テスラのスーパーチャージャーがテスラ車以外でも利用可能に

電気自動車(EV)の普及が進み、西ヨーロッパ諸国では2020年代末までに新車販売の100%をEVとする目標を掲げています。そんなEVに関する不安として付きまとうのが充電ですが、米国でのEV充電が今後もっと簡単になりそうなニュースが報じられました。米国政府と大手ハイテク企業や自動車会社数社が共同で、米国内のEV充電インフラを大幅に改善することを目的とした大規模なインフラプロジェクトに取り組んでいるのです。EV界を牽引するテスラは、このプロジェクトに参加している大企業のひとつ。

EVの普及を促進するための政府の計画は、新しいものではなく、これまでにも税額控除や補助金のような制度が設けられていました。これらの制度の中には、自動車メーカーごとの予算上限が設定されているものもあり、EVの選択肢として人気のテスラは、早い段階でこの上限に達しました。EV購入者が補助金などの恩恵を受けたい場合、まだ予算上限に達していない自動車メーカーのEVを選択することが必要となりますが、テスラ以外の電気自動車を選ぶことは、全米に908箇所ある同社の充電ステーションにアクセスすることはできないことを意味していました。しかし、それが今後変わるようです。

既に欧州ではテスラの充電ネットワークの一部をテスラ以外のEV所有者に開放していましたが、新しい計画のもとでアクセスがさらに拡大される可能性があることが分かりました。2021年11月、テスラは、オランダにある 「スーパーチャージャーステーション 」10カ所で、テスラ以外のEVが同社の急速充電ネットワークを利用できるようにするパイロットプログラムを開始しました。その後、ノルウェーとフランスの一部のステーションにもパイロットプログラムは展開され、ベルギーとドイツのEVも追加されました。この試みは、EVの普及促進を目的としたものですが、欧州に限定した取り組みでした。

6月28日、米バイデン政権は、「EV充電をより安価で身近なものにする 」ために、民間企業から7億ドルの出資を取り付けたと発表しました。ホワイトハウスは、この記録的とさる投資により、2,000以上の雇用も創出され、毎年25万台の充電器が追加されることになると主張しています。

テスラはニューヨークのギガファクトリーを中心にこの計画に参画し、ニューヨーク州バッファローにあるこの工場では、現在、同社のスーパーチャージャーステーションを生産しています。1基あたり250kWの充電が可能なこのステーションをの生産を進め、ネットワークに追加する意向だそうです。テスラの最大の貢献は、テスラ以外のEVでもテスラのスーパーチャージャーで充電できるようにするための新しい機器を生産することにコミットしている点でしょう。テスラによると、同社の250kW充電器V3は、1時間で約1609km、5分で120kmの航続距離を実現する高速充電器だそうです。

テスラの他にも、Siemens(シーメンス)、ABB E-mobility、ChargePoint(チャージポイント)、Flo(フロー)、Tritiumトリチウムなどの企業がこの計画に参加しています。米国本土に750以上の充電ステーションを展開するエレクトリファイ・アメリカも、いくつかの大きなコミットメントを発表しています。全米で「1,800カ所の充電ステーションに最大1万台の超高速充電器」を建設すると発表しており、これは現在ある高速充電ステーションの数を上回る数で、計画の大きさを示しています。このプロジェクトには、シーメンスとフォルクスワーゲングループが、それぞれ4億5,000万ドルの資金提供を約束しています。シーメンスは、エレクトリファイ・アメリカに加え、今後4年間で全米に100万台のEV充電器を設置する計画です。このプロジェクトの一環として、シーメンスはすでに過去6ヶ月で2億5000万ドル以上を米国に投資しています。

ホワイトハウスの発表によると、このプロジェクトは、「EVの未来をリードし、アメリカで製造する」という米国政府の計画の一部だそうです。連邦政府の各機関は、2027年までに電気自動車を追加購入し、2030年までに車両を完全に電気駆動にすることをすでに約束しています。また、米国政府は2030年までに、米国で販売される新車の半分をゼロエミッション車にする目標を掲げています。バイデン政権は、2021年に導入した燃費・排ガス基準が「消費者のお金を節約し、汚染を削減し、公衆衛生を高め、環境正義を推進し、気候危機に取り組む」ことを期待していると、関係者は述べています。

EVの普及と実用性を向上させるためには、充電設備へのアクセス性を改善することは必然です。米国石油協会によると、現在米国には145,000以上の自動車用給油ステーションがあります。これは、米国とカナダを合わせたEV充電ステーション数の3倍に近い数です。また、これらの充電ステーションは立地が悪い場合もある他、充電ステーションの充実度合いには地域差もあります。近年、EVの技術は格段に進歩しましたが、その反面、インフラの整備がEV普及の足かせになっていることが指摘されています。そのため、最近の政府の取り組みと、民間の資金提供によって、バイデン陣営の野心的な目標は達成可能になったのかもしれません。

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