リアウィンドウがない! スウェーデン製高級EVコンセプト「Polestar Precept」発表

Volvo傘下のブランドPolestarは、今年後半に「Polestar2」を発売する予定ですが、その登場を前にして、新しく魅力的なコンセプトカー「Polestar Precept」を発表しました。すでに2ドアのGTカーが発売されている今、Polestarは4ドアの電動グランドツアラーを構想しています。

ハンマー型のヘッドランプがなければ、これがVolvoの血を引くモデルであることには気づけない。

「Precept」が意味するのは「宣言」、すなわち「来るべきもの」であるとPolestarは説明します。このEVは、力強いスタイリング、特徴的なプロポーション、そして電動化を念頭に置いてVolvoデザインの再構築を目指しています。

空力に配慮した低車高のクーペスタイル

すべての車は、空気中を移動するにあたり空力特性を考慮しなければなりませんが、EVは一般的なガソリン車よりも滑らかな形状を必要とします。結局のところ、空気抵抗が少ないデザインを採用することで、そうでない車と比べて驚くほど多くの航続距離をバッテリーパックから引き出せるのです。PolestarはPreceptに対し、ロング&ローなスタイリングを選びました。

Bピラーがなく、ドアは観音開きのようだ。各ピラーの細さにも注目。

122インチ(約3.1m)のホイールベースは、Porsche Panameraのものとほぼ同じ。少なくとも私の目には、独シュトゥットガルトのGTカーの要素がPreceptにも含まれているように映ります。Polestarは、ロングドライブ用の大容量バッテリーを備えていながら、車内のスペースを有効活用しています。後部座席の足元の広さや、ヘッドクリアランスもしっかり確保されています。

Polestarによると、フロントの吸気導入口はガソリンエンジン搭載車の必須条件であり、Preceptには必要ないものだったといいます。その代わりに、2つのレーダーセンサーと1台の高解像度カメラをクリアパネルの背後に配置し、ガラスルーフ上にもLIDARポッドを設置。Polestarはこれらセンサー群を運転支援システムに使用しています。

一面のガラスルーフを採用することで、後部座席の開放感と明るさを確保。

北欧神話に登場する雷神トールのハンマーをモチーフにした形状のLEDヘッドランプはVolvoから引き継がれていますが、本家とは異なり上下2段に分割されている点が特徴的です。PolestarがSmartZoneと呼んでいるセンサー部分の上には、ボンネット上の空気の流れを加速させて空力特性を高めるように設計されたフロントウイングが設けられています。

リアウィンドウが無いことで荷物の積み下ろしが容易になった。ボディ剛性にもメリットがありそうだ。

リアを見ると、ボディ幅いっぱいに広がるブレーキランプに目を奪われます。飛行機の垂直翼にも似ており、スマートな印象を受けます。Lexusの「ES」と同様にサイドミラーはなくなり、空気の流れに対するインピーダンスが少ないデジタルミラーに取って代わりました。車内のバックミラーは、リアにあるカメラから広角の映像を映し出すスクリーンに置き換えられています。

画像を見てお気づきの方もいるでしょうが、このPreceptには従来のようなリアウィンドウがありません。ガラスルーフがドライバーの頭上からリアシートの後ろまで伸びているだけです。これにより、Preceptの設計者はテールゲートを大型化することができ、トランクルームへのアクセスを容易にしました。

動力だけでなく、内装材も環境に配慮

Polestarは18日、Googleと共同開発したAndroidベースのHMIの存在を明らかにしており、今回Preceptでそれを初公開しました。Preceptは大型の15インチセンタータッチスクリーンと、12.5インチのドライバーディスプレイを装備。GoogleマップやGoogleアシスタント、自動車用アプリなどを使用できます。また、ドライバーの好みや傾向を分析し、ドライバーにあわせたプランを提案することもできるようです。

ガソリンを使わないだけではなく、内装の素材も廃材などを活用することで環境への配慮をアピールしている。

この新しいHMIは、ドライバーの視線を追うためにアイトラッキングを使用しています。デジタルメーターは、ドライバーがどこを見ているかに応じて、自動的に焦点を合わせたり、注意が散漫にならないように明るさを調整したりします。センタータッチスクリーンの周囲にある近接センサーは、手を近づけると追加のコントロールを呼び出します。

視線の動きをキャッチし、注意力が散漫にならないようメーターの表示が自動調整される。

こうした技術はすべて、環境に配慮した新素材を用いた車内空間とセットで提供されます。インテリアに使用されているBcomp社製の亜麻を用いた樹脂素材は、従来のプラスチックやその他の素材に比べて最大50%の軽量化を実現し、プラスチック廃棄物を最大80%削減します。

後部座席の後ろには、Polestarのロゴがクリスタルの中にホログラムのように浮かんでいる。

シートには、ペットボトルを再利用した繊維を3Dパターンに編んだものを使用しています。ボルスターとヘッドレストは再生コルクビニール、カーペットは回収された漁網を使用しています。Polestar曰く、「これらの素材は、デジタルアートとの融合により、レザー、ウッド、クロームといった従来の素材を超える新たなプレミアムラグジュアリーを定義します。」とのこと。

PreceptはPolestarの「ビジョン」

さて、最大の疑問は単純明快です。「Precept」はいつ発売されるのでしょうか。Polestarは安易に約束することには慎重な姿勢を示していますが、その熱意を完全に抑えることはできていないようです。

PolestarのCEOであるThomas Ingenlath氏は、「Preceptは“宣言”であり、Polestarの存在意義を示すビジョンです。」と述べ、「この車は、社会や産業が直面する明確な課題への対応です。これは遠い未来の夢ではありません。Polestar Preceptは、将来の自動車のプレビューであり、環境への影響を最小限に抑えるためにイノベーションをどのように適用するかを示します。」とも語っています。

まだ明らかになっていない情報はたくさんあります。Polestarは、Preceptに搭載されるモーターの数、バッテリーのサイズ、フル充電時の航続距離などの性能については言及していません。ボディサイズを考えると、この車が高級セダンのセグメントを目指しているのは明らかですが、Porsche Taycanや近く発売されるAudi e-tron GTのようなライバルに対し、価格や性能面でどのように対抗してくるのかは分かりません。

Preceptは3月上旬に開催されるジュネーブ国際モーターショー2020でデビューを飾る予定で、会場ではこの美しいEVの実車を見ることができます。 東京モーターショーに間に合えばよかったのに、と思わずにはいられません。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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