2019年11月7日、Oculusは、Samsung と共同開発していたモバイル向けVRヘッドセット「Gear VR」について声明を出しました。同製品の向けアプリ開発のサポート終了が明らかにされ、段階的に終息へと向かっていくと予想されます。ここに到るまでにどのような背景があったのでしょうか。
VR市場での各メーカーの動きを振り返る
GoogleはスマートフォンをVRヘッドセットの心臓部として使用するという構想を打ち出し、一方で他のメーカーは大衆向けの手頃なVRシステムの展望に飛びつきました。数多のメーカーの中にはハイエンドのフラッグシップが含まれており、Oculusと協業してGear VRを発売していたSamsung もどちらかというとそのグループに位置付けられます。
しかし、スマートフォンとの連携を想定したVRヘッドセットの市場は短命でした。Samsung は最新のスマートフォンとの互換性を保つためのアップデートを意図的に遅らせていたかのような印象を与えていました。現在 Oculus 自体も、ソフトウェアのサポートを段階的に終息させようと舵を切っており、将来的にはサポートを打ち切るであろうと予想されます。
Gear VR とそのアプリは動作するがアップデートの予定なし
はっきりと言えば、Gear VRとそのアプリは引き続き使用可能ですが、アプリがすでにインストールされている場合に限られます。インストールの期限は2020年4月1日までですから、執筆時点ではまだ間に合います。その後、さまざまな Oculus アプリはダウンロードできなくなり、アップデートを受けられなくなる予定です。
アプリによっては具体的な変更点もいくつかあります。例えば、Oculus VideoアプリのFilmセクションは、映画のレンタルや購入ができなくなります。ですが、すでに購入したビデオは、アプリをアンインストールするまではユーザーのアカウントに残ると考えられます。Oculus Browser も引き続き動作しますが、最新のウェブサイトや機能に対応できなくなった場合、最終的には使用できなくなります。
VR ヘッドセットの主戦場からスマートフォンが遅れをとる
今回の記事は2年以上も前から予想されていたので、いまさらGear VRの差し迫った終焉に涙を流す人はほとんどいないでしょう。やはりGalaxy S9 以降に対応するヘッドセットはまだ発売されていません。新しいデバイスの設計を見れば、各ヘッドセットの互換性が非常に制限されていることも確認できます。
スマートフォンを使用してVRヘッドセットに電力を供給するというアイデアは確かに魅力的でしたが、長期的には実現が大変困難であることが証明されました。バッテリーの寿命、センサーの制限に関する懸念は確かに存在しました。そして何より、スマートフォンメーカーとサムスン、Oculus、Google のようなプラットフォーム側の両方向からのサポートが足りないという懸念がありました。
Gear VR が終息に向かっているのも、どこか時代の流れを感じさせます。少なくないファンを獲得したとは言え、現時点でVRヘッドセットのメインストリームからスマートフォンが遅れをとっているのは明らかです。今後はPC接続型やスタンドアローンの製品が、スマートフォン接続型を利用しているようなライトユーザー層の浸透を進めていくいくでしょう。Gear VR がその役目を完全に終えたわけではありませんが、その活躍に賛辞と「追悼」の言葉が贈られるのも理解できます。
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