前例のないスタイルと本物のエレガンス:Genesis「G80」発売

Hyundai傘下の高級車ブランドGenesis(ジェネシス)は3月30日、新型のミドルサイズ高級セダン「G80」を韓国で発売しました。新型G80は、Mercedesの「E」クラス、BMW「5」シリーズ、そしてAudi「A7」といった歴戦の猛者たちにとっても脅威となりかねない存在です。

先代の「Genesis G80」は、頑丈なミドルセダンでした。しかし、同クラスに属するBMW、Mercedes-Benz、Audiと直接比較した場合、注目すべき魅力がいくつか欠けていました。確かに高級車並みの機能はそろっていたものの、5シリーズのようなシャープで機敏な印象は薄かったと思います。それに加えて、以前のG80はアイデンティティの危機に直面していました。

新型「Genesis G80」は、アルミを多用したまったく新しい後輪駆動のプラットフォームを採用しています。ホイールベースは先代モデルと同じ118.5インチ(3,010mm)ですが、ボディはよりワイドでロング、かつ低くなっています。これにより、同クラスのEクラスや5シリーズよりもわずかに大きくなりました。大型化したにもかかわらず、アルミフレームのおかげで先代より243ポンド(約110kg)の軽量化に成功しています。

パワートレインのオプションも複数用意されています。ベースモデルには、300馬力と311ポンド・フィート(約421Nm)のトルクを発生するターボチャージャー付き2.5L 直列4気筒エンジンが搭載されています。従来の自然吸気3.5 L V6エンジンに代わるものですが、新しい4気筒エンジンの方が軽量かつトルクも大きいのが特徴です。

上位グレードのパワートレインはツインターボ3.5L V6エンジンで、最高出力375馬力、最大トルク391ポンドフィート(約530Nm)を発揮。注目していただきたいのは、先代のG80 5.0では、420馬力と383ポンド・フィート(約520Nm)のトルクを発生する、大柄な5.0L V8エンジンを搭載していたことです。そして、数字が示すように、シリンダー数の減ったV6はパワーこそ落ちているかもしれませんが、より多くのトルクを生み出して敏捷性と加速力を向上させています。

欧州およびアジア市場では、オプションの直列4気筒2.2L ターボディーゼルエンジンを選択できます。210馬力とより多くのトルクを生み出しているこのエンジンは、北米市場には導入されないようです。とはいえ、新しいG80のターボチャージャー付きエンジンには、舌の肥えた北米ユーザーも満足できるでしょう。いつものように、後輪駆動が標準設定で、全輪駆動はオプションです。どちらのエンジンも、変速の滑らかな8速ATに組み合わされています。

新型G80は、エレガント、スポーティ、ラグジュアリーを兼ね備えた、クーペのようなデザインになっています。大きく傾斜したリアガラスとトランクリッドはAudi A7にも似ている点であり、ぱっと見ではハッチバックやリフトバックと見間違えるかもしれません。でも違います。4枚のドアと独立したトランクスペースを備えた、本格的な3BOXセダンです。

Genesisブランドを象徴するクレストグリルは、商標登録されたクワッドヘッドランプのデザインと相まって印象的なフロントフェイスを構成。全体的な外観はSUVの「GV80」にも似ていますが、ユニークなサイドマーカーとLEDテールランプを備えたG80は、朝露のように新鮮です。大胆かつ挑戦的、それでいて控え目なところもあり、さまざまなデザイン要素が破綻せずにきちんと整理されています。ドイツ生まれのEクラスや5シリーズが伝統的(保守的)なスタイルを保持しているのに対し、Genesisのデザインはみずみずしく感じます。

しかし、最大の美点は、オールドスクールなビジュアルとモダンな雰囲気を兼ね備えたインテリアにあります。4本スポークのステアリングは、2本スポークのようにも見えるデザインで、ダッシュボードには3Dデジタルメーターと12.3インチの大型ディスプレイが備わります。また、HVAC(エアコン)操作に物理的なボタン類が採用されているのも良い点だと思います。シートをはじめとする各部品にはプレミアムレザーやオープンポアウッド(木材特有の木目を生かした仕上げ)、アルミニウムが施されています。

自動緊急ブレーキやブラインドスポット衝突回避など、さまざまな安全技術が標準装備されていることも見逃せません。ウィンカー操作だけで自動的に車線変更できる「ハイウェイドライブアシスト」機能も装備。ほか、ドライバーの運転習慣に合わせて「学習」する機械学習機能を備えたアダプティブクルーズコントロールも搭載されています。

2021年モデルの新型Genesis G80は3月30日に韓国で発売されました。一方、北米でのデリバリーは今年後半になる見込みです。Genesisはまだ価格を発表していないのですが、5万ドル~7万ドル(約540万円~756万円)という、同クラスのドイツ車に十分対抗できる価格設定で勝負を挑むものと考えられています。もちろん、日本車にとっても大きな脅威に違いありません。ただ先述のように、保守的なデザイン路線を貫くジャーマンスリーに対し、LexusやGenesisといったアジア勢の挑戦的なデザインは大きな武器になるでしょう。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です