ホンダ「CR-V ハイブリッド」人気の理由と課題とは:2020年モデル北米発表

北米ホンダが3月1日に発売した2020年モデルの「CR-V ハイブリッド」。ガソリンエンジンのみのモデルと並んで、この新たに電気モーターを加えられたバージョンは、単なるお洒落な上位グレードであるというだけでなく、ホンダの世界戦略にとって重要な位置にあるクロスオーバーSUVです。ホンダがCR-V ハイブリッドで目指したもの、そして残された課題は何なのか。北米仕様のモデルをもとに紐解いていきます。

CR-Vの主戦場は北米市場

ホンダの数あるラインナップのなかでも、CR-Vは北米で最も売れている主力車種です。ハイブリッドモデルはCR-Vで最大のトルクを発揮するのはもちろん、システム総出力212馬力を誇る上位グレードです。2020年モデルは、イヤーチェンジに伴いデザインにも小変更が加えられました。ホンダのエンブレムはハイブリッド車であることを示すために青みがかっています。

CR-V ハイブリッドは、環境性能重視のモデルに眉をひそめてきた人だけでなく、燃費効率を重視している人など、より多くの人にハイブリッドシステムを提供しようという目的もあるようです。ホンダがハイブリッド車をCR-Vラインアップの頂点に位置づけると決めたことも、この目的を達成するためです。

しかし同時に、システムはあまり野心的なものではありません。そもそも、プラグイン仕様は今のところありません。EVモードの航続距離はごく短いものなので、2.0L ガソリンエンジンの作動時間は多くなると思われます。最近生産が中止された「クラリティ EV」は、ホンダが北米で展開する唯一の電気自動車(EV)でした。新しいピュアEVは現在開発中とのことですが、ライバルの自動車メーカーに遅れをとっているという事実を見過ごすことはできないでしょう。

どうやら、この種のハイブリッド化はより本格的な電動化への近道であるだけでなく、「ガソリンエンジンが近いうちに消滅することはないだろう」という、賭けでもあるようです。ホンダは2030年までに世界販売台数の50%がハイブリッド車になると予想しています。この予想では、ピュアEVの割合はわずか15%であるとのこと。北米ホンダのオートオペレーションズ部門のアシスタントバイスプレジデントであるSage Marie氏によると、ガソリン車はほとんどのドライバーにとって現実的な選択肢であり、当分の間は受け入れられるだろうが、ハイブリッド車は「低燃費技術を製品ラインアップ全体に展開する最速の方法」である、といいます。

世界的なEV化の流れに期待している人にとっては、かなり残念なニュースだということは理解できます。ホンダはEVに対して消極的な姿勢(少なくとも、あまり積極的には見えない)を取っていることが伺える言葉だからです。もしポジティブな側面があるとすれば、ホンダのハイブリッド技術―特に、CR-V ハイブリッド―は、間違いなく燃費向上には有効です。

レギュラーガソリンの2020年モデル CR-V AWD(5人乗り仕様)は、カタログの平均燃費がJC08モードで15.0km/lとなっています。一方、CR-V ハイブリッド AWDの場合、25.0km/lとされています。より実際の日常走行に近いWLTCモードでも20.2km/lと、非常に優秀な数値と言えるでしょう。

ただ、これらの数値が実際にどれだけ達成可能なのか、という疑問はつきものです。取材陣が試乗したルートは決して壮大なロードトリップというものではありませんでしたが、市街地と高速道路を走行した後、19.1km/lという数字が平均燃費としてデジタル表示されていました。スポーツモードによる走行時間も含まれています。これはあくまで北米での試乗なので、日本とは環境が全く異なるということはご理解いただきたいのですが、それでも低燃費であるという事実は変わらないでしょう。

「ハイブリッド」はあくまで要素のひとつ

実際、CR-V ハイブリッドは燃費を高々に掲げるのではなく、どちらかというとハイブリッドシステムを「単なるひとつの要素」とするようにデザインされているようです。これは、パワフルなクロスオーバーを求める従来のユーザーと、低燃費や環境性能を求める新しいユーザーの折り合いを上手くつけるための工夫だと思います。EVを熱望するユーザーは眉をひそめるかもしれませんが、それぞれの割合を考慮すると、今のところホンダにとって問題はなさそうです。

ホンダが機械式AWDを採用したこともあって、ハイブリッドシステムが全体的にドライバビリティを大きく向上させているのは事実です。ハイブリッドモデルは、ガソリンエンジンのみのモデルよりもアクセルの応答性が高いのが特徴。通常の1.5L 4気筒ターボエンジンは、2,000rpmから179lb-ft(約240Nm)のトルクを発揮します。対して、ハイブリッドモデルはシステム合計トルクが232lb-ft(約315Nm)、しかも電気モーターは停止状態からでも瞬時に最大トルクを発生できます。

深い砂地でテストされた機械式AWDは、最新のRAV4 ハイブリッドが備える電子式AWDよりも優れていることが証明されています。クロスオーバーのオーナーのほとんどは、本格的なオフロードに車を持ち込むようなことはしないでしょうが、もしあなたがぬかるんだ泥から脱出したいと考えているなら、ホンダのキーをポケットに入れておくことをおすすめします。その点において、トルクを瞬間的に調整できるハイブリッド車は、ガソリン車よりもはるかに優れているといえます。

最近のハイブリッド車に少しずつ実装され始めた機能ですが、アクセルから足を離したときに減速しながらバッテリーを充電する回生ブレーキの強さを調整することができます。デフォルトでは非常に弱く設定されていますが、ステアリングのパドルシフトで4段階に調整することができます。ただ、最大設定でもEVほど強力ではなく、車体を完全に停止させることもありません。

インテリアには、電動モデルを運転していることが実感できるいくつかの特徴があります。シフトレバーは廃止され、シフトチェンジボタンが大きくなりました。デジタルゲージクラスタも新しくなり、パワーがどこから供給されているのか、バッテリーの残量はどれくらいかを簡単なグラフィックスで表示します。システムも常にバッテリー残量をアップさせようとします。

その他の部分は、良くも悪くもガソリンモデルのCR-Vと同じですが、全体的にしっかりとまとまっている感じがします。外観は武骨なRAV4よりも乗用車らしく、インテリアは上質で高級車のように感じられます。

以下、販売が絶好調な北米仕様におけるグレード展開です。

27,750ドル(約297万円)の「LX」グレードには、LEDライト、キーレスエントリー&スタート、運転支援システムのHonda Sensing(ホンダセンシング)、オートエアコン、17インチホイールが装備されています。「EX」グレードは30,260ドル(約324万円)で、LEDフォグランプ、スピーカーの追加、ブラインドスポットモニター、18インチホイール、シートメモリー(運転席)、デュアルゾーンエアコン、ムーンルーフ、そしてApple CarPlayとAndroid Autoに対応した7インチのDisplay Audioシステムが備わります。

「EX-L」は32,750ドル(約350万円)で、レザーシート、パワーテールゲート、4ウェイのパワーシート(助手席)、自動防眩ミラーが追加され、ハンドルにはレザーが巻かれています。最後に、「CR-V Hybrid Touring」は35,950ドル(約385万円)で、19インチホイール、スマートフォンの非接触充電、ルーフレール、自動ワイパー、そしてオーディオシステムのアップグレードが実装されます。 先述の通りこれらは北米向けの仕様なので、日本国内での仕様とは異なる場合があります。

気になるところがあるとすれば、ムーンルーフは小さくて後部座席まで届かず、またインフォテインメントシステムは優秀ではあるものの、グラフィックがやや繊細さに欠けるという点です。499Lというトランク容量(ガソリンモデルは561L)も、RAV4の580Lには及びません。ただ、フロントとリアの足元の広さでは上回っています。

CR-V ハイブリッドの絶妙なポジショニング

バッテリーだけで300マイル(約480km)以上走れないEVは、どうしても不十分だと考えられがちです。これは、多くの新車購入者が実際に求めていることというよりも、一部のEV愛好家が声高に叫んでいることではないかと思います。ただ、航続距離の短さや充電インフラに対する不安がEVの最大のネックであるということに変わりはありません。革新的とは言えませんが、新しいCR-Vハイブリッドによるホンダの戦略は非常に理にかなっています。

より高級なクロスオーバーを求めている人だけでなく、より強力でハイテクなAWDを望む人にとってもCR-V ハイブリッドはぴったりです。そして、もし燃費や環境性能が第一の関心事であるなら、当然その要求にも応えつつ、通常のガソリンスタンドでエネルギーを補給できるというおなじみの利便性も備わっています。

生活スタイルを大きく変えることなくあらゆる要望に応えられる、高いレベルでバランスの取れた車と言えるでしょう。もちろん、将来的にはすべてのドライバーがもっと環境に優しい車に移行してくれることを期待しますが、誰もがEVやプラグインハイブリッド車に乗れるわけではありません。CR-Vハイブリッドが成功したのは、非常に焦点を絞っていたからであり、それは言うまでもなく、ホンダの的確なマーケティングによる成果でしょう。ただ、ホンダが次のステップに進むには、魅力的なEVを世界に提示する必要があります。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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