ついに日本に上陸した手頃な格好良いEV テスラ・モデル3

2011年に世界初の大量生産のEV「日産リーフ」が登場した時に、世界は騒然となった。毎日乗れる初のEVだったし、価格も手頃だと言うことで、販売台数もかなり大きかった。でも、航続距離は大したものではなかったし、ライバルがなく、ルックスは平凡だった。

ところが、その翌年に登場したテスラ・モデルSは、リーフというEVのベンチマークを一挙に塗り変えた。外観デザインは元マツダの一流スタイリストによる美しいボディで、各方面から高く評価され、また航続距離はリーフの3倍ほどだった。

しかも、モデルSの加速性と走りは、比較できないほど優秀だった。しかし、玉にキズはつきもの。モデルSは価格が1000万円以上だったので、格好良いEV車に乗りたいと思っても、そんな高価なクルマに手が届かない人が多かった。

EVのファンはずっと思っていた。モデルSの格好良さ、優れた性能や走りに近いクルマで、でもそれより手頃なテスラは出ないのか? 長い間悩んだファンがたくさんいた。そして、2019年、待ちに待った「手頃なテスラ・モデル3」がついに日本に上陸した。モデル3のエントリーモデルの価格は511万円だけど、僕が乗ってみた「パフォーマンス仕様」は717万円。

さて、モデル3はどんなクルマか? まずは外観。EV界で美人と言われていたモデルSよりコンパクトなモデル3は、その兄さん版と呼べそうなシルエットを持つ。だが、グリルがない。モデルSはどこから見ても格好良かった。モデル3もその綺麗なプロポーションを引き継いではいるが、ノーズだけ多少疑問が残る。良く言えばノーズが可愛い、悪く言えば、フロントが野暮ったい。

でも、実際に運転席に座ってみると、シックで未来的な内装に驚く。スイッチのないこんなスパルタンな室内は初めて。水平に伸びる木目インパネの真ん中に位置する15インチの大型タッチパネル。まさにスマホ世代にぴったりの使いやすい機能だ。

ドアミラーやエアコンの調節、ヘッドライトのオン・オフ、トランクの開閉など、あらゆる操作はこのディスプレーでコントロールする。最初は使い方に少し戸惑うけど、使っていくうちに慣れる。画面に出る安全装備はまるでゲームのようで、周囲のクルマをアニメで示すディスプレイには新鮮味を感じた。また、360度見渡せるカメラや160m前方を確認できるレーダーがあり、センサーによるモニタリングは優秀。

ところで今回、一番感動したのは何と言っても衛星ラジオ。日本車にはないオプションだね。画面の中のラジオ機能を出すと、多くの選択がオファーされる。モデル3はWiFiにそのままつながっているので、「今日はジャズの気分だ」と感じたら、ジャズの放送局を選べは良いし、ドイツのテクノパンク音楽を聞きたいと思ったら、ドイツの放送局を選択すれば良い。この車は近未来の車輪がついたスマホって感じだ。

日本に上陸した仕様は、3種類。テスラは馬力など発表していないけど、海外の媒体をチェックしてみたら、こんな数字が出てきた。エントリー車は245psの「スタンダードレンジ」で1モーターの後輪駆動。もう1つの「ロングレンジ」は2モーターの4WD。フラッグシップの「パフォーマンス」は4WDで450psを発揮する。僕が乗ったのはパフォーマンスだ。

さて、パワートレーンはどうなっているのか。動力系は前後に2つのモーターを配置する4WD。しかも、そのデュアルモーター、インバーター、またはバッテリーパックがシャシーの低い位置に配置されているので、コーナーリング中でもボディロールは感じないし、急ブレーキをかけてもノーズダイブは極めて少ない。ブレーキはそこそこだけど、僕としては、もう少しだけ制動力が欲しい。

でも、EVに乗ったことのない人は要注意。つまり、慣れが必要だ。普通のガソリン車、またはハイブリッド車と違うのは、エンジン音がないこと。さらに、スロットル感覚が全然違う。とにかく出だしが速い。ガソリン車と違い、遊びのないアクセルを踏むと、瞬間的に速度が出る。

車重は1850kg以上と、どのドイツのライバル車より重いのに、0-100km/hの加速は3.4秒とスーパーカー並みだ。ステアリングは軽くて手応えが良く、素直で狙った通りに曲がってくれるし、乗り心地も今までのテスラの中で最もしなやかな出来栄え。

ところで、テスラが数年前から試している「オートパイロット」という自動運転機能はどうなっているか。モデル3のACCがいかに使いやすいか、というと、シフトレバーを2回下にクリックするだけで作動する。また、車間距離や車速の調整は、ステアリング・ホイールのローラーダイヤルで操作するが、ハンズオフ機能は付いていない。

僕が乗った時は満充電に近い450kmになっていた。都内でのストップ&ゴー走行を繰り返している場合は、航続距離が減っていくのはほぼ予想した通り。でも高速道路でエアコンをかけながら、ワインディングでアップダウンの激しい道路を走ると、航続距離はそれ以上に早く、20%くらい減る。高速走行だとバッテリーチャージの減りが速いことは覚えておこう。

充電はどうすればいいか? 今、日本国内にはテスラ独自の急速充電「スーパーチャージャー」は、22箇所で、都内には4カ所(丸の内、六本木、お台場、東雲)。テスラによると、その数を少しずつ増やしていくという。 さて、こんなEVに関心のある人に一言。1モーターで後輪駆動仕様のエントリーモデルだと、511万円で、ロングレンジ仕様は655万円。でも、よりスポーティに乗りたい人は、僕が乗った717万円の4WD仕様を選べば、上機嫌で走れること請け合い。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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