見えないところで、ランドローバーのディスカバリーは驚くほど進化していた

新ディスカバリー・スポーツの最も優れているポイントは、フロント下180度の視角を確認できるグラウンドビューが一番進化した技術だと思っていたら、大間違い。6年前に登場したランドローバーのディスカバリー・スポーツは実は、同社のライナップの中で最も売れている車種だ。今回、試乗したモデルは一見、ビッグマイナーチェンジに見えるけど、実は同車が採用するプラットフォームがレンジローバー・イヴォークと同様で全く新しい。それが重要な意味を持っている。

電動化に向けて 新プラットフォームを採用

オフロードでは、ディスカバリーに勝るものはないだろう。
Photo by Peter Lyon

ランドローバー最新のアーキテクチャー、PTA(Premium Transverse Architecture)を採用することによって、「ディスカバリーの剛性が高められ、走行中のノイズや振動を抑えられ、しかも安全性と快適性がさらに向上さられる」とメーカー側は言う。僕が乗ってみた結果、確かに走りや乗り心地は向上していたし、コーナリング性能もよりフラット感が保たれていた。また、室内が静かになっていただけではなく、直進安定性も良くなっていた。

ところで、ディスカバリーが新プラットフォームを採用した最も重要な理由は何かというと、「これから電動化されるランドローバー車は、電気モーターやバッテリーパック対応に変身しなければならない」ということだ。つまり、ハイブリッド仕様とプラグイン・ハイブリッド仕様がラインアップに加わるわけだ。ところが、外観のスタイリングは車体ほど変わっていない。ノーズ部分では、ヘッドライトやフロントバンパー周りは新しくなっているし、リアではテールのLEDライトやバンパーがアップグレードされている。

滑らかで静かな欧州ディーゼルを搭載

テールライトがLEDに変わって格好よくなった。
Photo by Peter Lyon

日本仕様のエンジン・チョイスは3種類。2.0リッターのディーゼル・ターボと2種類の2.0Lガソリンエンジン。僕は「S D180」というディーゼル仕様を試乗したが、価格は576万円ぐらいからなので、リーズナブル。ネーミング通りのパワーを発生する180psのクリーンディーゼルが新ディスカバリーにマッチしている。滑らかで静かな特徴は欧州ディーゼルのなかでも最上級だ。時速100km/hのエンジン回転数は9速ATの9速でたった1500rpm。どの速度域でもこのディーゼルの音質が旧型よりも静かになっている。言うまでもなく、180psは爆発的なパワーではないけど、普段、市街地を走行するには十分だし、悪路などのオフロードを走る時でも、430Nmの太いトルク特性は足りる。シームレスにスムーズにシフトする9速ATを賢く使えば、大人5人が乗っても、パワー不足を感じないだろう。

理想なドライビングポジションが楽に取れるようになった。
Photo by Peter Lyon

新プラットフォームを採用することによって、ステアリングがよりシャープになっただけでなく、振動や静粛性、特にディーゼルエンジンからキャビンに伝わる振動やノイズが減った。路面状況に応じて最適なサスペンション、ギア比の選択、トラクションなどの車両設定を自動制御するテレイン・レスポンス2はさらに進化した。操作もスムーズだし、どの路面でも、しっかりとグリップして安定性を保つ。また、エマージェンシーブレーキ、クルーズコントロール、レーンキープアシストというドライバーアシストの安全装備が搭載したおかげで、ライバル車のレベルと並んだと言える。もう一つ、ユーザーが気になるところは燃費だ。やはり、車重は2100kgもあるので、12km/Lというのは悪くないけど、中型SUVクラスの中では中間の燃費と言える。

フロントの下方を180度見せてくれるモニター搭載

フロント下のビューが見えるので、安心してパーキングなどができる。
Photo by Peter Lyon

新機軸は冒頭で触れたフロント下ビューの「クリアサイトグラウンドビュー」だ。スイッチを入れると、モニターでボディー下の路面と前輪の動きを180度ほど見せてくれるので、狭い駐車場でも安心前進できるし、オフロードではここしかないというラインをトレースするようなときに役立つのだろう。この技術は自分の家のクルマ寄せに出入りする時にも、フロント周りに子供やペットがいないか、楽に確かめられる。実は、こういう場面での事故は少なくないのだ。

今回のビッグマイナーチェンジでコクピットまわりも大きく変わった。エンジンをスタートさせると、せり上がるダイヤル式ATセレクターに代わって、センターコンソールにはジャガー各車と共通のシフトノブを採用。今回、質感やテクノロジーのレベルがかなり向上したけど、ボルボXC60などには少し届かない。旧型車についていたスイッチ類の多くはダッシュボード中央のタッチスクリーンに入り、本物のスイッチやダイヤルが減ったことによって、運転席周りはすっきりした。4WDのモード選択のスイッチは賢い。ダッシュボードをパッと見た時に、4WDらしきダイヤルはなさそうだけど、エアコンのダイヤルの下のボタンを押すと、そのエアコンのダイヤルが一瞬、4WDのダイヤルに切り替わるので、使いやすい。

オフローダーでもドライバー環境を快適に

ダッシュボードのデザインがすっきりした。
Photo by Peter Lyon

ディスカバリーはもちろん、本格的なオフロード車だけど、今回の変身でドライバー環境が向上した。より高級セダンに近づいた感じだった。サポート性抜群の運転席に座ると、チルトとテレスコ、それに電動シートを少し動かすだけで、あなたの理想的なドライビングポジションが取れる。インパネのディスプレーやスイッチを操作しやすいし、しかも視認性は上々。そして、今回はアップル・カープレーやアンドロイド・オートも内蔵しているので、デバイスは簡単に繋がる。

ディスカバリー・スポーツのライバルは、BMW X3とボルボXC60、または同じジャガーランドローバー・グループのジャガーFペースと言える。ディスカバリーよりX3の方がオンロードでは走りが良いし、XC60とFペースはデザイン性や高級感がある。しかし、オフロードの走りとなると、ディスカバリーに勝るものはないので、オンロードとオフロード両方に良く行くような人にディスカバリー・スポーツをお勧めする。

ここは良い

*新しい室内のデザインでキャビンはすっきりした

*オフロードの性能はクラストップ

*新プラットフォームの効果は素晴らしい

ここはもう少し

*このSUVよりライバル車の方が若干速い

*室内の質感はライバルには届かない

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です