BMW X5ライナップのスター的存在M50i そのV8の走りは?

X5は、BMWのドル箱の一つだ。超人気者。できる限り多くのユーザーのニーズやテイストに応えるために、いくつかのバージョンを出している。エントリーモデルの「35d」というディーゼル仕様があれば、「40i」のガソリン仕様もある。また、X5のフラッグシップモデルには、600psの「X5 M」があるけど、僕が今回乗ってみたのは、「40i」と「X5 M」の間を見事に埋める「M50i」だ

M50iの最大の魅力はそのV8エンジン

4本のスポーツ・エキスゾーストは格好いい。
Photo by Peter Lyon

どう見ても、このM50i は、X5のフラッグシップ・モデルに見えてしまう。見た目も迫力満点だし、雷のように吠えるV8のエキゾーストノートも病みつきだし、しかも、フルオプション付きの1710万円という価格もご立派。正直なところ、M50iに乗って物足りない部分は一つも感じなかった。言い換えれば、どうして、2000万円以上する「X5 M」が必要か、疑問を持ってしまったほどだ。

さて、どこがそんなに良いのだろう。まずは、デザインは充分に「Mディビション」のチューニングを受けていると思った。あの代表的なキドニーグリルは大きくて格好いい。しかも、空気抵抗やエンジンの空冷を向上させる自動開閉のグリルのエア・シャッターには感動した。6ピストンのブレーキ・キャリパーや大型ローターは22インチのタイヤに上手くマリアージュしていた。上下2分割式のテールゲートがどちらも電動で開閉できるところは賢いし、使いやすい。

しかし、このSUVで一番喜ばしい特徴はなんと言っても、4.4リッターV8ターボエンジンと4輪駆動のパワートレーン。その加速性とサウンドは病みつきだ。最高出力530PS/5500rpm、最大トルク750Nm/1800-4600rpmというスーパーエンジンはしかしパワフルかつスムーズだ。市街地の渋滞の中で、少しわずかに右足を伸ばしただけで満足感は得られる。加速感は凄まじい。例えば、高速道路に乗る時に、アクセルを力強く踏むと、xDriveという4輪駆動が路面に噛み付いて、5秒も経たないうちに、法定速度の100km/hに達す。その軽快な走りを可能にしているのは、シフトがスムーズで速い8速ATだ。

X5 M50i (左)とxDrive35dのディーゼル仕様。
Photo by Peter Lyon

4WD、エアサスと四輪操舵で走りは抜群

最近、時代が時代だから、ハイブリッド車やEVに良く乗ったりするけど、たまに人間の感覚をくすぐる、一つ不満も感じさせないV8に乗ると、やっぱり気持ち良い。市街地でも、高速道で合流する時でも、渋滞から脱出して道の前が急に開けた時でも、少しスロットルを踏めば、まるで生き物のようにボンネット下のV8エンジンが吠えてくれる。しかも、スポーツモードに入れると、エキゾーストノートもより派手になるし、ステアリングやアクセルレスポンスがよりシャープに変わる。市街地の一般道でのちょっとしたアクセルのオンオフを繰り返すだけで、それぞれのエキゾーストノートを充分楽しめる。

乗り心地も静粛性も大型SUVにしては、洗練されていた。2320kgもあるこのX5のボディーとタイヤは大きくて、車高も高いし、重心も高い。と聞くと、ハンドリングに期待はできないと思われがちだろう。でも、違うんだ。「アダプティブエアサスペンション」は四輪操舵システムと組み合わさっているけど、不思議なことに、エアサス特有のソフトさを感じると同時に、走りはしっかりとできているし、コーナーではボディのロールを抑制する。各輪にセンサーが仕込まれていて、常に路面状況をセンシングし、前後左右で個別の動きをするという。タイトなコーナーでも、ステアリングの切れ味が鋭く、まるでワンサイズ小さなSUVというようなハンドリング。

コクピットが一段と高級感が増した。
Photo by Peter Lyon

手放し運転も可能

当然、安全装備もフル完備。車線逸脱警告システム、ACC、車線変更警告システム、衝突回避・被害軽減ブレーキなど、3眼カメラを使用した運転支援システムが採用されている。手放し運転も場合によっては可能。高速道路を60km/h未満で走行中にはハンズオフ機能をオンにすることができる。条件がそろえば、ステアリングホイールから手を放すことができるけど、実際に使える地域は少ない。

コクピットはアイボリーホワイトの本革を使用した豪華なスペックで、センターコンソールなどは、ピアノブラックのトリムが引き締めている。ダイヤモンドステッチとグレーのパイピング付きのシートは座り心地が良くサポート性もしっかりしている。性能の高い12.3インチのタッチスクリーンの反応は良く、BMW特有のiDriveは使いやすいけど、喋ってくれる機能にはクエスチョンマーク。「OK BMW」という声をかけると、ボイス・アクティベーションで音声アシスタントが応答してくれるけど、僕が試してみたところ、反応は多少鈍い感じだった。つい最近、ライバルの「はい、メルセデス」も試したけど、そのシステムの反応する時間が早いし、答えの内容が充実している。

アイボリーホワイトの本革シートの座り心地はピカイチ。
Photo by Peter Lyon

今回テストしたX5 M50i は、ライバルのメルセデスベンツGLE、アウディQ7、ポルシェ・カイエンなどに比べた時はどうなのか。今までだと、GLEの高級感、質感、ステータス性はX5より上だったけど、この新M50iでは、GLEより一歩先んだ感じ。また、確かにQ7の外観デザインの方が格好いいけど、今回のX5のハンドリングやパワー感は優れている。さて、カイエンだけど、いままででは、X5は走りや性能の面でポルシェに劣っていたけど、今回のM50iでは、カイエンのハンドリングと並んだと言えるし、エキゾーストノートでは、このクラスのトップに立ったんじゃないかな。ここではっきり言おう。600psのX5Mは大したSUVではあるけど、M50iで充分満足できるし、コスト的にも数百万円はセーブできる。

ここはいい

*病みつきになるV8エンジン

*軽快なハンドリング

*内装の質感の高さ

ここはもう少し

*1710万円という価格は高く感じる

*8km/Lの燃費

*日本の道路事情には多少大きいボディ

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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