海洋生物を研究する際に大事なのは、観察対象の生物から不自然に見えず、彼らの行動パターンを脅かさない点にあります。例えばヒトデを観察しようとするなら、ヒトデの「そっくり」を作ってしまうのが良いのですが、この「そっくり」ができ上がるまでにかなりの時間を要してしまうのです。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、水中の海洋生物を研究するためのロボ・オオヒトデを素早く作るための新しいシステムを開発しました。これを利用することで、以前であれば数週間もかかっていたロボットの開発が、たった数時間でロボットを作成できるようになりました。
海洋生物の観察には大きなコストがかかる
研究者によると、水中ロボットの設計は、海流、水の塩分濃度、浮力などの変数があるため、一般的に陸上で使用するロボットの設計よりも難しいとされています。水中で使用するロボットの設計には困難が伴うため、従来のロボットが備えていなかった機能を盛り込んだ試作品を何度も作らなければなりません。そのため、完成までに数週間以上かかることもあり、大きなコストがかかります。
MITの研究者たちは、柔らかい体を持つヒトデ型の水中ロボットの開発を目指しました。彼らは機械学習を利用したシミュレーションシステムを構築して、開発プロセスを加速させようと試みたのです。このシステムによって、研究者の意図に基づいて、ロボットがどのように構成され、どのように泳ぐのかを示すコンピュータモデルが作成されました。
水中ロボットの開発に機械学習ベースのシミュレーションを利用
このモデルをもとに、研究者はプロトタイプを製作しました。完成したロボットは水槽でテストされ、実際の性能データがコンピュータモデルにフィードバックされます。このプロセスを通じてロボットはさらに最適化されていきます。このようにして、数回の試作を経て、数時間後には機能的に満足のいく製品が完成しました。
現在のロボットヒトデは、シリコン製の頑丈なボディに、前脚の腱に接続された低電力モーターを1つ搭載しています。この腱を握ったり離したりすることで、ロボットは静かに動き、効率よく水の中を泳ぐことができます。開発されたモデルを用いることで、人が気がつかないような設計上の重要な項目についてもしっかりとフィードバックされるようになりました。
水中用のロボットはヒトデだけではありません。ウミガメ、マンタ、サメなどが新たにラインナップに加わるとされています。これらのロボットは最終的にはバッテリーを搭載し、海洋データを収集するためのカメラなどのセンサーを装備できるようになる予定です。
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