コロナ禍でのスマートフォン市場を振り返る

「今年買ってよかったもの」を振り返るには絶好のタイミングがやってきました。思い返せば予想もつかない激動の1年でした。COVID-19 コロナウイルスと無縁でいられた人はほんといないように、グローバルのスマートフォン市場も無傷ではありませんでした。2020年の「コロナ禍」におけるスマートフォン市場を5分程度で振り返ってみましょう。米国版SlashGearのJC Torres氏の翻訳記事をお届けします。

工場の操業停止が広範囲に影響

大型イベントはCOVID-19の発生でもっとも早期に影響を被ったでしょう。2020年はほとんどすべての世界的なイベントが次々と中止されました。中国の製造拠点は相次いで閉鎖され、サプライチェーンは地域に関係なく大混乱に陥りました。世界が立ち直り始め、開催予定が変更されたイベントが再度の延期となったとしても、その被害は無視できませんでした。

開発や生産のスケジュールが遅れるなると、必然的に製品のお披露目は遅れます。すなわちスマートフォンメーカーはその商機を逃すことを示唆します。単純に考えても、発売予定のタイミングにスマートフォンが発売されていなのであれば、第一四半期の予測収益はなかったものになってしまいます。他方、サプライチェーンの川下にもいい影響はありません。メーカー、組み立て業者、およびその工場労働者にとっても、受け取る予定であったはずの給与が受け取れない事態になったのです。

需要の減少

コロナウイルスの蔓延が収まった地域であっても、経済は大きな影響を受けました。貿易は国境で停止・制限され、企業は閉鎖され、姿を消した会社組織も少なくありません。お金の問題は、瞬く間にこれまで以上に大きな問題となり、人々は財布の紐をきつく締め、不要な買い物を控えるようにしなければなりませんでした。

ところがコンピュータ市場は活況でした。特にラップトップは必須品となりました。ホワイトワーカーを中心に自宅やリモート拠点で働かざるをえなくなったからです。このような状況下にもなれば、差し迫ってスマートフォンを購入する必要はどこにあったのでしょう。言うまでもなく購入の優先順位は落とされたはずです。2020年の後半に向かうにつれ、生産と出荷が増加し始めたとしても、今年の始めにメーカーが思い描いたとおりにはなりませんでした。

皮肉な結果

新型スマートフォンの需要の落ち込みとは対照的な、やや皮肉な展開もありました。ラップトップやタブレットの需要が増えてWFH(Work From Home)が一般的となった以後、実際には、スマートフォンはより重要なものと位置付けられたのです。インターネットと従来の電話回線、SMSの両方でのコミュニケーションは、検疫や屋内退避命令の際にさらに重要になっていました。

すでに広く知られている通り、SNSからゲームまで、スマートフォン、アプリ、モバイルインターネットの利用が2020年を通じて急増しています。それらの重要性が、皮肉にも携帯電話の買い替えを控えさせているのかもしれません。新しい携帯電話を購入する際の健康上のリスクも想定されます。(日本以外の地域では外出の自由すら制限され、比較にならないほど流行している地域もあります。)これに加え、新しいが故に正常に機能しないのではという技術的なリスクも無視できません。そのため、消費者は説得力のある理由なしには、新しいデバイスに飛び付けなかったのだと考えられます。

端末価格のピーク

もちろん最新で最高の携帯電話を求める理由は常に存在するでしょう。それでも熱心な「スマホファン」であっても今年は熟考を余儀なくされたはずです。部品の価格は定期的に上昇しているなか、工場の停止や出荷の遅れにより、価格はさらに積み上げられています。さらに2020年のトップティアの携帯電話の価格は高騰しています。1,000ドルの携帯電話は2年前にはスキャンダラスではなくなりつつあったのですが、今年のフラッグシップ端末にとってはその価格がベースラインとなっていました。

Samsungにとっては散々な出だしでした。どうなるか全く見当もつかないパンデミックに、最新のハイエンド携帯電話をリリースしなければなりませんでした。一方でAppleのiPhone 12は当然市場に歓迎されましたが、iPhone SE 2020の売り出しはさらに興味深い結果に終わりました。一時的には、2020年の前半の間、最も人気のあるスマートフォンとみなされていたのです。1,000ドルの価格帯で出されたモデルではありません。これを受けて消費者のスマートフォン購入に対してハードルが高まっていると結論づけるのは早計かもしれません。ただし「スマートフォンの価格は段々と上がっていくので仕方ない」という認識は、iPhone SEによって砕かれた格好です。

中価格帯のスマートフォン

中価格帯の携帯電話においては、チップメーカーがプレミアムシリコンと中堅クラスの上位シリコンのギャップを埋め始めています。これに乗じて、各社は着実に機能とシェアを伸ばしてきました。5Gの普及が遅れているとはいえ、次世代ネットワークに接続できる携帯電話の数も徐々に増えてきています。

やはり中価格帯のラインナップでは激しい競争が繰り広げてられています。Googleでさえ、フラッグシップのPixel 5をSnapdragon 700シリーズのチップセットに押し下げています。LGのようなブランドも同様の携帯電話を発売しており、MediaTekの同等のチップセットを搭載しています。同時に、OnePlusのようにミッドレンジだけでなく、エントリーレベルの市場にも手を広げているブランドもあります。このように中価格帯のスマートフォーン市場が新たな様相を呈したのが2020年のハイライトでもありました。

2021年以降のスマートフォン市場

2020年は、様々な意味で世界が変わってしまいました。そのほとんどはネガティブなものでしょう。代表的な指標に基づけば、スマートフォン市場は確かに落ち込んだと言い切れますが、ゆっくりとはいえ、回復への軌道に戻りつつあります。 ただし、Samsungなどの一部のメーカーは予め計画されたスケジュールで計画を補おうとしていたため、まだ状況は注視が必要かもしれません。

 SamsungやAppleの新しいフラッグシップごとに手を差し伸べる人は常にいるでしょう。その一方で、スマートフォンの購入を見直すユーザーもきっといるはずです。既存のデバイスをできるだけ長く持ち続け、メーカーからのアップデートが増えることを期待する層が存在するからです。むしろそうせざるを得ない人々もいるでしょう。 モバイル市場が「ニューノーマル」に突入できるかどうかはまだはっきりしておりませんが、来年はもう少し面白く、エキサイティングな展開を迎えるのではないでしょうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です