アキュラの新型スポーツセダンTLXでは、ホンダの新しいエアバッグが装備される予定です。野球の「キャッチャーミット」に例えられており、事故発生時に乗員の頭部をボールのようにしっかり包み込んでくれるものです。
エアバッグは、乗員がダッシュボードに激突するような事故の際に、クッションを迅速に展開して外傷を最小限に抑えるものです。1990年代以降急速に普及し、最近では車内全体に多くのエアバッグが搭載されています。
しかし、場合によっては、エアバッグ自体が危険をもたらすことがあります。
エアバッグは衝突を検知すると、人間の瞬きよりも高速で膨張するため、その威力がかえって脅威となる恐れもあるのです。
助手席にチャイルドシートを装着したり、妊婦を乗せたりする場合のリスクについては、すでに知られている通りです。車種によっては、助手席用エアバッグを解除できるスイッチを備えたクルマもあります。
ホンダは、そんな助手席のために全く新しいデザインのエアバッグを開発したのです。ご想像の通り、助手席のダッシュボードから飛び出してきて、衝突時に頭部が硬い部品に接触するのを防ぐためのものです。
通常のエアバッグでは、事故発生時に人の頭に回転がかかってしまうことがあります。特に、側面からの衝突(側突)では顕著です。ある程度の力が横から加わると、頭がねじれて首を怪我したり、脳を損傷したりすることもあります。
アキュラ TLXでは、頭を衝撃から守るだけでなく、回転を防ぐために頭を一時的に抑えるエアバッグが採用されました。
まず、「セイルパネル」と呼ばれる膨張していない部分が頭部を受け止めて減速。続いて、左右に膨らませたサイドチャンバーの間に頭部を誘導し、揺りかごのように包み込みます。最後に中央の部分が膨張して、全体的な衝撃を吸収するというものです。
これにより、頭部が回転したり、エアバッグから滑り落ちて負傷したりする可能性を低くすることができるはずです。
ホンダは昨年、この技術を2020年から市販車に搭載すると公言していましたが、その時点ではどのモデルから採用されるかは不明でした。
新しいエアバッグを備えた2021年モデルのTLXは、今秋には発売が始まると予想されています。
そもそもの事故発生を防ぐために、TLX全車には「AcuraWatch」が標準装備されます。衝突軽減ブレーキなどをはじめとするドライバー支援システムです。
ほとんどの人が「キャッチャーミット」を体験することはないでしょう(そう望みます)。
コメントを残す