ジキル&ハイド的 究極のロードカー、ロータス・エキシージ「スポーツ410」レビュー

日本のクルマ好きにとって、ロータス社は親しみを感じる伝統的な英国のスポーツカー・メーカーだ。ロータスの名を聞くと、日本の名漫画シリーズ「サーキットの狼」に登場した名車「ヨーロッパ」、マツダ・ロードスターの外観デザインに大きなヒントを与えた「エラン」、または、ジェームズ・ボンドの映画「私を愛したスパイ」に登場した「エスプリ」を思い出す人は多いことだろう。

それにレースのファンから見ても、60年代から70年代にかけて、ロータスは7回もF1選手権のチャンピオンに輝いたことは、同社のレジェンド作りに大きく貢献したといえる。そういう人気の背景があるので、誰もが一回ぐらいは、ロータス車のアナログで直感的でスリル満載のドライブフィールを体験してみたいはずだ。同社の魅力は簡単に言うと、シャープで無駄のないデザインと、軽量ボディ、爆発的なパワーと、ピカイチのハンドリングだ。

ディフューザーとリアウィングはレースカー並みのパーツだ。

乗り降りが至難の技

同社の代表的な車種に乗ってみたいと思って、公道向けのフラグシップであるエキシージ・スポーツ410(以下スポーツ410)を借りた。写真で見ると、同車のプロポーションはまさにレースカー並みだ。でも、本物を目の前にすると、そのクルマの低さに驚く。全高は1130mmしかない。ということは、ドアの高さもその7割ぐらい。だから、言うまでもなく、乗り降りが至難の技。体を自在に折り曲げることは不可欠だ。

スポーツ410は、2015年に登場したモデルの最新仕様車であり、ヨダレが出るほどシルエットが綺麗なプロポーションだ。ヘッドライトの下に巨大なエアインテークに空気を送り込むことによって、前輪のブレーキを冷やす効果があり、フロントのホイール周りの乱流を解消する。また、サイドポントゥーンのインテークからも空気をミッドシップのエンジンルームに送り込み、エンジンルームを冷やす。フロントのカーボン製のスプリッター、リアのディフューザー、また大きなカーボン製リアウィングのエアロパーツが採用されることによって、レースカーと同様のグランド・イフェクトが働く。つまり、クルマが浮くことを抑制し、290km/hでは何と150kg以上のダウンフォースでマシンを路面に押し付ける力がある。

ヨダレが出るほどシルエットが綺麗なプロポーションだ。

助手席にテノール?

さて、エンジンだ。ロータス車は英国で生産されるけど、会社自体は中国のジーリー社の傘下に入っている。また、ミッドシップのエンジンはトヨタ製の3.5Lのスーパーチャージャー付きV6だ。車種のネーミングは、「スポーツ410」ということで、最高出力はもちろん410hp/7000rpm(416ps)で、最大トルクは410Nm/2500~7000rpm。

アクセルを思い切り踏んだ時に、思った。このクルマはまるで二重人格を持つジキル&ハイドのようだ。低速の1000~4000回転は普通のクラウンのような加速性と音作りを思わせる。しかし、4000回転から7000回転のトップエンド域では、エンジンノートがコロッと変わって、まるでレーシングマシンみたいに吠える。スポート410は場合によっては、助手席に世界一流テノールを乗せているかのよう歌声もあれば、うるさく吠える巨大なジャーマン・シェパードをエンジンルームに乗せている感じもする。ラジオやオーディオなんて要らない。ロータス製の4000回転以上の「ミュージック」を聞けばいい。

コックピットはスパルタンでシンプル。丸見えのギアボックスはたまらない。

ギアボックスの中身は丸見え

加速性も当然、爆発的だ。車種は1110kgしかないので、410hpはスーパーチャージャーのおかげでスロットル・レスポンスがとても鋭く、0ー100km/hのタイムはなんと3.3秒だ。また、スポーツ410の目玉の1つである6速M/Tのギア・シフターは、V6エンジンとのマリアージュは最高で、メカニズムはカチッと正確にシフトチェンジできる。他のクルマには考えられないような「ギアボックスの中身は丸見え」だけど、そのデザインはまるで美術品並みの作りだ。気づくと、必要以上にシフトをしていた。また、ドライバーに嬉しいのは、3ペダルの位置関係もピカイチで操作しやすい。

その6速M/Tは実物ではあるけど、ドライバーとして一番感動するのは、反応抜群のステアリング特性。パワステが付いていない。だから、低速ではかなり重いので、ギュッと力を入れる必要はあるけど、スピードが乗ってくると、軽くなるというより、ぴったりの重さと手応えに変わると言った方がいい。だから、40km/hでも、100km/hでもコーナーに入ったら、クルマの姿勢がフラットのまま、狙ったラインをぴったりとトレースしてくれる。文句なしのステアリングだ。よっぽどのことをしない限り、テールはスライドしない。当然、サスペンションは多少硬いので、路面のうねりや凸凹をそのまま拾ってしまうけど、このクルマなら許してしまう。

本物を目の前にすると、そのクルマの低さに驚く。全高は1130mmしかない。

コックピットは非常に狭いけど、ヘッドルームとレグルームは、身長190cmでも問題なかった。隣りに人がいる場合は、腕がよくぶつかるけどね。内装はその美術品のギアレバー以外はスパルタンでシンプルだ。視認性だけは(僕には)困難だった。信号がなかなか見えなかったが、座ったままお辞儀さえすれば、信号が見えた。

さて、唯一のネックは1400万円のプライスかな。でも、レースカー並みのルックスと、スーパーカー並みの加速性と走りをその価格で変えれば、立派なものではないか。

では最後に、この車のジャッジメントだ。このクルマはどのくらい魅力的なのか?

以下4つのグレードで考えた。

1)やめておく

2)考えてみる

3)欲しい

4)買い!

今回は、3)欲しい。(サーキットの隣りに住んでいたら、4)「買い」だけどね)

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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