個性あるメルセデスベンツGクラス 初ディーゼルターボのG350d レビュー

今までのメルセデスベンツGクラスというと、ほとんどの読者はV8仕様のG550やAMG G63を思い浮かべるだろう。585psを発生するフラッグシップであるAMG G63は一番憧れる仕様のようだけど、昨年、Gクラス初ディーゼル仕様のG350dが日本に上陸している。今回はその3LディーゼルターボのAMGライン仕様を試してみた。

286psでは、一見パワー不足に聞こえるかもしれないけど、決してそんなことはない。ズバリいうと、この仕様を待っていた顧客がかなりいたようだ。パワーやトルクは充分だし、オフロードでの走行性能はAMG仕様と同様。しかも10km/L以上の燃費はAMG仕様より遥かに優れているし、フラッグシップの2000万円強に比べて、G350dは1200万円と800万円安い。ちなみに、V8仕様のG550は1560万円から。

旧型との共通部品はアナログなドアハンドルとスペアタイヤのカバーだけ。
Photo by Peter Lyon

元々軍事車両だったGクラスが民生用に

Gクラスは実は1979年に、NATO(北大西洋条約機構)の軍事車両として開発されたけど、あまりにも人気者だったので、すぐに民生用にアレンジされ販売し始めた。富裕層にとって、個性と格好よさあふれるこの本格的なオフローダーがすぐ大ヒットになるのに時間はかからなかった。

しかし、面白いことに、40年経った今も、初代の外観デザインから少ししか変わっていない。角張った2ボックスのマッチョで丈夫そうなスタイリングと、それと対照的な丸目のヘッドライトは、初代からキープコンセプトだ。パッと見たら、旧型と変わっていないように見えるけど、実は2箇所意外、全ての部品が新しくなっている。さあ、その2箇所はどこだろう。旧型との共通部品はアナログなドアハンドルとスペアタイヤのカバーだ。親指で思い切り押しながら力一杯で引っ張らない限り、ドアが開かない。昔からのGクラスのユーザーは、その硬いハンドルと重いドアを確認するだけで、本物のGクラスであることに納得するようだ。

角張った2ボックスのマッチョなスタイリングと、それと対照的な丸目のヘッドライトは、初代からキープコンセプトだ。
Photo by Peter Lyon

真っ赤なシートベルトでお洒落な室内

ところが、内装の味は外観とは違う。はっきり言って、驚いた。僕が乗った350dは「AMGライン」のオプションがついていた。専用の外装パーツの他に、インテリアにはAMGスポーツステアリングやピアノラッカーウッドの装飾パネルが用いられていた。または、何よりも目立ったのは、真っ赤なシートベルトと、本革シートの赤いステッチだ。なかなかお洒落だ。まるで、マッチョな外観のシュワツェネッガーに裏地が派手なヴェルサーチのジャケットを着せたような雰囲気だった。

また、センターコンソールの薄型フル液晶の大型ディスプレーは、あまりにも綺麗で解像度が高いので、キャビンのムード作りの第一人者。その中にはとても使いやすいカーナビやインフォテインメントシステム、車両制御システムなどの機能が統合されている。ダッシュボードの中央に備わるのは3つのデフロックのスイッチだ。フロント、センター、リアの3カ所にデフロック機構を持つのは「Gクラス」だけ。

フロント、センター、リアの3カ所にデフロック機構を持つのは「Gクラス」だけ。
Photo by Peter Lyon

G350dの3.0Lディーゼルでパワーは充分

G350dには、3Lの直6ディーゼルターボを搭載しており、286psと600Nmのトルクを発生する。車重2460kgなのに、0-100km/hの加速は7.4秒と結構速いと言える。冒頭で書いたように、このディーゼルの下のトルクは太く、加速性は十二分だ。アクセルを力強く踏むと、同車は重さと大きさを感じさせない。9速ATとのマリアージュは見事で、このATは迷わずにどのシチュエーションでも最適なギア比を選んでくれる。アップシフトもダウンシフトも、エンジンの美味しい領域で行われるので、とても気持ちの良いドライブフィールだ。

しかも、こんなにハードコアなオフローダーにもかかわらず、パドルもついているし、変速からくるシフトショックは目立たない。G350dはSクラスと同様のディーゼルを搭載しているけど、G350dのアイドリングからの再始動時の音や振動は、「ガラガラ」という音なので、まるでトラックのような雰囲気。でも、速度をあげると、当然その音と振動は消える。

大型ディスプレーの中にはとても使いやすいカーナビやインフォテインメントシステム、車両制御システムなどの機能が統合されている.
Photo by Peter Lyon

新フロントのサスとステアリングで走りが向上

新しいGクラスに独立ラダーフレームが採用され、フルタイム4WDも完備。高重心のGクラスでも、シャシーの曲げ剛性が55%上がって安定感が増している。コーナーに入った時のキレとステアリング性、安定感が明らかに向上しているのは、フロントのサスのダブルウイッシュボーン化と、ラック&ピニオン式ステアリングと電動アシストが採用されたおかげだ。「コンフォート」と「スポーツ」の2つのモードがついているが、硬いスポーツモードのほうはゴツゴツした突き上げが多少気になるものの、コンフォートでは路面のウネリを上手に吸収し、ちょうど良いフラットライド。

また、昨年の夏、オフローダーの王者のGクラスで泥道など悪路を走るチャンスを与えられたけど、ローレンジを使用しなくても、同車は急な滑りやすい登り坂をスイスイと登ったし、一つのタイヤが浮いて空転しても、グリップ抜群で走り抜けた。

フロントの新しいサスや、ステアリングの改善、そしてより高いシャシー剛性のコンビネーションが、より優れたオフロード性能を確保すると同時に、より静かでより良い直進安定性も可能にしている。しかも、旧型の少しふわふわと浮くような乗り心地は、よりしっかり目のレベルに変更し、ロールやピッチングが抑えられている。

しかし、クルマがこれだけ大きくなって重くなってくると、小回りがなかなか効かない。大通りや高速道では、もちろん普通に走れるけど、狭い路地や駐車場に曲がると、少し早めに切り始めないと間に合わない時もある。慣れが必要だ。

室内で何よりも目立ったのは、真っ赤なシートベルトと、本革シートの赤いステッチだ。
Photo by Peter Lyon

ライバルとの比較

G350dの強力なライバルには、新型ランドローバー・ディフェンダー、ジープ・ラングラー、トヨタ・ハイラックスサーフがある。G350d含む4台の候補を見てみると、面白い結論が出る。オフロード性能抜群のGクラスを購入するようなユーザーは正直なところ、クルマを汚したり、傷つけたりしたくないので、おそらくオフロードではあまり冒険しないだろう。そこでは、信頼性満点のハイラックスかディフェンダーが有利だろう。でも、ハイラックスは結構古くなったし、エンジンが他と比べて力不足なので、他の3台が好まれることもあるだろう。

激しい凸凹のオフロードを走る場合、アプローチ・アングルはジープが一番優れているのに対して、デパーチャ・アングルはディフェンダーが有利だ。だが、この4台のなかでG350dが一番の高級感とステータス性があり、しかも最高の個性があると言える。だから、あまりオフロードに行かなくても良くて、高級感を求める人はG350dを選ぶだろう。その代わり、クルマが汚れても良く、激しい悪路で冒険したい人はハイラックスかディフェンダーを選択するだろう。

価格をチェックすると、G350dの1200万円に対して、ディフェンダーはまだ日本に上陸していないので、価格は設定していないけど、おそらく1000万円弱になるだろう。それに対して、ラングラーは530万円で、ハイラックスは400万円弱。

まとめ

当然、G350dには先進安全運転支援システム(ADAS)もついている。ACCとレーンキープアシストを一緒に使うと、かなりスムーズで頼れる半自動運転が可能になる。今までGクラスのAMG仕様しか見向きもしてこなかったという顧客がいるようだけど、2000万円を費やさなくても、この1200万円のG350dは充分なパワーもあるし、高級感もたっぷりあるし、しかも充分なステータス性がある。それにいうまでもなく、走りもコストパーフォマンスは抜群。はっきり言って、このエントリーレベルのGクラスの登場で、G550やAMG仕様に手を出さなくても良くなった。

ジャッジメント

さて、G350dのジャッジメントの時間だ。

1)やめておく

2)考えても良い

3)欲しい

4)買う

という4つのランクに分けたところ、

G350dは、「欲しい」だ。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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