ライバルを超えろ。Genesis初のSUV「GV80」の驚くべき完成度

Genesisというブランドをご存知でしょうか。韓国のHyundai(ヒュンダイ/現代自動車)の展開する高級ブランドで、今回ご紹介する「GV80」は、このGenesis初のSUVモデルです。2020年1月初めに正式発表され、年内に世界中で販売される予定のGV80ですが、そのクオリティの高さは高級SUVの名にふさわしいものになっています。

日本では無名なGenesisだが、北米では安定した人気を誇る。その車作りに対する姿勢には賛否両論あるものの、今回発表されたGV80は予想を超えるクオリティだった。

上品かつ堂々としたエクステリア

Genesisは2017年に、コンセプトモデルの「GV80 Concept」を発表しています。2020年に入って明らかになった市販モデルは、予想以上にコンセプトに忠実なデザインとなっており、多くのメディア関係者を驚かせました。

他車では見かけない独特のリア形状。写真には写っていないが、側面のショルダーラインにも独特の美学がある。

フラッグシップ・セダンである「G90」と同様、特大のフロントグリルとクワッド形状のランプが印象的です。英Bentleyからデザイナーを引き抜いたこともあって、どことなく「Bentayga」のような雰囲気が見られますが、アーチ型のショルダーラインはGenesis独自のもので、鋭く折り目のついた形状になっています。クロムの加飾も多すぎず適度に施されており、高級車然とした落ち着いた風格を醸し出しています。

掲載している写真は、まだ2台しかないGV80のうちの1台を使用し、マイアミの路地で撮影されたものです。夜間の撮影でありながら、タングステン街灯の灯りによってボディラインが美しく浮かび上がっています。

丹念に作りこまれたインテリア

引き抜きにより強化されていくHyundaiのデザイナー陣。GV80にも欧州車の雰囲気が否めないが、決して悪い訳ではない。

GV80のデザインは確かに、細部にわたって精査に耐えうるものでしょう。Genesisの初期のインテリアデザインは、ボタンを多用しすぎていました。GV80では、滑らかなインパネラインと大きなディスプレイの採用により、スマートで現代的な印象に変わりました。14.5インチのディスプレイは、タッチパッドを兼ねたコントローラーで操作できます。

14.5インチの大型ディスプレイを装備。インストゥルメント系にも抜かりはない。

エアコンの吹き出し口は、ダッシュボードに細く埋め込まれた繊細な形状です。トランクのシート折りたたみパネルのような、目立たない部分にも注意を払っています。照明、成型、ドライブセレクトノブなどのディテールにこだわり、上質な居住空間に仕上げています。Genesisのデザインへのこだわりは、賞賛に値します。

高級SUVならではの快適性

また、Genesisは今回のモデルでRoad Active Noise Cancellation(RANC)を採用。エンジン音や風切り音、ロードノイズといった走行中の雑音に対し、スピーカーから反対の位相の音を出すことで打ち消すというものです。同クラスのライバル車ではよく採用されているシステムですが、実際の効果を確認するにはGV80の試乗まで待たなければなりません。ルートや道路状況などをARで映し出すナビゲーションシステムも同様です。

運転席にはマッサージを備えているものの、その機能はもう少し熟成が必要かもしれない。

1列目と2列目のシートには、ヒーターとベンチレーターを装備。オプションで7人乗り仕様を選べば、3列目のシートが追加されます。「アクティブ・モーション」の運転席は、マッサージ用に7つのエアーセルを使用。疲れたドライバーに癒しを提供します。

ダイヤル式のドライブセレクター。イルミネーションによる細かな演出も憎い。

本場の韓国ではディーゼル車を選択できますが、北米仕様ではツインターボチャージャー付きのガソリンモデルが用意されています。2.5L 直列4気筒か、3.5L V6のどちらかを選ぶことができます。後輪駆動方式と8速ATが標準仕様で、全輪駆動はオプション設定(電子制御式リミテッド・スリップ・ディファレンシャルが付属)されています。また、カメラにより前方の路面状況を確認し、凹凸などに応じて乗り心地を調整する電子制御サスペンションを装備しています。

GV80は潜在的な脅威の顕れである

2本スポークのスポーティーなステアリング。シルバーの加飾も上品だ。

北米では2020年夏から販売が開始される予定ですが、Genesisによると、価格と仕様の詳細もその頃に確認できるといいいます。2015年に発足したGenesisは、BMWやMersedesといった既存のハイブランドに期待されるクオリティを、低価格で提供することで有名になりました。GV80も同じように、比較的リーズナブルな価格設定となるでしょう。

ライバルとの価格差がどれほど広がるかにもよりますが、Genesis初のSUVはクラス全体の水準を引き上げる可能性が高いと思われます。革製ダッシュボードの繊細なステッチ、丁寧に作られたスイッチ類、上品な照明など、他の自動車メーカーが学ぶべき点も多くあります。こうした細かい質感の高さはLexusの得意とする分野ではありますが、価格設定によっては思わぬ強敵の出現となり得るかもしれません。

上下2段に分かれたクワッド形状のヘッドランプ。フロントグリルの立体的な形状もよく分かる写真。

日本国内でのHyundaiの売上はごくわずかなもので、日本自動車輸入組合(JAIA)によると直近の年間輸入台数はなんと一桁。日本市場との相性は悪いようです。政治的背景も影響しているのかもしれませんが、ただ単に日本車を超えるようなモデルを投入できていなかったのが要因かと思います。

しかし、トヨタにとってLexusがそうであるように、GenesisはHyundaiのグローバル戦略のなかで重要な立ち位置にあるブランドです。日本では無名に等しいGenesisですが、海外では並みいる競合と肩を並べるほどの力をつけており、北米での市場評価も上々。日本の自動車メーカーを十分に脅かすダークホース的な存在と言えます。

ブランド初のSUVがどれほど市場で受け入れられるかは、時間の経過とともに明らかとなるでしょう。しかしGV80の投入により、GenesisもといHyundaiはますます競争力をつけることになりそうです。Volvoを買収した吉利(最近ではAston Martinの買収を検討中など中国企業の躍進もあって、今後はますますアジア勢から目が離せなくなるでしょう。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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