トップドライバーの好きなコーナーやコースから南房総に誕生する新サーキットを検証する

日本には、鈴鹿、富士SW、もてぎなど国際的に有名なサーキットがある。そして、2022年には、なんと東京近郊に新しいサーキットが生まれる。でも、このコースはただのコースではない。The Magarigawa Clubという会員制のプライベート・サーキットは、レース界では有名なTilke Engineers&Architectsによって設計されたので、エンスーからの期待度がかなり高い。

このドイツの設計事務所は、Magarigawaを白紙状態からデザインし、全長3.5kmのコースに、22のターン、80mの高低差、しかも、少なくとも3つのブラインドコーナーを入れ込んでいる。同コースを作るのに、Tilkeは自然の地形を残すことになるので、スリリングなサーキットになるはず。千葉・南房総に位置するこのコースには800mの直線もあり、最高速度は250km/h以上出るらしい。僕は、同サーキットのバーチャルコースを会員専用のシミュレーターで走ってみたけれど、ヘアピンコーナーや上りのブラインドコーナーの慣れに時間がかかるが、かなり複雑かつ楽しいコースになっている。

僕から見ると、同コースはテクニカルでかなりトリッキーなレイアウトになっていると感じたけど、果たして国内外のトップドライバーたちは、Magarigawaをどう評価するのだろうか。そんなトップレーサーから見て「良いコーナーとは何か、走り甲斐のあるコースとは何か」を聞いてみる事にした。

まずは、元F1やルマンのドライバーで英国BBC放送の人気番組「トップギア」や「フィフス・ギア」の司会を務めてきた1人で、辛口のティフ・ニーデルに、Magarigawaのバーチャル・ラップの映像を見てもらった。

「もちろん、画面でバーチャルに見ても、コースの実際の走りはそれほど分からないけど、Magarigawaはコーナーが非常に多いし、上りのセクションはコーナーだらけで、ドライバーの我慢が必要だね。車両のタイヤとブレーキの消耗、そしてドライバーにもかなり負担をかけるサーキットになるんじゃないかな。それに、コースの両側にコンクリート・ウォールがあるので、F1の練習走行には向かないね」と、ニーデルは言う。

では、同氏の一番好きなコーナーはと問うと、「それはクルマによる」という。「F1のマシンだと、ダウンフォースが強烈だから、スパの有名な『オールージュ』は全開で簡単に走行できる。だから、そんなに面白くないかも知れない。でも、スーパーカーだと、ライン取り、スピードや車両バランスを気をつけながら、走行しないといけない。でもオールージュが、実は3つのコーナーで構成されているところが好きなんだ。やはり、コーナーのシリーズというか、高速コーナーが3つから4つほど続くと、とても楽しく走り甲斐があるよね。」

「オールージュの他に、トルコの4つもコーナーが続く『ターン8』もおもしろそう。あと、鈴鹿の130Rという高速左コーナーも好きだし、シルバーストーンのトリッキーな『クラブ』もおすすめだね。僕がもっとも好きなコースの一つは、コーナーが6つしかない『グッドウッド』なんだ。そこは、コーナーは少ないけど、どれもユニークで上手にラインをとらなければならないし、追い越しもポイントもある」と語ってくれた。

かつてルマン24時間、デイトナ24時間、スパ24時間、ニュル24時間に参戦した元インディ500レーサーの松田秀士はこう語る。「僕は鈴鹿が好きですね。ダンロップ・コーナーとスプーンが特に好みです。やはり、コーナーに差し掛かる時に、高低差があると言うか、コーナリング中に上り坂から下り坂になるようなコーナー。つまりコーナーの中で荷重が後ろから前に、というように前後に荷重移動が発生するコーナーは特に好きですね。また、コーナーからコーナーへの推移が目立つラグナセカは全体的なレイアウトが好きだし、スパの『オールージュ』やニュルの『フルッグプラッツ』で高速コーナーに不可欠な高度なテクニックが求められるところも好きです。Magarigawaはバーチャルでしか見ていませんが、コーナーが多くてチャレンジングなコースだと思います」という。

また、トップギアの初代スティッグで、ルマンのレーサーだった英国人のペリー・マッカーシーは、脈拍を速めるリスキーな高速コーナーを好むそうだ。「高速コーナーに入る時のリスクに挑戦して、それを上手く処理して正しいラインを取るのが、レース時代に一番好きなところでしたね。スパのダブル・ガウチェと、ルマンのインディアナポリス・コーナーが特に好きです。記憶に残る名門コースとは、そのサーキットの歴史、サーキット周辺の綺麗な景色、そして当然、コースのレイアウトとチャレンジングなコーナーがあること。それが重要でしょう。バーチャル・ラップを見ました。Magarigawaは良さそうだけど、コース幅がかなり狭い事に驚きました」という。

日本のスーパーGT選手権のチャンピオンシップを4回獲得したイタリア人レーサーのロニー・クインタレッリは、富士SWが一番好きだという。「直線で最高速を出してから上手なフルブレーキングが求められる第一コーナーと、厳しいGを我慢しながらできる限り高い速度を保っていたい「100R」コーナーが好きです。富士SWが好きなもうひとつの理由は、富士山という美しい山の横に位置していること。Magarigawaも、周りの環境を効果的に活用して欲しい」という。

さて、Magarigawaでは、まず第1コーナーがスリリングな高速コーナーで、ヘアピンでは高度な技術が求められる。リアルで体験してもらえば、今回インタビューしたトップドライバーたちも、かなりやりがいを感じるに違いない。レースを開催するというより、レーシング走行を愉しむ会員制サーキットなので、コーナーが多いことは、メンバーからは歓迎されるだろう。

Magarigawaの22のコーナーにはまだ名前が付いていないけど、ドライバーが好意的に覚えられるように、各コーナーに格好良いネーミングを施して欲しい。そう、全世界のエンスーに響くようなインパクトのあるネーミングを是非してもらいたい。コースの隣りに富士山はないけれど、周りに山や深い森林があり、そして高級でサービスの行き届いた宿泊施設やレストラン、天然温泉などを活かして、世界で最も走ってみたいコースの一つになって欲しい。

というのは、例えば昔のF1マシンが同サーキットの特徴や雰囲気にぴったり合っているだけではなく、サーキット以外の部分がまるでタキシードやドレスも上手に着こなせる裕福な紳士、淑女のライフスタイルにマッチしていると感じたからだ。

日本の伝統建築とモダンの要素を融合したデザインのクラブハウスや、スーパーカーやレースカーの話題を刺激するバーラウンジ、サーキットを走るクルマを眺めながら食事ができるレストラン、また子供が安心して遊べるファミリーラウンジ、トレッキングコース、アウトドアのピクニック・エリアも用意されるという。

メンバーは国内と香港だけですでに100人以上入会したようだ。最終目標は500人。海外、特に中国や中近東からも、問い合わせがあるそうなので、日本初のプライベート・サーキットは、国際感が漂うクラブになるに違いない。

マッカーシー選手が語ったみたいに、誰もが走ってみたい伝説的なサーキットになるために、Magarigawaはまず歴史を作ることに集中し、周りの環境をできる限り生かし、そして走り甲斐のあるレイアウトで誕生することが必要だろう。それに、各コーナーには、やはりここは日本だから、世界に羽ばたいて成功を収めた日本人ドライバーやチームの名前を使うのもいいだろう。「琢磨コーナー」とか「マクラーレンホンダ・ストレート」とか「関谷ヘアピン」はどうだろう。あるいは、周辺の自然や文化から命名してもいい。いずれにしても、かなり期待のできるサーキットとして完成することは間違いない。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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