アメリカでは、新型コロナウイルス(COVID-19)への感染者増加に伴い、検査キットの準備不足と検査対象者への制限が、感染発見を遅らせていると指摘されてきました。検査キットの準備不足については、アメリカCDC(疾病予防管理センター)が初期に手配した検査キットに問題があったことや、検査対象者や検査施設が限定的すぎて、速やかな検査が行われていないのが現状です。
こうした問題を少しでも改善するべく、ビル・ゲイツ氏とビル&メリンダ・ゲイツ財団が新たなプロジェクトを立ち上げました。感染が疑われる人の自宅に検査キットを送付し、医療施設に出向くことなく検査できる環境を整えようというものです。
自宅で検査、2日で結果がわかる
「自宅検査キット」のプロセスは、症状があるなどして感染を疑う人がオンラインで必要情報を提出、症状が一致するなどして検査キットを依頼すると、2時間以内に検査キットが自宅に届きます。検査キットを用いて鼻腔内の検体を採取し、検査機関に送付すると、1~2日程度で結果が出ます。検査結果は関係機関にも共有され、陽性だった場合は治療や隔離の措置が取られるという流れです。
この「自宅検査キット」プロジェクトは、現在、アメリカで最も感染者が多い、ワシントン州シアトルを対象に準備が進められています。シアトルでは、3月7日(土)の時点で71人の感染者が確認され、15人が死亡していますが、あるがん研究センターの算定によれば、実際の感染者数は3月4日(水)の時点ですでに600人にのぼるとの見解も出ています。これを見逃しているとすれば、感染はさらに加速するでしょう。
後手に回る米政府の対応
新型コロナウイルスへの対応策では、何よりも予防の大切さが叫ばれています。感染やそれによる死を防ぐには、適切な治療と隔離が必要ですが、そのためにはまず感染を検知することが肝心です。しかし、その検知の段階でつまずいており、ここにきてようやく、FDA(アメリカ食品医薬品局)が検査対象者の指針の見直しを行うなどしましたが、対応が後手に回っている印象が否めません。
政府や民間の医療従事者は、従来の検査方法が非生産的な上に関係者にとっても危険であることから、負担は限界に近づいています。この状況では、医療関係者が検査希望者の自宅を訪問して検査するといった余裕もありません。このプロジェクトが実際に稼働し始めれば、感染を疑う人が外出することなく検査することができ、移動による他の人への感染や、院内感染のリスクを減らすことにもつながります。
インフルエンザ研究をコロナウイルスへ応用
このプロジェクトの元となっているのは、ワシントン大学が過去2年かけて行ってきた「シアトル・インフルエンザ研究」です。ビル・ゲイツ氏のプライベート・オフィスから約20億円(2000万ドル)の資金提供を受けたもので、数千人のボランティアを募集し、インフルエンザを主とした感染症の追跡や、自己検査キット配布を行ってきました。今回はそれを新型コロナウイルスに応用しようというものです。
ゲイツ財団は、このシアトルを中心とした新型コロナウイルスへの対策を支援するにあたり、約5億円(500万ドル)の資金提供を行っています。実際の稼働に向けて準備を進めており、最終的には1日あたり数千件の検査を可能にしたいということです。
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