2021年モデル Jaguar「F-Type R/P300」ファーストインプレッション:驚きのアップグレード内容

英国スポーツカーの名門Jaguarから、2021年モデルの「F-Type R」「 F-Type P300」が登場。SlashGear(US)のVincent Nguyenがポルトガルの美しいN222道路で両モデルに試乗しました。その詳細レビューをお伝えします。

Jagの伝統を受け継ぐ最新鋭のスポーツカー

Jaguar F-Typeは、競争力の激しいニッチな市場で独自の存在感を放っています。Porsche 911とBMW 8シリーズに挟まれたF-Typeは純粋なスポーツカーファン向けのモデルで、マツダのMX-5(ロードスター)がファンの心をときめかせるのと同じです。2013年にF-Typeが発売されたとき、1960年代に勇名を馳せたE-Typeの後継車として瞬く間に認知されました。ティアドロップ型のヘッドライト、ロングノーズの典型的なスポーツカーのプロポーションを有し、Jag(Jaguarの愛称)の名にふさわしい走りを見せました。勇猛なエンジン、スタンダードなマニュアルギアボックス、後輪駆動、そしてその象徴的なシルエット。あなたが古き良きモデルに刺激を受けるなら、かのフェラーリ氏をして最も美しい4輪マシンと言わしめた、豪奢な車の後継モデルを選ぶのも悪くないでしょう。

2021年モデルのJaguar F-Typeでは、デザイナーたちは明らかに、より攻撃的で、獲物を狙っているかのような、積極的な雰囲気を目指したはずです。そして、その試みがうまくいったことは車を見れば分かります。「新しいF-Typeは真のJaguarのデザインDNAを体現しています。」とJaguarのデザインディレクター、Julian Thompson氏は説明します。「Jaguarならではの純粋さ、プロポーション、存在感を備えた最も美しいスポーツカーをデザインすることが、私たちの挑戦でした。新しいF-Typeはこれまで以上にドラマチックで、すべてのライン、サーフェス、機能面の目的がさらに明確になっています。」

以前のF-Typeのフロントマスクは、もう少しヘッドライトが大きくて溌溂としていました。今回の新モデルは、落ち着きを取り戻したような、シャープな印象に変わりました。デザイン上で最も明らかな変更点は、旧式のヘッドライトが廃止され、特徴的なシグネチャーランプを備えた、よりスリムで、より安全、より近代的なLEDピクセルユニットに置き換えられていることです。現在では全グレードで標準となっています。

フロントグリルは黒いメッシュ仕様になり、フロントバンパーの形状も変わりました。クラムシェルボンネットは、より流動性の高い空力特性を持つように再設計されています。また、冷却と空力の効率を向上させるために、2つのエアベントの位置を変更して拡大しました。以前のF-Typeは遊び心のある顔つきをしていましたが、新しいモデルはこれらの変更によって大人な雰囲気になりました。

リアのテールライトはスリムになっていますが、F-Typeにおなじみのシケインのライトストリップをそのまま残しています。全体的に見てクリーンなアップデートであり、変更は比較的小規模かもしれませんが、その効果はとても高いものです。「F-Typeは路上で最も美しいスポーツカーのひとつであり、Jaguarのスポーツカーの決定版であることに変わりはありません。」と、Jaguar広報担当のTaylor Hoel氏は主張しています。「この車の個性は、楽しむだけのものです。」

3つのグレード展開 内燃機関を楽しむ最後の機会?

新しいF-Typeは、間違いなくJaguarにとって重要な車です。実際、F-TypeはセダンのXファミリー(XE、XF、XJ)、SUVのPaceファミリー(E-Pace、F-Pace、I-Pace)と並んで、Jaguarブランドの三本柱のひとつとされています。マイナーチェンジされたF-Typeはまだ第一世代のプラットフォームを使用していますが、Jaguarはこのアップデートで「壊れていないものは修理しない」というスタンスを取りました。

それぞれのファミリーがEV仕様車をラインアップしている状況で、近い将来に全電動のF-Typeを期待するのは的外れでしょうか? 現時点では、EVモデルの拡大がJaguarのロードマップの大きな要素であることは明らかですが、高級スポーツクーペの分野でTesla Roadster v 2.0と競合することに興味があるかどうかはわかりません。Jaguarはバーミンガムにある同社のキャッスル・ブロムウィッチの組立工場に多額の投資を行い、拡大するEVのラインアップに対応しようとしています。

つまり、ここで触れるべきは内燃機関であり、F-Typeで興味深いのは、エンジンの選択肢の豊かさです。ベースモデルのP300のスペックは、以下の通り。

  • パワーユニット: 2.0L ターボチャージャー付き4気筒エンジン
  • 最高出力:296hp
  • 最大トルク:295ポンド・フィート(400Nm)

パンチのきいた4気筒エンジン搭載モデルです。そのパワーはうなり声と共に、8速ATを介して後輪に送られます。そう、マニュアル仕様はもうありません。新しいF-Typeはすべて8速ATのみで、ベースモデルは唯一の後輪駆動バージョンです。

続いてF-Type R-Dynamic P380のスペックはこちら。

  • パワーユニット:3.0L スーパーチャージャー付きV6エンジン
  • 最高出力:380hp
  • 最大トルク:339ポンドフィート(460Nm)

このグレードから全輪駆動になり、トルクベクタリング機構付きリミテッドスリップディファレンシャルにより、グリップとハンドリングが向上します。

そして大本命ともいえるF-Type Rは、前期モデルのSVRから高出力のV8を受け継いでいます。

  • パワーユニット:3.0L スーパーチャージャー付きV8エンジン
  • 最高出力:575hp
  • 最大トルク:516ポンド・フィート(700Nm)

新型F-Type Rは、その驚異的なトルクを4輪すべてに伝えます。マニュアルの設定はありませんが、Jaguarの「Quickshift」8速ATは、自分でシフトを制御したい人のためにパドルシフトを備えています。

かのProject8と同じシフト・ロジック・プログラムを採用したこの新しいトランスミッションは、基本的にZF製8速ATの高トルクバージョンです。ギアはステアリングに装着されたパドルシフトか、Sport Shiftのギアセレクターで操作できます。F-Typeはすべてのグレードで排気音の任意設定が可能なアクティブエキゾーストシステムを搭載しており、R仕様ではご近所の迷惑にならないようにクワイエットスタートモードを採用しています。F-Typeの最も強力なバージョンは、わずか3.5秒で時速60マイル(96km/h)を超え、最高速度は186マイル(300km/h)に達します。一方、P300の最高速度は時速155マイル(255km/h)で、0→60マイル(0→96km/h)加速は5.4秒という数値を出しています。

インテリアは、前期モデルよりも高級感があります。前期も悪くはありませんが、安っぽいプラスチック製の部品が随所に目立ちました。新しいF-Typeでは、ウインザーレザー、ノーブル・クローム、プレミアム・スエードクロスのような高級素材と美しいモノグラム・ステッチで加飾されています。「Jaguarは70年以上にわたってスポーツカーを作ってきましたが、その伝統こそが開発チームに本当に素晴らしいものを作るモチベーションを起こさせました。」とThompson CSOは言います。「最新鋭のテクノロジーと上質な素材、および仕上げにより、理に適った美しさが車内にもたらされ、ドライバーにも同乗者にも喜びを与えるでしょう。」

ドライバーの正面には、独自のグラフィックスを持つ新しい12インチHDデジタルインストルメントクラスタが付属しています。デフォルトのディスプレイモードでは、大きなタコメーターがディスプレイの中央に配置され、Porsche 911のDNAが見え隠れします。エアコンをONにすると、ダッシュボード中央に隠れていた吹き出し口がせりあがってくるギミックはこれまでと同様。赤いスタートボタンが点滅することで、車を発進させる時の臨場感を演出します。10インチのタッチスクリーンを備えたJaguarのインフォテインメントシステム「Touch Pro」は、Appleの「CarPlay」や「Android Auto」に加えて、HVAC用のダイヤルが装備されているほか、無線によるシステムアップデートが可能となっています。

ポルトガルで2つのグレードを比較試乗

2021年モデル Jaguar F-Typeの試乗では、よりタイトなハンドリング、ぴりっとしていながらも率直な運転感覚、そして改良された排気音が全体的なハイライトであることを認識するのにそれほど時間はかかりませんでした。V6エンジン搭載のP380は運転できませんでしたが、ベースのP300とV8モデルのF-Type Rにポルトガルで試乗することができました。

ポルトガル第2の首都と呼ばれるポルトから、首都リスボンまでの約300kmに及ぶルートを進むにつれ、このダイナミックなドライブは素晴らしく魅力的なものになりました。正直なところ、F-Type Rを運転していても、低出力のP300を運転していても、どちらも欠点という欠点は見つかりませんでした

P300に搭載されているのは4気筒の小排気量エンジンかもしれませんが、ドライビングダイナミクスは正確で、初心者、中級者、または若いドライバーに最適です。リチューニングされたシャシーとサスペンションは、走行中の不快な振動にも十分に対処できています。4気筒エンジンの軽量化によって、フロントエンドが明らかに軽快になったのが感じられました。

ほとんどの場面で、トランスミッションはバターのように滑らかでしたが、パドルシフトを使用することでより満足感を高めることができました。なかでも3速は完璧です。コーナーの直前にアクセルを緩め、出口のストレートでレッドゾーンまでフルスロットル。これを何度も繰り返しました。より長いストレートでは、4速にシフトしてから3速に戻しても問題はありませんでした。ちなみに、空はうっとうしい曇り模様で小雨が降っているにもかかわらず、コンバーチブルのトップをほとんど開け放していたこともお伝えしておきましょう。エントリーグレードのスポーツカーが、これほど素晴らしい体験をさせてくれることはなかなかありません。

F-Type Rの方では、電子制御式ダンパー、スプリング、ボールジョイント、アッパーコントロールアームを最大限に活用することができます。後輪駆動方式の以前のF-Type Rは、とても手に負えるものではありませんでした。確かに、その素晴らしいスタイリングを全肯定するようなサウンドと華麗さを持ち合わせていましたが、コーナーを通過する際は昔ながらのアメリカン・マッスルカーのように落ち着きを失う傾向がありました。

2021年モデルでは、Jaguarは電動パワーステアリングを採用し、新しい低摩擦のホイールベアリングを搭載。スタビリティコントロールとリアの電子制御ディファレンシャルを再プログラムし、575hpのスーパーチャージャー付きV8エンジンを最大限に活用しました。リアバイアスのトルクスプリットと幅広なリアタイヤをAWDシステムと組み合わせることで、ドライバーに不安を与えることなくコーナーを確実に曲がることができます。ポルトガルの華麗なN222道路を全開で走るF-Type Rは、途中で雨が降って道路が滑り始めたにもかかわらず、安心感があり、目もくらむほどのハイスピードでした。

排気音は素晴らしく、ハンドル操作もよりダイレクトに感じられました。デフォルトでオンになっているクワイエットモードのおかげで、油温が低いスタート時でも騒音を気にするほどではありません。この機能をオフにできるのは良いことですが、わざわざする必要はないでしょう。

F-Typeに遊び心があるのはいいのですが、同時に腕白できわどいところがあるのも昔から変わらない事実です。私にとって唯一の小さな不満はブレーキでした。時々、ブレーキの利き具合がはっきりしないことがありました。幸いなことに、Jaguarにはこの問題に対処するカーボンセラミック製ブレーキがオプションで用意されています。F-Type Rの新しいクアッドエキゾーストシステムは今でも素晴らしいと思いますが、Jaguarがその声帯を調整したことで、そのユニークなキャラクター性の一部が失われたように感じるかもしれません。以前のモデルにどれほど乗っていたかにもよりますが、いずれにせよ、時間の経過とともにこれまで知らなかった新たな運転感覚を味わうことになるはずです。

大幅な改良にも関わらず価格はほぼ据え置き

新型F-Typeがデザイン的にもテクニカル的にもブラッシュアップされていることを考えると、Jaguarが基本価格を大幅に引き上げることなくリリースしたことは注目に値します。

ベースグレードのP300の価格は以下の通り。

  • F-Type P300:61,600ドル(約675万円)
  • F-Type P300 コンバーチブル:64,700ドル(約709万円)
  • F-Type First Edition P300:73,100ドル(約802万円)
  • F-Type First Edition P300:75,400ドル(約827万円)

中間グレードの F-Type R-Dynamic P380、そして最上級グレードのF-Type Rの価格は次の通りです。

  • F-Type R-Dynamic P380:81,800ドル(約897万円)
  • F-Type R-Dynamic P380 コンバーチブル:84,900ドル(約931万円)
  • F-Type R:104,225ドル(約1,143万円)
  • F-Type R コンバーチブル:106,925ドル(約1,173万円)

最上級グレードでも、前期モデルのSVRエディションより約20ドル安くなっています。

ほとんどの自動車メーカーが、モデルチェンジを価格を押し上げる口実と考えている昨今、Jaguarの戦略は新鮮です。なおかつ、これほど華麗なスタイリングに仕上がっているのは素晴らしいことです。F-Typeをずっと欲しがっていたものの、その反抗的な性格や騒音、上質さが足りないことなどを理由に、ネコ科のエンブレムに見合う価値がないと思っていた人も少なくないはず。そんな人こそ、2021年モデルのF-Typeを試す価値は十分にあるでしょう。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

2 Comments

  1. Simple Beauty Design Reply

    To:林様
    記事を楽しく拝見させて頂きました。ありがとうございます!
    ただ数点ございまして.. F-TYPEの発売は2013年からと記憶しております。
    まただいぶ細かい箇所ですが、Officailでも「F-TYPE」と大文字で表記いたします。
    (他の車種も同様に大文字を使用します。)

    1. 林 汰久也 Post author Reply

      Simple Beauty Design様
      ご指摘いただきありがとうございます!
      発売年の誤記、大変失礼いたしました。
      車名の表記については、プレスリリースを参照しております。
      そのため、年数のみ修正し、車名は「F-Type」のままにさせていただいております。何卒ご了承ください。
      これからも良質な記事をお届けできるよう努めてまいりますので、引き続きお楽しみいただければ幸いです!

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