音楽ストリーミングサービスを席巻するSpotifyのアクションプラン

スウェーデンを拠点とするSpotifyはその勢いをさらに加速させています。使いやすいUIと、ユーザーの好みや気分に合わせて楽曲を調整する強力なアルゴリズムによるものです。Apple Music、Tidal、YouTube Music、Pandoraなどの競合サービスと比べても、すでに若干の優位性を持っていると考えられます。Spotifyは、音楽ストリーミング業界を席巻し、大きなインパクトを残すためのロードマップを用意しています。その展望はどのようなものなのでしょか。

ユーザーの好みや気分を把握する高度なAI

Spotifyは2018年に特許を申請し、2021年1月12日に認可されました。この特許は画期的でした。アプリはユーザーの感情的な状態や、年齢、性別、あるいはユーザーの声(ピッチとラウドネス)、周囲のバックグラウンドノイズの量など、さまざまな事柄を分析できるのです。特に、どのような状況で楽曲を再生したのかも、分析対象です。友人との外出や自宅の自室など、あなたがどのような環境にいるのかを高度なAIが把握しています。

つまり、ストリーミングサービス自体がユーザーの現在の気分を理解し、それに基づいて音楽を提案してくれるのです。もちろん、時間帯や履歴に応じて音楽を提案できる、スマートなAIアルゴリズムと併せて機能します。

他にも、楽曲にユーザーのボーカルを重ねるカラオケのような機能や、音楽のテンポと身体活動を一致させる機能(ケイデンスベースのメディアコンテンツ選択エンジンによる)など、いくつかの特許を取得しており、今後のサービスを戦略的に優位に進めていくことでしょう。

HiFiストリーミングの提供

TIDAL、Dezeer、Amazon Music HDなどのサービスに対して、Spotifyがなかなか明かそうとしなかったもの、それは高音質のストリーミング機能です。アプリ上で最も要望の多かった機能のひとつですが、ついにSpotifyにも搭載されることになりました。2021年2月22日に発表された、CD品質のストリーミング層は、高品質のロスレスオーディオストリームのためにメンバーシップをアップグレードできるSpotify Premiumの加入者を対象に、2021年後半に登場します。

現在、有料会員の場合、オーディオ品質の最良の選択肢は320 kbpsです。HiFi(原音に忠実で、ノイズを最低限に抑えられている)楽曲が登場すれば、ユーザーはお気に入りの楽曲を1,411 kbpsの高いビットレートで聴くことができるようになります。残念ながら、Spotify Hi-Fiオーディオ・ストリーミング・ティアの価格、リリース予定はまだ不明です。

1点確かな事柄があるとすれば、Spotifyが新機能をリリースする方法によれば、アメリカとヨーロッパのユーザーは、他のユーザーよりも早くこの機能にアクセスできる点です。また、Spotify Connectに対応しているPlayStation 5などの機器についても同様です。このような機器は、Spotify Connectに対応していない他の機器よりも先にサポートを受ける可能性があります。

ポッドキャストへの取り組みとさらなる伸張

Spotifyのポッドキャストへの取り組みは、目立って大きな盛り上がりを見せているわけではありませんが、着々と進展しているようです。直近のマーケット予測によると、Spotifyは米国のポッドキャストの月間視聴者数でAppleを上回る見通しだからです。背景には、独占配信権への数百万ドル規模の投資がありました。ブルース・スプリングスティーンが出演する、バラクとミシェル・オバマ夫妻の新しいポッドキャストが挙げられます。

Spotifyのポッドキャストのユーザー数は今後の2年間の予測では、2022年には月間3,310万人、2023年には3,750万人に達すると予想されています。音楽とポッドキャストをひとつの屋根の下に置くという戦略が功を奏し、Spotifyは今、競合他社から頭一つ抜けた存在になっています。

Spotifyは、ユーザーの履歴に基づいて好みの曲を提案するという点で非常に優れています。今回、Spotifyは機械学習アルゴリズムをポッドキャストにも導入することを発表しました。この斬新な取り組みはポッドキャストにもすでに反映されます。ポッドキャストの検索では、より広範な用語の提案が可能になり、検索結果が改善される見込みです。この機能は現在、米国でテストされており、世界の他の地域にも順次展開される予定です。

コンテンツ制作者にとっては、SpotifyがWordPressと連携した点にも大きな意味があります。アンカーツールを使って文章を音声に変換し、新しいポッドキャストを作成できるようになります。他にも、ユーザーがポッドキャスト内で質問や投票を行える機能や、ポッドキャスト内にビデオを挿入できる機能など、様々な連携ツールがあります。

Spotifyの世界的な拡大

Spotifyは海外展開を加速させる計画を明らかにしています。競合サービスに対抗し積極的なアプローチを強化するためと目されています。Spotifyは、カリブ海、太平洋、アフリカ、アジアなどの新興国を含む、新たに85カ国(36言語)でサービスを開始する予定です。

Spotifyはさらにユーザーを獲得しようとしています。今後さらに95カ国、3億4,500万人のアクティブユーザー(うち1億5,500万人はプレミアムユーザー)をサービスに迎え、さらに10億のユーザーを獲得しようと考えているのです。実際のところ、Spotifyはナイジェリア、ガーナ、スリランカ、サモア、ジャマイカ、パキスタンなどの国ですでにサービスを開始しています。北欧スウェーデンのSpotify社にとって、ここ数年で最も積極的な拡大戦略です。

まとめ

今回ご紹介したいくつかのポイントはSpotifyが優位に立つために必要なパーツに違いありません。Appleのような強力な競争相手が、手の内を明かさない状況下ではなおさらです。

少々前までは楽曲を端末にダウンロードする時代がありましたが、すでに過去のものとなりました。音楽ストリーミングサービスは、その状況を一変させました。どのような端末でもお気に入りの音楽を手元に届けてくれるだけでなく、それ以上の価値が付加されて提供されています。まだ出会ったことのない新しい音楽を発見したり、ファンのコミュニティに参加する、さらに他のリスナーとシームレスに楽曲を共有できるようになっているのです。現在のところ、Spotifyは主要な音楽市場での支配力・存在感を高めており、この拡大戦略によって世界的な人気を獲得することになるでしょう。

※ 2021年3月16日 7:00 「Spotifi」「2021年月22日」等の誤字を修正いたしました。

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