CarPlay、トライゾーン・クライメートコントロール、ブラインドスポットモニター、リア・クロストラフィック・アラート、アダプティブ・クルーズ・コントロールが装備されています。最上位モデルのSignatureには、2列目キャプテン・チェア、ハンズフリーの電動テールゲート、アダプティブ・ヘッドライト、パワースライド・ムーンルーフといった上級装備のほか、リアルウッドとアルミニウムのトリムが施されています。

2021年モデル マツダ『CX-9 Signature』

キルティング加工のレザーシートは高級感を演出し、ウッドとアルミの感触も好印象。しかし、ドライブモードの選択スイッチや車載システム用のロータリー/ジョイスティック・コントローラーなど、操作類の中には少しプラスチッキーなものも見られます。試乗した米記者は、「見た目は良いが、実際に指で触って動かすと魅力が半減してしまう」と評価しています。

2021年モデルの改良で、車載システムの操作性は向上しています。また、マツダが提供するコネクテッド・サービスでは、リモートロックやリモートスタートなどの機能にアプリでアクセス可能。米国IIHS(道路安全保険協会)から安全性に関して最高評価を獲得している点も印象的です。

しかし、スペースに関しては、スタイルを重視したがゆえにライバルと比べて不足を感じる部分もあります。CX-9のトランク容量は408L、3列目を倒すと1,082L、最大で2,016Lとなります。対して、強力なライバルとなっているキアの3列シートSUV『テルライド』は、これをすべて上回るスペースを確保しています。

後部座席についても同様で、特に3列目のレッグルームは754mm、ヘッドルーム(シート表面から天井まで)は900mmと、実用性を重視した他社のモデルに比べて劣っています。小柄な子供なら問題ないかもしれませんが、大柄な人は不満を感じるでしょう。

デザインと走りが楽しいファミリーカー

これはほとんどのマツダ車に言えることですが、運転の楽しさとスタイリングを維持することに専念するあまり、実用性でライバルに引けをとってしまっています。しかし、合理的な人にはそっぽを向かれたとしても、そうしたマツダの姿勢を否定することはできません。3列シートのSUVでありながら面白さを追求するCX-9には、マツダならではのファンがつくことでしょう。

2021年モデル マツダ『CX-9 Signature』

結局のところ、できるだけ多くの人と荷物を運びたいのであれば、大きくて”真面目”なSUVはたくさんあります。ですが、ちょっとした遊び心が欲しくて、そのために日常的な要素を少し犠牲にしてもいいと思うなら、マツダCX-9は検討に値するクルマと言えます。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴はマツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』(今ここ)/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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