GM 「アルティウム」の新機能で航続距離延長、充電時間短縮を目指す

電気自動車(EV)の航続距離を伸ばすには、大容量のバッテリーだけでは不十分です。GMは5月中旬に発売するキャデラックの「Lyriq(リリック)」に先立ち、BEVプラットフォーム技術「Ultium(アルティウム)」の主要な機能を発表しました。GMによれば、11の特許を取得したアルティウムのエネルギー回収システムは、バッテリーの廃エネルギーを回収し再利用することで、最大10%の航続距離延長、充電時間の短縮、そして社内の冷暖房の省エネ化が期待できるそうです。

周囲の環境から熱を取り出し、バッテリーやその他のシステムを暖めるために設計されたヒートポンプは、最近のEVではますますその役割が大きくなっています。GMの新システムでは、ヒートポンプがEVの外部と内部から熱を取り出せるだけでなく、アルティウム推進システム自体から発生する廃熱を回収して蓄えることができるのです。

「車内の暖房と冷房の両方を行うことができるシステムで、同時に、バッテリーの加熱と冷却、推進も行う、すべて1つのシステムです。」と、アルティウムのエネルギー回収機能プロジェクトマネージャーであるLawrence Ziehr(ローレンス・ジーア)氏は説明します。

重複を排除し、重量とコスト減

これまでGMは、シボレー・ボルトEUVのようなEVに、より複雑な暖房と冷房の配置を採用してきました。これは、システムとしてはシンプルなのですが、部品の重複による重量やコスト面などで、理想的とは言えない構造でした。

一方、アルティウムのシステムは、冗長性を排除することで、軽量化、コスト減に貢献。その分、複雑なシステムになるものの、ジーア氏は「システム間の接続をよりスマート」にし、システムの効率化を図ったそうです。

エネルギー回収システムは、バッテリー、電気モーター、キャビンHVAC、その他のコンポーネントを含む複数の冷却ループを、個別に制御可能なバルブアレイで連結するもので、効果的に機能しています。例えば、GMCハマーEVの「Watts To Freedom(ワット・トゥ・フリーダム)」発進制御モードでは、エネルギー性能を最大化するためにバッテリーを暖め、同時にモーターを冷やしすことで、静止状態から97km/hをわずか3.0秒で加速を実現しました。

より効率的なEV

バッテリーが冷たい状態で充電を行なった場合、充電速度は遅くなります。アルティウムはバッテリーを電力を使って人為的に温めるのではなく、廃エネルギーを回収して再利用することで、最適な状態での充電を実現し、充電速度の向上を目指します。

また、廃エネルギーは、社内の冷暖房に利用したり、バッテリーパックそのものを巨大な蓄熱体として利用するなど、より複雑なアレンジも可能だそうです。バッテリーパックを意図的に高温にし、その熱エネルギーを車内の温めに利用し、すべてのセルを航続距離に利用することができると、ジーア氏は指摘します。

高価なオプションではなく、標準装備で提供

一般的なヒートポンプシステムは、周囲温度が下がると効きが悪くなりますが、GMはアルティウムが摂氏-30度でも作動し続けることを約束していす。システム間の接続方法により、システム内部の熱を少し上昇させることで極寒地でも効率化を可能にしています。「寒冷地では、同等の内燃機関自動車よりも早く車内を暖めることができます」とジーア氏は言います。

また、GMがこのエネルギー回収システムを高価なオプションとして設定していないことも注目すべき点です。今後すべてのアルティウム採用車にこのシステムを標準装備し、将来的には、EV以外の車種にも搭載される可能性があります。GMは、クルマ以外にもウルティウムの技術を応用する方法を検討しているそうです。

廃エネルギー再利用により、バッテリーパックのサイズから想像されるよりも長い距離を走ることができ、すでに納車が始まっているハマーEVの航続距離は530km、5月19日から予約受付が開始されるキャデラックのリリックの航続距離は480km以上とされています

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