Appleがレーザー技術に投資をする理由は部品供給だけにあらず

Appleは4億1,000万ドルの投資を発表しました。投資先はレーザー技術の主要サプライヤーで、iPhoneおよびiPadのFace ID用カメラとLiDARスキャナーの部品供給を行っているII-VI社です。この投資を通じて、Appleは次世代のデバイスに使用される予定の部品にいち早くアクセスできるようになると見込まれます。その一方でAppleは現在進行中の訴訟案件に対する「世間の視線」を気にしているという見方もできるでしょう。

Appleによる投資

2017年、Appleは3億9,000万ドルをFinisar(当時の呼称)に投資しました。資金の出どころはAdvanced Manufacturing Fundです。Appleの目論見としては、この資金によって研究開発費を増強し、いわゆるVCSEL(垂直共振器型面発光レーザー)の大量生産を促進するという算段がありました。

VCSELは、iPhone Xに搭載されたAppleのTrueDepthカメラの一部としてすでに採用されていました。VCSELは、AppleがFace IDやAnimoji、Memojiなどの機能に使用するセンサーの距離追跡に役立ち、最近ではLiDAR Scannerという深度感知カメラにも採用されています。直近ではiPad Proに搭載されていたLiDAR Scannerが例に挙げられます。ちなみにiPhoneの一部モデルにも搭載されました。この技術は、Appleのカメラがどのように動作するかに貢献しているだけでなく、同社がARの足跡を拡大する際にも大きな役割を演じます。

そして2018年11月、Finisarは、エレクトロニクス部品を専門とするII-VI社に買収されました。II-VI社は民生用電子機器や通信機器の部品を作る一方で、自動車や半導体の資本設備も横断的に手掛けています。Appleは、プロジェクト・タイタンの一環として自動運転を探求しているだけでなく、Macラインを自社製のアップル・シリコン・デザインに移行しています。広く知られている通り、自社チップの製造に重きをおいている状況です。

Appleに注がれた最初の資金は、ある部品メーカーの施設を再開するために使われました。50億ドル規模のAdvanced Manufacturing Fundからの新たな助成金が向かった先はテキサス州シャーマン、ニュージャージー州ウォーレン、ペンシルバニア州イーストン、イリノイ州シャンペーンです。これらを通じて「700人の雇用を創出するとともに、さらなる生産能力の向上につながる」とAppleは説明しました。

部品供給の安定化だけでないApple側の事情

パンデミックにおいて、部品の安定供給を確保できるかどうかは、最重要課題となっています。コンシューマ・テクノロジーや自動車など、さまざまな業界の企業が、長期にわたるダウンタイムの後、事業のスピードを取り戻すのに苦労しています。チップの不足により製品計画が妨げられているのです。一方でAppleは多額の費用を投じてサプライヤーとの独占契約を結び、優遇されているのではとの印象すら与えます。ゆえに技術業界の同業他社が直面している問題とは無縁であるかのように思われていました。ところが最新の決算発表の場では世間の認識とは反対の声明が出されました。マーケットの期待値調整の意味もありそうですが、「優遇された状況」と実態は異なるのだと強調しています。

AppleのCEOであるティム・クックとCFOであるルカ・マエストリはこう語ります。「通常よりも高い需要に加えて半導体の不足がiPadとMacの販売に影響を与えており、2021年第3四半期には予測に比べて40億ドルもの不足が生じる可能性がある」と認めているのです。

こうした幅広い分野に及ぶ供給不足が想定される中、Advanced Manufacturing Fundは、同社の最先端デバイスに悪影響を与えないようにするための取り組みです。Appleはこれまでにも、ガラスメーカーのCorning社に投資し、iPhone 12ファミリー向けのセラミックシールドガラスを共同開発した実績があります。

一方で今回の投資は貴重なPRでもあります。というのも、アメリカの企業、そして再生可能エネルギーのためのClean Energy Programに準拠した企業を支援していると訴えるのに役立っています。この投資を強調するのにはどのような背景があるのでしょう。AppleがApp Storeの規則によって他の企業を圧迫していると非難され、米国でEpic社との裁判が続いている点が想定されます。同様の案件としてSpotifyとの訴訟が挙げられます。どちらもAppleの独占が声高に主張されており、多くの人々がAppleに対してネガティブな印象を持ちかねない状況です。そうした中で、今回の投資が持つ意味は様々な側面から解釈が可能でしょう。

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