Bentley(ベントレー)のSpeed Six(スピードシックス)は、同社の中で最も成功した、象徴的な車の1つ。ベントレーがその伝説を蘇らせると発表しました。スピードシックスは、ウルフ・バーナート、ヘンリー・”ティム”・バーキン卿、グレン・キッドソンの手にかかり、1929年と1930年の2度にわたってル・マン24時間レースを制しました。1929年のレースでは、スピードシックスがスタートからリードし、最終的には3台のベントレーが後続を引き離して優勝を飾りました。
スピードシックスの6.5リットルのエンジンは、当初147hpを発生し、その後の改良、圧縮比の調整、部品の追加などにより、180hpを発揮、そして最終的には200hpのエンジンがレーシングモデルとして採用されました。この性能数値は、現代のセダンに比べれば大したことのない数字に聞こえますが、1930年代後半には世界一ともいえる数字だったのです。
スピードシックスは、個々の顧客の要求に合わせて、さまざまなシャーシ、さまざまな車長で生産され、当初326台しか製造されませんでした。1928年には、ホイールベースが最も一般的な3,505mmの他、3,569mm、3,874mmから選べるスピードシックス専用のスポーティなシャーシが導入され、182台が組み立てられました。ツーリングカーに求められる快適性よりもスピードと俊敏性が重視されるレーシングバージョンでは、さらにホイールベースの短い3,353mmが採用されました。
ベントレーはこの度、92年の時を経て、オリジナルのスピードシックスと同じ個体を丹念に組み上げた13台を限定生産することを発表した。そのうちの1台「カーゼロ」は同社の手元に残されることも発表されています。残りの12台は1台150万ポンド(約2億4800万円)以上するそうですが、全台予約済とのことです。
古い設計図と現存するスピードシックス2台からCADモデルが作られました。復刻のレファレンスになった「オールドナンバー3」は、1930年のル・マン24時間レースに出場した1台で、この車は「今でも完全に公道走行が可能」であり、現在もオーナーによって活発にレースに参加し、素晴らしいコンディションであると評されています。ベンチマークとなるパフォーマンスとハンドリングのデータを収集するために使用される2台目のリファレンスカーは、ベントレーが所有する1929年製スピードシックスで、「オリジナルのレーサーと同じ4シーターのVanden Plas(バンデン・プラ)製ボディを身にまとい、同じ仕様にレストアされている」と説明されています。
自動車メーカーによると、この12台はベントレーのコーチビルダーであるマリナーと「英国内の数多くの自動車遺産スペシャリストから集められた素晴らしい職人たち」によって手作業で製作される予定です。再現されるパーツはオリジナルに限りなく近いものとなり、ベントレーはパーツの多くを「1920年代に使用されたものと同じ技術で製作する」と主張しているほどです。
マリナーは以前にも復刻版を製造した実績を持つ
ベントレーが「世界最古のコーチビルダー」と表現するマリナーは、過去に12台のベントレー ブロワーの復刻版を製作したことがあります。2019年後半に開始されたブロワー復刻プロジェクトでは、4台のオリジナル・ブロワーのレースカーのうちの1台を解体し、数百の部品のそれぞれを3Dで表現したものを作成しました。ベントレーが復刻を主導する一方で、ヘリテージカーに携わったいくつかの企業に作品の再現を依頼しました。 例えば、Israel Newton & Sons Ltd.はヘビーゲージのスチール製シャーシを手作りし、Lomax Coachbuildersは真新しいアッシュフレームを作りました。ベントレーは、復刻版スピードシックスの生産を今年後半に開始する予定であると発表しています。
レガシーカーの復刻製造は、長い歴史を持つ他の自動車メーカーでもみられます。たとえば2016年、ジャガーは約60年ぶりに製造される「XKSS」の復刻モデルを公開しました。ジャガー・クラシックにより1950年代のオリジナルと同じ仕様で、9台限定で復刻製造されました。
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