なぜ人は、ラオスに心を奪われるのか

なんとも、安らかな旅であった。これは今からちょうど一年前の春にラオスという国を訪れた時の話である。ちょっとした息抜きのため、憧れの国を訪れた。現在2020年4月、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)の見えない脅威と戦っている。今回の記事もこんな状況の中の、ちょっとした息抜きになればと思う。

憧れの国?ラオスってどこにあるの?何が有名?こんな反応が一般的なように思う。村上春樹も「ラオスにいったい何があるというんですか?」という本を著している。ラオスは東南アジアの国の一つで、東南アジア唯一の海なし国だ。イギリスの旅行雑誌「Wanderlust TRAVEL MAGAZINE」で2015年にベストシティアワードの第1位を受賞していたこともあり、行ってみたい憧れの国であった。近年でも2018年にニューヨークタイムズの訪れるべき場所52にランクインしている。

出発日、私はタイの北部の街、チェンマイにいた。チェンマイからはバスでもラオス入りすることができるが、今回は飛行機を使うことにした。ルアンパバーンという街まで、わずか1時間程度のフライトである。

到着後、散歩がてら登った丘から見た夕日は、前日までいたタイのものより、赤く大きく感じた。翌朝もこの丘から朝日を見ることを決意した。翌日、日の出を見るために丘に登るには真っ暗な中の移動であったが、現地の人はみな起きていて、僧侶にお供え物をする托鉢という行事を行っていた。これは1年365日天候に関係なく行われているらしい。ラオス人の信心深さを目の当たりにしてから、朝日を眺めた。ラオスは山が多いので日の出時刻ぴったりに日を見ることはできない。日の出時刻の少し後に、険しい山から昨日見た夕日より更に赤い朝日が見えた。誇張ではなく、血のたぎるような色だった。

靄の中から顔を出す朝日

ルアンパバーン以外にもバンビエンという街にバスで移動した。日本で収集した前情報では、山道は現地の人でも厳しいと聞いていたが、バスは意外にも快適だった。なんでも、道路が整備されて快適で速く着くようになったらしい。少しの期間で目に見える発展を見せていた。

バンビエンでは山に登り、湖に入り、洞窟の中を歩いた。大した名前もついていない山や湖、洞窟がいくつもある。自然が身近にある国にとってはこの程度の扱いである。最近ではそれらも整備をされ、入場料を取るようになったそうだ。日本では、価値が最初から付いている物を目にする機会が圧倒的に多いが、価値は誰かがつけるものであり、価値が付いていく瞬間を目の当たりにさせられた。

山頂からの景色

5泊ほどの滞在であったが行動をしている時以外はほとんど川を眺めていた。タイとの間を流れるメコン川に続くこの川は、安らかな国で唯一、時間の流れを可視化しているものだった。今日もまた、日が山に向かって落ちる。

力強い山々に落ちていく夕日

なんとなく、また戻ってくるだろうなと思い、日本円にして8,000円分ほどのキープはしまってある。ラオスの通貨であるキープは他国の通貨と違い、日本国内では両替することはできない。ラオスを訪れなければ紙切れだ。今はただの紙切れを丁寧にしまい、疫病の脅威にさらされることなく、自由に往来できる世界への期待に胸を膨らませる。

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