元Lamborghiniデザイナーが語る韓国車の未来像:コンセプトEV「Prophecy(予言)」

Hyundai(ヒュンダイ)の コンセプトEV「Prophecy(プロフェシー)」は、初めてこの車を目にした人に強烈な印象を残すでしょう。今回、Hyundaiが新たに明かした詳細を知ることで、このレトロで未来的(かつ奇妙)なセダンの魅力を再認識できます。Hyundaiのチーフデザイナーは、Prophecyには未来のHyundaiモデルに関するヒントが多く含まれているとし、より興味深い情報を示すために掘り下げた話を聞かせてくれました。

今のところProphecyはコンセプトカーに過ぎませんが、Hyundaiはこの車を将来のEVの道しるべとして見ているといいます。「単なるコンセプトというよりは、この車の名前(Prophecy=予言)が表すように、Hyundaiが将来実現するであろうアイデアと特徴を備えています」と、チーフデザインオフィサーのLuc Donckerwolke(ルク・ドンカーヴォルケ)氏は述べました。ちなみに彼はベルギー出身のカーデザイナーで、かつてLamborghiniのデザイン部長として「Murciélago(ムルシエラゴ)」や「Gallardo(ガヤルド)」の責任者を務めるなど、華々しい経歴の持ち主です。

エクステリアに関するLuc Donckerwolke氏の説明。空力を考慮した各パーツや斬新なライトの形状など、随所に深いこだわりが見られる。

この曲線的なボディを支えているのは、Hyundaiの新開発プラットフォーム「E-GMP(Electric Global Modular Platform)」で、2022年までに13車種のEVに採用されるほか、さらに以後3年間で投入する9車種にも導入が予定されています。その中には、Prophecyのような完全EVだけでなく、ハイブリッドやプラグインハイブリッド、そして水素燃料電池車(FCV)も含まれます。

Prophecyそのものは量産化しないだろうが、貴重なヒントを多く与えてくれるコンセプトカーだ。

Prophecyが今後のHyundaiモデルに与える影響として最も際立つのは、何といっても内外装のデザインでしょう。エクステリアは非常に滑らかな流線型で、Hyundaiによれば1920年~30年代のビンテージカーにインスパイアされたとのこと。もちろんこのスタイリングには、空力性能の向上やバッテリーの航続距離拡大など、実用面でのメリットも多くあります。

デジタルな印象を与えるピクセルランプは、同時にどことなくレトロな雰囲気も醸し出している。

すでにラインナップで実用化されている機能もあります。例えば、Smart Posture Care Systemは、ドライバーが入力した身長と体重に応じて、シート、ハンドル、ミラー、ヘッドアップディスプレイを自動的に調整します。この機能は、2020年モデルの新型「G90」のような、高級車ブランドGenesisのモデルで使用できます。

先進的な機能とレトロなデザインが融合したインテリア。一片の未来が見えた気がする。

他にも、自動運転モードになるとダッシュボードが回転して車内空間を広げるといった機能もありますが、これはまだ実現には程遠いでしょう。従来のハンドルの代わりに使われているジョイスティックのコントローラーも、自動車安全規制当局の認可を受けることは(当分)ないと思われます。

観音開きの大きな開口部。ドアとセンターコンソールに取り付けられたジョイスティックに注目。

一方、Prophecyに採用されている“開かない窓”は、たとえどのような理由があったとしても、販売時にはデメリットとなるかもしれません。この二重構造の窓ガラスは、空気が車内に入る前に汚染物質を除去するハイテク濾過システムを備えているため、「所定の位置に固定されている」と同社は説明します。窓を固定することでエアコンなどのエネルギー効率が高まるだけでなく、開閉機構が必要ないためドア形状の自由度が増す、といったメリットもあります。とはいえ、開放感が損なわれるのは事実ですし、閉所恐怖症にとっては悪夢でしかないでしょう。

Prophecyを操作するには、このジョイスティックを使いこなす必要がある。

賛否はあるにせよ、これらの新要素が実現するのに、どれほどの時間がかかるのでしょうか。タータンチェックを内装に多用するなど、デザインを楽しんでいるHyundaiの遊び心は素晴らしいと思いますし、今すぐラインナップに導入してほしい機能も少なくありません。Donckerwolke氏の言葉を信じるとすれば、どうやら長く待つ必要はないようです。

Donckerwolke氏はこれまでAudiやBentley、Lamborghiniなど数々のブランドを渡り歩いてきた。“Hyundaiのアベンジャーズ”とも呼ばれる分厚いデザイナー陣の1人である。

「ショービジネス用の車は作りません」と、設計責任者は明言します。「私たちがショーカーを作るとき、それは未来を見越したものであり、すなわち未来の予言(Prophecy)です。もうすぐ街で見かけるようになりますよ」

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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