エリーゼという日英合作はロータスを救った名車 レビュー

ロータス・エリーゼと聞けば、すぐ「あ、トヨタのエンジンを積んでいる英国車だね」という人がいるだろう。あるいは、「ロータスって、2017年に中国のジーリー社に買収されたね」と思い起こすだろう。 また、1996年に登場した初代エリーゼは、今のジャガー・デザイン・ディレクターのジュリアン・トムソンによってデザインされたことを知ってるかも知れない。トヨタのエンジンを搭載するようになった2003年からは、エリーゼなどの車種はハイパフォーマンスな日英合作に変わっていった

ロータスはF1でも、漫画でも、007でも有名なブランド

Photo by Peter Lyon

しかし、多くの読者はロータスというブランドが、レース界でどれだけ優秀だったかには気付いていないはず。実は1960年代から70年代にかけて、同社は7回もF1選手権のコンストラクターズ・タイトルを獲得し、ドライバーズ・チャンピオンシップを6回のもゲットしたという記憶は薄くなってきているだろう。 

ロータスって、知っているようで知らないブランドの1つと言えると思う。ロータスはまず、有名な英国人デザイナー兼技術者であり、ロータスの創立者だったコリン・チャップマンによって、1952年にロータスは設立された。また、ロータスというと、日本の有名な「サーキットの狼」という漫画シリーズに登場した名車「ヨーロッパ」、マツダ・ロードスターのインスピレーションの種になった60年代の「エラン」、また、007の映画「私を愛したスパイ」に出た「エスプリ」を思い出す人も多いことだろう。

こんな歴史を知ったら、ロータスはモデルを多く出したかと思うかもしれないけど、そうではない。70年代になると、ロータス車はより高級感が増し、車重的には重くなっていった。それは、チャップマンが最初に努力して作ったライトウエイト哲学から車両が遠ざかってしまったわけで、市場の熱も少しずつ冷めていった。それに、1989年に名車エランからデザインの大きなヒントを受けたマツダ・ロードスターが登場して大ヒットになった時は、ロータスは市場に忘れかけられ、最大の危機を迎えた。

Photo by Peter Lyon

イタリア人が所有権を買ってロータスの方向性を変えた

しかし、1993年にイタリアのロマノ・アルティオーリがロータスの所有権を買い、90年代半ばには、ロータスを救うエリーゼが生まれた。1996年に発売された新型エリーゼはチャップマンが主張した軽量ボディのルーツに回帰し、非常に華麗なプロポーションの外観ができた。ヘッドライトの下に施された大きな開口部・エアインテークには、空気を取り込んで、すぐ後ろのブレーキを冷やす効果がある。また、サイドに設置された開口部からも空気をミッドシップのエンジンルームに送り込み、エンジンなどを冷やす構造だ。

最新のエリーゼの試乗してみたいと思って、今話題の「エリーゼ・スポーツ220」という特別仕様車に乗ってみることにした。車重はなんと878kgしかない! このクルマのスペックは目が点になるほど特別なので、ここでもう少し触れて見よう。スポーツ220(以下「220」)は、トヨタ製の4気筒1.8Lスーパーチャージャー付きのエンジンと6速M/Tが組み合わさっている。もちろん、「220」というネーミングは、最高出力の220psを示している。ちなみに、ポルシェなどの多くのライバルと違い、220は6速M/Tのみで、パドルシフト付きのA/Tの選択が用意されていないのは、今の時代には非常に珍しいことだ。  

Photo by Peter Lyon

パワステはないけど、運転満足度100 点満点

実際に220の運転席に座ってみると、同車のユニークさがわかる。まず、乗り降りしにくい。全高が低いし、ドアの開口部がかなり小さいので、体に柔軟性がなければ、なかなか乗れない。しかし、面白いことに、入り込んで座ってみると、コクピットの広さに驚く。ヘッドルームやレグルームは十分あるし、シートのホルド性が良い。そしてシャシーなどに使うアルミがふんだんに使われているので、220は軽く感じる。

また、走りがアナログ的だと思ったが、パワーステアリングが付いていない。ナビも、後方が見えるリアビューカメラも付いていない。だから、正直なところ、色々と不便な部分はあるけど、運転の楽しさは100点満点。というのは、220psのエンジンの加速性は十分で、0-100km/hは4.1秒ほど。また、スーパーチャージャーが付いているので、アクセルレスポンスもシャープだし、必要な時のパンチ力は気持ちいい。

Photo by Lotus

ステアリングには電子アシストが付いていないということで、低速ではハンドルがかなり重いわりに、スピードが上がると、ステアリングが軽くなって適度な重さに変わる。一番驚いたのは、ライン取りだ。ステアリングに遊びがなく、完璧にピンポイントなので、狙ったラインをピタッとトレースしてくれるし、コーナーの途中で修正する必要もない。また、コーナーに入った時に、全然ボディロールしないし、非常に安定した走りを見せる。クルマが軽い分、ブレーキの効き目は素晴らしく、ペダル剛性もピカイチ。

しかし、乗り心地は直感的だ。というのは、路面のうねりや凸凹の全てはそのままお尻で感じ、ロードノイズも振動もキャビンにどんどん入ってくる。でも、アナログの心地よさを感じられる220だからこそ、そういうところを許してしまう。実は、このクルマにはラジオが付いているけど、ラジオもオーディオも要らない。4000回転以上のエンジンサウンドは、ロータスの独特なミュージックだから、微笑みが消えない

どうだろう。この微笑みには680万円の価値はあるか。スポーツカー好きにはたまらない美しさだと思う。それに、エリーゼに付いているギア・シフトのレバーと丸出しのリンケージはまるで美術品並み。荒々しいさと洗練されたレースカー並みのフィーリングを求めるなら、そのぐらいはかかるかもしれない。

ここは良い

*ハンドリングは抜群

*車重は軽いから加速製は良い

*レースカーに近い市販車

ここはもう少し

*信頼性に疑問が残る

*乗り降りが困難

*オートマの選択はない

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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