ペブルビーチでのデビューから2年、ブガッティの『ラ・ボワチュール・ノワール(La Voiture Noire)』がついに納車されます。「黒い車」という意味を持つラ・ヴォワチュール・ノワールは、スーパーカー『シロン』をベースとしたワンオフモデルです。デビュー当時は、世界で最も高価な市販車とされました。
ブガッティのステファン・ヴィンケルマン社長は、次のコメントを発表しています。
「完成したラ・ボワチュール・ノワールによって、わたし達は世界で最も洗練されたハイパースポーツカーを開発していることを改めて証明することができました。ブガッティの創造性と芸術性を余すところなく発揮したユニークなプロジェクトです」
ラ・ボワチュール・ノワールは、ブガッティが1936年から1938年にかけて製造した『タイプ57 SCアトランティック』のDNAを受け継ぐワンオフモデルとして2019年に初登場しましたが、そのアイデア自体は、20年以上前からあったようです。ブガッティのデザインディレクターであるアヒム・アンシャイトは次のように述べています。
「ラ・ボワチュール・ノワールを開発するというアイデアに、わたし達はむしろ畏敬の念を抱いていました。ブガッティの長い歴史の中で、タイプ57 SCアトランティックほど伝説的な地位を獲得し、ブランドの代名詞となった車両は他にありません」
ブガッティのアイコンであるタイプ57 SCアトランティックの名前は、創業者エットーレ・ブガッティの息子、ジャン・ブガッティの親友であるフランス人飛行家、ジャン・メルモーズに由来しています。メルモーズは航空業界のパイオニアであり、南大西洋(South Atlantic)を初めて航空機で横断した人物でもあります。ブガッティは、このモデルを4台しか製造しておらず、当時は世界最速のクルマとして知られていました。
ジャン・ブガッティは、4台のアトランティックのうちの1台を日常的な移動手段として使用し、親しみを込めて「ラ・ヴォワチュール・ノワール」(黒い車)と呼んでいました。しかし、第二次世界大戦後、4台のうち1台が行方不明となり、現存するのは3台のみ。もし最後の1台が発見されれば、1億ドル以上の値がつく可能性があると言われています。
幸運な(そして超富裕層の)顧客のために1台だけ製作されたラ・ヴォワチュール・ノワールは、車両本体価格が20億円と言われており、『ロールス・ロイス・ボートテイル』が30億円以上という驚異的な価格で登場するまでは、世界で最も高価な市販車として知られていました。
ラ・ボワチュール・ノワールは、延長されたホイールベースに、「ブラック・カーボン・グロッシー」と呼ばれるカーボンファイバー製のボディが取り付けられています。インテリアは、オリジナルのタイプ57 SCアトランティックと同様に、ハバナブラウンのグレインレザーシートとアルミニウムトリムを採用。ロールス・ロイスのボートテイルの方が高価ですが、パフォーマンスと希少性に関してはこれ以上のクルマはないでしょう。
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