米GMのEV戦略とは:次世代アーキテクチャーを応用した新モデルを続々展開予定

米General Motors (GM)は、今後数年間のEV販売戦略のロードマップの詳細を明らかにしました。高級SUVや半自動運転が可能なクロスオーバーなどが含まれています。中でも注目すべき点はバッテリーです。GMは4日、第3世代の電気自動車向けプラットフォーム「GM BEV3」の中核となる新開発のバッテリー「Ultium(ウルティウム)」を発表。これら次世代アーキテクチャーを武器に、EV攻勢を強めます。

Cadillacから発売が予定されている電動SUVのイメージCG。

BEV3プラットフォームは、来たる電気自動車の未来に向けてシフトしていく中で、今後数年の間にGMが展開する多くのモデルを支えることになるでしょう。GMは2030年のEV販売台数が一般的な予測の300万台を上回る可能性があると考えており、特に人気のあるカテゴリーでは、より多くの選択肢を提供するとしています。

市場の要求に応えるラインナップ

その鍵となるのは、ロードマップに掲載されているSUVを中心としたラインナップです。GMは現在、Chevroletブランドから「Bolt EV」という電気自動車を北米で販売しており、比較的安価でありながら、2020年モデルでは259マイル(約416km)という競争力のある航続距離を有しています。しかし、このコンパクトハッチバックのデザインは、クロスオーバーに対する消費者の需要を反映したものではありません。北米では日本同様、クロスオーバー人気が非常に高いのです。

大容量高出力の新バッテリー「Ultium」を、EV向けプラットフォーム「BEV3」と組み合わせる。

GMは今年からこの問題に取り組む姿勢を示しています。まず最初に登場するのは、2020年4月に発表予定の高級電動SUV「Cadillac Lyriq」で、仕様の詳細や航続距離などは近々明らかにされるでしょう。

同社によると、Ultiumバッテリーは最大200kWh(Tesla Model Xの約2倍)の容量に対応し、これを搭載したEVは一回の充電で400マイル(約643km)以上走行できるとのこと。また、0~60マイル(0~100km/h)加速は約3秒と推定されています。GMが自社開発した電気モーターは前輪・後輪駆動に加え、全輪駆動方式にも対応可能です。

GMCは2020年に、同ブランドのビッグネーム「Hummer」を復活させた「Hummer EV」を発売する予定です。完全電動のEVトラックですが、動力面では一切の妥協は見られません。GMCは、1,000馬力ものパワーとこれまでにないビッグトルクを発揮すると説明。2021年秋には、デトロイト・ハムトラック工場での生産を開始する予定で、さらに同工場には22億ドルを投資してEV生産の主力拠点にする計画を表明しています。

Chevroletからは「Bolt」のクロスオーバーも登場

GMの次世代アーキテクチャーは、コンパクトSUVと高級SUVをはじめとして、さまざまなモデルに採用される。

今までモデル消滅の噂が何度も立ったにも関わらず、Bolt EVの販売が中止されることはありませんでした。それどころか、Chevroletから2020年後半に新型Bolt EVを発表する予定だとGMは認めました。コンパクトなハッチバックEVをエントリーモデルとして提供することで、GMのEVラインアップへの入り口とする狙いがあると予想されます。

おそらくそれよりも重要なのは「Bolt EUV」の存在でしょう。これはBolt EVのクロスオーバー仕様ですが、現段階では詳細はほとんどわかっていません。GMは、Bolt EUVの発売は2021年夏になると述べています。ただし、新型Bolt EVおよびBolt EUVは、先述のBEV3プラットフォームを使用する予定はありません。

Bolt EUVは、ただ単に“Bolt”の名を引き継いだだけでなく、Chevroletの最新技術も導入されます。現在高級セダン「CT6」でのみ採用されているハンズフリー(手離し可能)の半自動運転システム「Super Cruise」を、Cadillacブランド以外で搭載する最初のモデルとなります。Cadillacは今年、Super Cruiseの導入を「CT4」「CT5」、そして2021年発売予定の新型「Escalade」にまで拡大する予定です。GMはグループ全体で2023年までに22台を発売する予定で、そのうち10台が来年までに登場する見込みとなっています。ゆくゆくはそれら全モデルにSuper Cruiseが導入されるでしょう。

最初のUltium・BEV3採用車両はすでに発表済み

自動運転ポッド「Cruise Origin」は無人配車サービス向けに開発が進められている。

GMはすでに、UltiumバッテリーとBEV3プラットフォームを採用した最初のモデルを発表しています。Cruise(GM傘下の自動運転開発会社)は1月に、配車サービス向けの自動運転ポッド「Origin」を発表。このOriginに新しいバッテリーとプラットフォームが採用されているのですが、発表当時はUltiumバッテリーについてよく知られていませんでした。

Cruise OriginはGMが製造する予定ですが、個人には販売されません。その代わり、ハンドルやその他の運転装置を持たないこの車は、自動運転タクシーとなることを目的としており、利用を希望するユーザーはスマートフォンのアプリから呼び出せるようになります。

今後数年間にわたって、UltiumバッテリーとBEV3プラットフォームを応用したGMのEV大攻勢が続くことでしょう。GMのこうした動向は北米市場に大きな影響を与え、その波は欧州並びに日本のメーカーにも及ぶはずです。GMのモデルを日本で見かける機会は少ないのですが、その影響力からは引き続き目が離せません。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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