100周年を迎えたマツダ 生き延びるのに過去20年で3回も再生を経て

ロータリー、ロードスター、ルマン優勝で有名になったマツダは、1月30に100周年を迎えた。そのめでたい節目を祝うのに、全世界が待ちに待った新型ロータリーのスポーツカーを発表したと言いたいところだけど、残念ながら、そういう輝かしいものはなかった。そんな高性能車は出ないとは言っていない。ただ30日には現れなかっただけ。

では、マツダはどのように祝ったのか? 広島本社で記念式典を行い、丸本明社長がスピーチをした。

マツダ・ロードスター

「マツダは100年前にコルクの製造で創業し、その後、自動車の製造の道に進みました。今では130を超える国・地域のお客さまにマツダ車をご愛顧いただいております。長い道のりの中、良いときも、厳しいときも、お客さまをはじめ、販売会社さま、お取引先さま、ビジネスパートナーさま、地域の皆さまなど、ステークホルダーの皆さまからの支えがあったからこそ、今日という日を迎えることができました。全ての皆さまに心より感謝申し上げます」などと述べた。

確かに、良いときも、厳しいときもあった。良いときを思い浮かばせてくれるのは、1960年に生まれた同社初の4輪車「R360」、1967年に披露した初のロータリー車「コスモスポーツ」、1978年に出た「RX-7」、1989年に登場し世界一のスポーツカーになった「ロードスター」、1991年のルマン24時間レース優勝、マツダ3やマツダ6の登場、それに2012年に初めて代表的な魂動デザインと、スカイアクティブ技術をフルに採用した「CX-5」などだ。

マツダRXー7

一方、厳しいときとは? 1973年のオイルショックの影響で、ロータリー車は燃費が嵩むため販売が急速に落ち込んだ。オイルショックなどの影響で業績が悪化したマツダは1979年に、フォードから25%の出資を受け入れた。フォードは2003年まで4代続けて社長を送り込み、36年も資本提携が続いた。2008年にリーマンショックでフォードの経営が悪化し、結局は2015年に資本提携が解消された。

20世紀の後半、マツダは色々実験をした。1989年に発表されたユーノス・ブランドは上手くいかず、1996年に中止し、1994年より北米で展開する予定だったプレミアムブランド「アマティ」計画は、マツダの経営状況悪化のために全てがキャンセルされた。

コスモスポーツ

実は、21世紀に入っても、マツダは実験を続けている。というのは、2002年から18年で3回も再生しているのだ。これだけ短い間に経営やデザインの方向性をパッと変えられることは、マツダの成功につながっていると言える。2001年には新車を1台も出さなかった。それこそ厳しい年だったようだ。でも、2002年には、古くなっていたマツダ626の代わりに、デザインを思い切り進化させたマツダ6を出し、販売が好調だった。それが再生一回め。

2012年には、同社の代表的な魂動デザインと、スカイアクティブ技術をフルに採用した「CX-5」を登場させ、新しいマツダを誕生させた。これが2回め。そして、3回めというのは、昨年、全く新しいデザイン・ランゲージとスカイアクティブXのエンジンを採用した新型マツダ3が登場させたことだ。

マツダCXー5

新マツダ3を試乗したことのある僕から見ると、同車は日本一美しいハッチとセダンだと思う。正直にいうと、マツダのどの車種もデザインが綺麗でプロポーションが優れているし、いつも見てもすぐわかる「ソールレッド」の色も優秀だ。実は、2018年に「世界一の美しいコンセプトカー」を受賞したビジョンクーペなどを作ったマツダほど海外でデザイン賞を獲得した日本のカーメーカーはない。しかも、ハンドリングは優れているし、内装のトリムや質感はクラストップと言える。

しかし、これだけデザインも内装も機能も走りも向上させているマツダ3だが、国によって歓迎のしかたが違う。日本では社内計画より台数が売れているし、オーストラリアでは、人気者になっている。マツダ車を好む同国では、市場シェアはなんと9%ほどだ。マツダ3は特にトップセラーだ。ドイツやイギリスでもマツダの新デザインや走りが特に高く評価されている。

しかし、アメリカは、SUVを好む国。内装の質感がより高級になってコストが上がったマツダ3よりも、その兄弟車の SUV(CX30)に人気が集まり、苦戦している。販売価格に非常にシビアで、価格が多少上がるだけでも販売に影響する。

では、2020年より先はどうなるのか? 昨年の東京モーターショーで発表された初のEV車「MX-30」は年内には、市販車が登場するし、マツダはこれからEVに力を入れるという。でも、多くのファンが望んでいるのは、新世代のロータリー車だろう。今年の5月に広島本社で開催する予定のイベントで、それらしいクルマを出すのか待ち遠しい。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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