ゴツくて頑丈なEV、あります。最新プラットフォームを採用したVW「ID.Ruggdzz」発表

Volkswagen(以下、VW)は次世代EVの「ID.」シリーズを続々と展開し、EVのラインナップ拡大を試みています。その中で、EVが都市部に限った車ではないことを証明するために、新しく頑丈なクロスオーバーの開発を進めています。ID.シリーズの生産が始まったのはつい最近のことですが、VWはコンセプトカーをベースにした新モデルを数多く計画しています。

ID.シリーズの滑り出しは良好です。最初のモデルである「VW ID.3」はコンパクトなEVハッチバックで、サイズとデザインは「Golf」に似ています。同社の次世代EV向けの最新プラットフォーム「MEB」を採用した初めてのモデルでもあります。MEBプラットフォームは拡張性に優れたアーキテクチャーであり、今後VWグループのほとんどのモデルに採用されることになります。

ID.Ruggdzzのコンセプトモデル。丸みを帯びたデザインだが、実際には、もっと直線基調のソリッドなスタイルになると思われる。

ID.3の後には「ID.4」が登場する予定ですが、これは「ID.Crozz コンセプト」の量産モデルと思われます。ID.4は、6月のデトロイト・モーターショー2020で発表される可能性が高く、環境に優しいクロスオーバーとしてアピールされるでしょう。ただ、よりニッチで印象的な車が生まれる可能性もあるようです。

その車とは、現在ID.シリーズのひとつとして開発が進められている「ID.Ruggdzz」です。Autocar(UK)のレポートによると、このSUVは「rugged(ゴツい・頑丈)」の追求と、VWがいま何を考えているかを表現しているとのこと。4輪駆動方式を採用すると言われているこのRuggdzzは、MEBプラットフォームをベースにしており、フロントとリアの車軸に個別の電気モーターを持つツインモーターシステムを使用します。駆動力が最も大きい車輪の有効性を最大化するために、トルクを片輪に振り分けることもできます。

Ruggdzzの全長は、現在のVW「Tiguan」に近い約4.5mになるようです。デザインは曲線を多用する他のID.シリーズとは一線を画しており、直線的でスクエアな形状です。四角いヘッドランプ、ボクシーなフロントグリル、水平基調のボンネット形状、ほぼ垂直に立ったフロントガラス、フラットなルーフ、シャープなサイドビュー。さらに、Cピラーにガラスパネルを採用することで、個性的なスタイルをより際立たせています。

VW EVファミリーの象徴となる「Icon」

VWは、従来のモデルの展開よりもID.シリーズのサブセットを構築することを目標にしているようです。実際、空気力学的に有利な流線形のデザインになりがちなEVですが、ID.Ruggdzzであえてエッジの利いたスタイリングを採用するのは、より多くのユーザー(EVらしくないデザインが好きな人)の目を引くためでしょう。ある内部関係者によると、これは「かのBeetleと同じように、時代やクラスを越えた品質を備えたID.モデル」の一部であるとのこと。

動画内で登場するのはID.Buggy。 どことなくBeetleを彷彿とさせるデザインだ。

これらは「ID Icon」シリーズとして知られており、おそらく「ID.Buzz」と「ID.Buggy」が含まれることになるでしょう。前者は日本でも「ワーゲンバス」の名で親しまれている、古き良き「VW Type2」のEVバージョン。後者もまた、“バギー”の語源にもなった「Bag(Beetleの愛称)」をモチーフにしています。

Ruggdzzは、ホイールベースを延長した7人乗りモデルなど、派生型の展開にも期待できます。大型SUVの需要が「Atlas」の開発を促した北米のような市場では、この7人乗り仕様は歓迎されるでしょう。

しかし、もっと興味深いのは、確実にVW社内で検討が進められているオフロードモデルです。さまざまな地形にあわせて最低地上高を高くし、ルーフに取り付けるスポットライトなどのアクセサリー装着が可能になると思われます。このプロジェクトが承認されれば、2023年には製品化される可能性があると情報筋は伝えています。

VWは以前から、拡大するEV市場への対応策として、モジュール式プラットフォーム「MEB」の柔軟性をアピールしてきました。このプラットフォームは、前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動など、さまざまなサイズやカテゴリーの車に対応できるように設計されており、バッテリーのサイズにも配慮が行き届いています。また、MEBプラットフォームを他社に提供することで、VWにとってサードパーティーの収益源となる可能性もあり、新しいEVを市場に送り出す近道にもなるでしょう。直近では、Fordが“Baby Mustang”とも呼ばれる「Mustang Mach-E」にMEBを採用するとの情報を得ています。

メーカー間のプラットフォーム共有化に対しては、「車の個性がなくなる」といった批判的な意見もあります。しかし、今後は多くのメーカーがコスト削減のためにプラットフォームを共有することになるのではないか、と予想しています。プラットフォームはいわば「土台」であり、その上にどのような「上屋」を載せるのか、といった点でメーカーの個性を表現することになるでしょう。排気ガス不正問題の影響がいまだに尾を引いているVWは、自社のEVラインナップにアイコニックなモデルを展開しつつ、他社へのMEB提供により収益の安定を目指しています。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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