インフィニティQX80詳細レビュー 日産アルマダの方がいいかも?

日産の高級車ブランド、インフィニティが北米市場で展開する大型SUV『QX80』を米スラッシュギア編集部がチェックしました。堂々とした体躯に高級感をまとったインフィニティのフラッグシップモデルですが、価格の割に洗練性が低く、「古臭さ」を否めません。

QX80は、全長5340mm×全幅2030mm×全高1925mmというサイズからもわかるように、圧倒的な存在感を放ちます。現行モデルのグレード展開としては、ベースの「Luxe」が6万9,050ドル(716万円)から、上位の「Premium Select」は7万6,450ドル(792万円)からとなっています。

2021年モデル インフィニティ『QX80』

米スラッシュギア編集部が試乗したPremium Selectはクロームメッキを多用し、ダークカラーの22インチ鍛造ホイールを装着していました。搭載されているパワートレインは、インフィニティでおなじみの5.6L V8エンジン。最高出力400馬力、最大トルク560Nmを発生し、7速ATと2速トランスファーケースを介して4輪を駆動します。0-97km/h加速は約6秒。

アクセルを踏み込むと、重厚なSUVが地面を蹴って飛び出します。体格の割に高い加速力を誇りますが、速さよりも力強さを感じます。サイにまたがって早駆けすれば、QX80の加速と似たような体験ができるのではないでしょうか。

2021年モデル インフィニティ『QX80』

しかし、5,706ポンド(2,588kg)と平均的なシロサイよりも重量があるため、コーナーには速度を落として進入すべきです。サスペンションは柔らかく設定されているためボディロールが目立ちますが、その反面、70年代のリンカーンを彷彿とさせるような豪華な乗り心地となっています。パワステは「指一本で操作したかったでしょう?」とでも言わんばかりに大らかで、長距離クルージングに重きを置いていることは明確です。

その点では見事に成功しています。V8エンジンのノイズはシャットアウトされ、外の世界とは切り離された高い静粛性を実現。7速ATはエンジン回転数を抑えるのに貢献していますが、できれば8速を設定してほしいところです。QX80は7人乗りが標準ですが、8人乗り仕様でも十分なスペースがあります。2列目も妥協はなく、Premium Selectにはキャプテンチェアと大きなセンターコンソールが採用されています。

2021年モデル インフィニティ『QX80』

3列目は少し狭くなっていますが、大人でも座ることはできます。シートは電動で倒すことができ、通常時で470L、3列目を倒すと1,404L、2列目まで倒すと2,692Lに拡大できます。ただし、シート自体はふくらみがあるため完全なフラットにはなりません。特にキャプテンチェアはボリュームがあるので、積載物は制限されます。

レザーシート、シートヒーター(ベンチレーターはなし)、3ゾーン・エアコン、パワーテールゲート、ムーンルーフ、リモートスタート、ステアリングヒーター、Android Auto/Apple CarPlay、Bose製13スピーカーのオーディオシステムを標準装備。運転支援系では360度カメラ、ブラインドスポットモニター/アシスト、車線逸脱警報、アダプティブクルーズを搭載しています。

2021年モデル インフィニティ『QX80』

装備の数は悪くありませんが、その中身は微妙なところです。インフィニティの車載システム「InTouch Dual HD」は見た目が古く、使いづらい。グラフィック(特にナビゲーションシステム)は、最近のアップデートでも安っぽさが残り、全体的にまとまりがないように感じられます。

ステアリングホイールやセンターコンソールには物理ボタンが多く、8万ドル近い値札を貼ったSUVとしては、モダンで洗練されているとは言い難いパッケージングです。

残念ながら、兄弟車である日産『アルマダ』の最新モデルの方が、手頃な価格で賢明な選択肢となっています。

エクステリアのデザインは好みによりますが、インテリアでは、アルマダの方が優れていることは議論の余地がありません。アルマダに採用されている12.3インチのワイドタッチスクリーンはスマートで、エアコン操作用のノブやボタンはシンプルなパネルとなっています。インフィニティのシステムよりも動作が速く、直感的に操作できます。

アルマダの最上位グレード「Platinum 4×4」の価格は67,900ドル(704万円)からとなっており、QX80のPremium Select 4WDよりも約1万ドル安いのです。エンジンは共有しているため、ドライビングダイナミクスにも大きな違いはありません。

2021年モデル インフィニティ『QX80』

インフィニティQX80は、弟分である日産アルマダに追い越されてしまいました。存在感ある高級ブランドの大型SUVですが、アルマダより高い金額を支払う価値があるかどうか……論理的に説明するのは簡単ではありません。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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