キャデラック CT4-V:レビュー エッジの効いたバランスに惚れ惚れ

キャデラック CT4に、ハイパフォーマンスモデルの「V」が登場しました。エントリーモデルのセダンでありながら、高性能なスポーツセダンとして生まれたCT4-V。パフォーマンスの向上だけでなく、ドイツ産のライバル車とは一線を画す個性を持っています。その絶妙なバランス感覚を探ります。

CT4-Vは、過激なスポーツセダン「ATS-V」の精神を受け継いでいますが、正統な後継モデルではありません。ホットではあるものの、適度にハードで扱いやすいモデルです。

キャデラックの最新ガジェットや、「マグネライド4.0」のようなGMのフラッグシップ技術を採用するなど、走り・実用性・快適性を上手くミックスさせているのです。

絶妙な乗り心地とハンドリング

パワートレインは最高出力325馬力/最大トルク515Nmを発生する2.7L 4気筒ターボエンジン。マグネティック・ライド・コントロール4.0を標準装備するほか、機械式リミテッド・スリップ・リア・ディファレンシャル、4ピストン固定キャリパーのブレンボ製パフォーマンスブレーキを採用しています。

パワフルなエンジンと上位の最新装備を積んでいながら、比較的安価で手に入れられるのも特徴です。

北米での販売価格は4万5,490ドル(489万円)で、アウディS3の方がやや安いのですが、パワーで上回ります。BMW M235i xDriveグランクーペとは同じ価格設定ですが、やはりパワーで勝っています。

メルセデスAMGのA35 4MATICおよびCLA35クーペもほぼ同じ価格ですが、ご察しの通り、パワーではCT4-Vに軍配が上がります。

CT4は、キャデラックの新しい「ビークル・インテリジェンス・プラットフォーム(Vehicle Intelligence Platform)」を初めて採用したモデルのひとつ。

これは、エンジン、ADAS、インフォテインメントなど、すべてをカバーするモジュールが相互接続された次世代のネットワークです。ナビゲーションの地図の更新や、ソフトウェアの無線アップデートにも対応します。

しかし、残念に思える点もあります。例えば、10速トランスミッションはロングツーリングには最適で、快適な乗り心地に貢献しています。ただ、スポーツ走行には向いていません。

率直に言って、ギアの数が多すぎます。走行モードを「スポーツ」にすると、変速スピードを速めてくれますが、適切なタイミングで適切なギアを選ぶのには苦労させられます。

例えば、高速でコーナーに差し掛かるとき、3速か4速にしたいと思っても7速あたりから1つずつ下ろしていかなければいけません。マグネシウム製シフトパドルの操作が忙しいのです。

キャデラックは「PDM」と呼ばれるシステムを用意しており、ドライバーの意図に応じてアグレッシブな走りを実現します。ハードな走りを検知すると、ギアを低く保ち、コーナリング中のシフトアップを回避。レスポンスを高めます。

しかし、紛らわしいことに、PDMは常に有効になっているわけではありません。ドライバーの意思でオン・オフを切り替えることはできず、サーキットでも走らない限り、基本的にはオフのままでしょう。

とはいえコーナリング性能は素晴らしく、後輪駆動でも十分なグリップ力を発揮しました。オプションの全輪駆動は不要かと思われるほどです。

同様に、マグネティック・ライド・コントロール4.0は夢のような装備です。各車輪のショックに加速度計が内蔵されており、路面状況を監視してダンパーの硬さを調整します。

クルージング時はシルクのように滑らかで、スポーツ走行では柔軟性と剛性感が絶妙にブレンドされています。この機能はCT4-V専用で、より手頃な価格の兄弟車に追加できないのが残念です。

インテリアは素材の質感不足かも

インテリアは「いまひとつ」といったところでしょうか。

4ウェイのパワーシート(フロント)、BOSE製14スピーカーオーディオ、4G LTE(WiFiホットスポット付)、デュアルゾーン・クライメートコントロール(空調)、リアパーキングアシスト、Apple CarPlayとAndroid Auto、USB Type-AおよびType-Cポート、スマートフォンのワイヤレス充電器などを標準装備。

オプションも充実しており、アダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポットモニター、マッサージ機能付きフロントシートヒーター、ヘッドアップディスプレイ、車線維持支援などを追加することができます。

しかし、ライバルのドイツ勢ほどの特別感はありません。試乗した車両では、標準のフェイクレザーシートが本革シートに変更されていましたが、レザーの質感はそれほど高くは感じられませんでした。

スイッチ類にはシルバーのトリムが使われていますが、良くも悪くも見慣れた光景です。ダッシュボードのデザインも余計なもののように感じられます。素材そのものはごく一般的なものです。単に期待しすぎただけなのかもしれませんが。

ドライバー正面の8インチディスプレイの両サイドには、アナログのタコとスピードメーターがあり、センターコンソールの上には8インチのタッチスクリーンが鎮座します。

ありがたいことに、キャデラック製インフォテインメントシステムのUIは、悪名高き初期バージョンから大幅に進化しました。処理速度は速く、レイアウトも整っていて、OTAアップデートに対応しているので将来性もあります。

今後、Android AutoとApple CarPlayのワイヤレス接続に対応するかどうかについては言及されていませんが、キャデラックによれば理論的には対応可能であるとのこと。

残念ながらハンズフリーの半自動運転システム「スーパークルーズ」のオプションは含まれておらず、どうしても欲しい場合は注文を保留しなければならないでしょう。これは2021年モデルから追加可能になり、自動レーンチェンジ機能も含まれています。

居住性については、フロントは広々としていますが、リアはあまり快適ではありません。ボディサイズはライバル車よりも大きいにもかかわらず、60:40分割のリアシートは、特に足元の窮屈さを感じてしまいます。

2.7Lエンジンはシボレー・シルバラードに搭載されているものと基本構造を共有していますが、耳には優しいです。

低速域では若干のうなり声をあげますが、構造とANC(アクティブ・ノイズ・コントロール)に改良を施したことで、クルージング時には非常に高い静粛性を保ち、スポーツモードでは喉を鳴らすような心地よいサウンドを聴かせてくれます。

いいクルマだが、煮詰めるべき部分は多い

キャデラックはここ数年、「セダンをあきらめるのはまだ早い」というのが口癖でした。確かにSUVへの人気は相当なものかもしれませんが、セダンを買う人はまだたくさんいますし、パフォーマンスモデルを求める人もいます。

「これを作れば客は(まだ)来るだろう」という単純な戦略でない限り、一般的な考え方としてキャデラックの姿勢は支持することができます。

2020年モデルのCT4-Vは、多くの部分でまばゆい輝きを放っています。

走りに関するセットアップはよく考えられており、マグネライド4.0は素晴らしく、ステアリングもうまく調整されています。その一方で、PDMの挙動が違っていたらいいのに、とも思います。

キャデラックが最新のガジェットを多数採用してくれたおかげで、不満の多かった部分はかなり改善されました。ただし、スーパークルーズは例外です。これが搭載されていないことで、クルマの魅力が半減しているといっても過言ではありません。

CT4-V(手前)とCT5-V(奥)

「V」の民主化は崇高な目標であり、CT4-Vが競争力のある価格であることは否定できません。キャデラックが実証しなければならないのは、CT4とそれに並ぶCT5の巧みな設計を最大限に活用するという意思があるということです。

現状では、2020年モデルのCT4-Vは「良いクルマ」です。それが「素晴らしいクルマ」になるかどうかは、キャデラックの手にかかっています。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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