英国のスタートアップ企業であるヴィリテック(Viritech)社は、水素を動力源とする新型ハイパーカー『アプリカーレ(Apricare)』を発表しました。ピニンファリーナ『バッティスタ』、リマック『C_Two』、ロータス『エヴァイヤ』などの電動ハイパーカーとは異なる水素燃料電池車ですが、最大の特徴は水素の貯蔵方法にあります。
アプリカーレという車名は、ラテン語の「Apricus」(「太陽に触れる」という意味)に由来します。アプリカーレは、そのコアとなる水素技術が自動車、航空宇宙、海洋、エネルギー、鉄道貨物などの分散型エネルギーシステムにどのように役立つかを示すショーケースとされています。
このクルマを開発したヴィリテックは、「世界をリードする水素パワートレイン・ソリューションの開発企業」になることを目指しているとのこと。アプリカーレについては、「出力や航続距離の要求が高まったり、長期的なエネルギー貯蔵が必要になったりした場合に、水素がバッテリーよりも優れていることを実証するためのもの」であると述べています。
水素燃料電池車のアプリカーレは、現時点ではコンセプトモデルに過ぎませんが、水素の貯蔵方法は非常にユニークです。従来のタンクではなく、軽量なグラフェンを使用した水素タンクを、車両のモノコックフレームの一部として組み込んでいます。つまり、ボディ骨格の一部となっているのです。このレイアウトにより、車両重量はバッテリー駆動の電動スーパーカーの半分になるとされています。コーリン・チャップマンも喜ぶでしょう。
ヴィリテックはまた、ファミリー向けSUV(仮称:Tellurio)と、長距離用の大型セミトラック(仮称:Jovian)の開発にも取り組んでおり、いずれもアプリカーレと同じ水素貯蔵システムを採用する予定です。同社は将来的に、この技術をサプライヤーや自動車メーカーにライセンス供与することを目指しています。
アプリカーレに話を戻すと、レーシングヘルメットのようなキャビンとフロントガラスのデザインは、ケーニグセグを彷彿とさせます。また、コンセプトカーということで、出力や最高速度、航続距離などの具体的な情報は明かされていません。
アプリカーレの直接的なライバルとしては、4基の電気モーター、2,000馬力、最高速度355km/hを誇る水素燃料電池車、ハイペリオン『XP-1』でしょう。XP-1は1,600kmの航続距離を実現するとされていますが、ガルウィングドアを採用したアグレッシブなスタイリングから、アプリカーレもXP-1と同様の性能と航続距離を持つことになるかもしれません。
ヴィリテックは、今後1年半にわたってアプリカーレの開発を進め、2023年初頭までに25台の限定生産を行う予定です。価格は未発表ですが、おそらく1億円を下ることはないでしょう。
EVには航続距離や充電の課題がありますが、真の無公害車を実現するには、水素が鍵になるかもしれません。
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