あのアメ車も電動に… ピックアップトラックのEV化事情

商用トラックの電動(EV)化が進んでいます。アメリカで不動の人気を誇るピックアップトラックも、内燃機関から電気モーターへと徐々にパワートレインが変わりつつあります。新興企業だけでなく、古参の大手メーカーからも新しいEVモデルが続々と登場する中、この市場はこれから大きく動いていくはずです。アメ車の代表格であるピックアップトラックの電動化についてお話ししましょう。

この大規模なEV競争では、大手メーカーが有利というわけではありません。自動車業界での経験が必ずしも優位性につながるわけではないようです。新興企業には自らを縛る伝統や慣習がなく、比較的フレキシブルに活動できるというメリットがあります。ただ、アメリカの伝統的な自動車メーカーも電動化に向けて大きく動き出しています。フォードは先日、ピックアップトラックF-150のEV仕様を、商用バン トランジットEVとともに今後24ヶ月以内に発売すると発表しました。

一方、ゼネラル・モーターズ(GM)は次世代プラットフォーム「BEV3」と、次世代バッテリー「Ultium」を基盤にEVラインナップの拡大を目指しています。GM傘下のどのブランドで発売されるのかは明言していませんが、例えばシボレー シルバードがEV化すれば、F-150 EVと直接競合することになります。中でも、少しずつその姿が明らかになっているGMC ハマーEVからは目が離せません。

フォードとGMの売上高は莫大です。しかし、EVで大きな成果を挙げている新興企業数社に比べれば、同カテゴリーでの活動はやや影の薄いものになっています。

EV市場で最も知名度が高いのは、やはりテスラでしょう。昨年発表されたサイバートラックは、角張ったフォルムで注目を集めたピックアップです。その「防弾」ガラスがイーロン・マスクの予想よりも簡単に破壊できることが判明したため、ジョークや皮肉には事欠かないクルマでもあります。

日本ではあまり知られていませんが、リビアン(Rivian)という会社もEV市場で熱い視線を浴びています。現時点ではプロトタイプ以上のものは作られていませんが、アマゾンやフォードなどから巨額の投資を受けており、決して軽視できない存在です。来年の発売を目指すR1Tは、サイバートラックと見比べるとかなり保守的なデザインですが、既存のピックアップトラックのオーナーを納得させるには有利に働くかもしれません。

ニコラ(Nikola)もまた異例の参入企業です。今年初めに発表されたばかりのバジャーは、まもなく予約受付を開始します。水素燃料電池を使用したトラックの開発に取り組んでいる企業で、より大型のトレーラーヘッドなども開発しています。

ボーリンガー・モーターズ(Bollinger Motors)は、クラシカルなデザインの電動SUVやピックアップを開発中です。独自の路線を切り開こうとしているようで、先日は同社のB1、B2に採用されている特殊な機構が特許を取得しました

商用車での成功がEVビジネスの基盤になる

スポーツカーや高級セダンも魅力的なクルマですが、トラックの市場は巨大であり、オーナーの間ではブランド・ロイヤリティーが強く求められています。また、対法人でもリビアンのように裕福な顧客(アマゾン)を見つけることができれば、巨大な受注につながる可能性があります。

フォードはF-150において、EVとガソリン車のギャップをハイブリッド車で埋めようとしています。法人・個人問わず、ガソリン車からいきなりEVへ乗り換えるというのは抵抗があるはず。フォードのようなラインナップであれば、EVも徐々に輸送プラットフォームのひとつのスポークとして、エコシステムに組み込まれることになります。ここは、テスラやリビアンのようなEV新興企業が、乗り越えるのに苦労しているギャップです。

前述のように、消費者の誰もが電動化を受け入れられるわけではありません。フォードやGMなど大手はいずれ、ガソリン、ディーゼル、ハイブリッド、EVといった複数の選択肢を揃えるようになると思われます。しかし、EVしか販売していないメーカーはそうはいかないでしょう。

かといって、このギャップは決して乗り越えられないものではありません。多くは、顧客のグリーン化に対する意欲にかかっています。例えば、アマゾン向けのリビアンのバンは、既存のガソリン車と肩を並べて走ることになります。ただ、アマゾンはこのような包括的なシステムの開発者には事欠きませんが、中小企業はそうではないかもしれません。

乗用車の需要には浮き沈みがありますが、商用トラックの場合は比較的安定しています。COVID-19のパンデミックにより乗用車の販売が大幅に落ち込んだ時も、トラックの需要は依然として高かったのです。つまり、電動ピックアップの分野で一定のパイをつかみ取ることができれば、EVビジネスを構築するうえで安定した基盤となり得えます。

来年には電動ピックアップが街中を走り始めるでしょう。このセグメントは、これからさらに面白くなっていくはずです。

林 汰久也

愛知県在住 27歳。ハウスメーカーの営業を経て、IT企業のメディア事業に参画。記事制作ディレクターとして店舗紹介記事などの制作に携わる。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。

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