フォードの高級車ブランドLincoln(リンカーン)が、電動化のビジョンを明らかにしました。新型SUV「Lincoln Star Concept(スターコンセプト)」は、今後数年にリンカーンから登場する電気自動車(EV)を予見させるコンセプトカーです。リンカーンは2025年までにEV3車種を展開し、更に2026年までもう1車種を追加する計画です。
リンカーンは、プラグインハイブリッド車(PHEV)を数車種展開していますが、現時点ではBEVのラインナップはありません。そんなリンカーンにとってEV投入の計画を発表したことは大きな転換点と言っていいでしょう。
スターコンセプトのスター的パワー
スターコンセプトはコンセプトカーでありながら、今後リンカーンが市場投入するBEVに期待できることを示唆しています。リンカーンは、スターコンセプトで、同ブランドのデザイン哲学である「Quiet Flight(クワイエット・フライト)」のDNAを受け継いだ新しいデザイン、特に新しいフェイシアが注目されています。
フロントは、伝統的なクロームエッジのグリルの代わりに、ダイナミックな光を演出するパネルを装備。ラヘッドライトが内蔵されたボンネットには、色調が変わるエレクトロクロミックガラスを採用。その下のフロント部分トランク(フランク)が引き出しのようにスライドし、2段の収納スペースが現れます。
一方、サイドプロファイルは、エアロダイナミクスが重要視されているのが顕著なデザインで、フロントガラスはシャープな傾斜を描き、ルーフラインからリアハッチに向かってテーパーの効いたラインでつながっています。また、ルーフラインやホイールアーチには、アクセントとなるライトが取り付けられており、「フローティング(宙に浮いている)」コンセプトを強調しています。
フロントとエコーするデザインのリアは、中央に光るリンカーンのロゴ、その上部に車幅いっぱいに広がるテールランプを装備しています。トランクは上下に開くクラムシェル型を採用。トランクを開けてベンチとしても使用できる仕様です。
印象的だけど、リンカーンらしさは?
スターコンセプトが未来的なデザインであるのは確かですが、果たして「リンカーンらしさ」を表現していると言えるのか疑問が残ります。EVの航続距離を伸ばすためには空力性能の向上が欠かせないですが、これは現行のリンカーンの特徴とも言える、大型で直立したグリルや、横長のプロポーション、そして重量感のあるデザインとは相容れないものがあります。
航続距離を考慮しながらも個性的なデザインを生み出すのは、電動化への移行に伴いカーデザイナーが直面する課題の一つと言えるでしょう。リンカーンは、現段階では航続距離の数字やバッテリーサイズについて言及していませんが、スターコンセプトは、次世代リンカーン・インテリジェンス・システム・アーキテクチャを採用し、後輪駆動と全輪駆動が提供される可能性を示唆しています。
インテリアにも注目
スターコンセプトの市販化モデルにも受け継がれるのが期待ができるのがインテリアです。リンカーンも語っているように、EV化の大きな利点は、広いキャビンスペース、そしてそのキャビンスペースの柔軟さです。
スターコンセプトは、2列の独立型4シートで構成され、全シートでリクライニングが可能なうえ、レッグレストも装備されています。各シートの収納も充実しており、携帯電話やタブレット端末などの電子機器やスリッパを収納できます。後部シートの間には冷蔵庫も装備されています。
ダッシュボードいっぱいに広がるカーブドディスプレイを装備し、インストルメントパネルは宙に浮いているようなデザインを採用。リンカーンは、従来のレザーやクロームに代わる、サステイナブルな素材を採用することも想定しています。また、AピラーやDピラーの格子には、3Dメタルプリントのような新しい製造技術が使用される予定です。
また、後部ドアに一体化された「リンカーンアタッシェ」と呼ばれるデジタルブリーフケースで携帯電話、タブレット、ノートパソコンなどの収納や充電が可能です。乗客はキャビンの照明パターン、サウンドトラック、香りを組み合わせ集中できる空間を提供するとリンカーンは述べています。
リンカーンの電動化移行の道のりは平坦ではなかった
現在、電動化の流れに遅れをとっているリンカーン。一時期、フォードがRivian(リビアン)に投資したことを受け、リビアンのスケートボード・アーキテクチャをベースにしたリンカーン・モデルが計画されたこともありまが、このプロジェクトは後に中止されました。その代わり、リンカーンは独自のプラットフォームを使用し、NAVIGATOR(ナビゲーター)のようなSUVの最近の成功を、EVでも実現しようと尽力しているようです。
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