これこそが理想の高級セダンか! メルセデスベンツE350 de レビュー

英語には Don’t judge a book by its cover (見た目で判断してはいけない)という諺がある。メルセデスベンツの乗用車で初のディーゼル・プアグイン・ハイブリッド車であるE350deは、まさに見た目では判断して欲しくないクルマだ。というのは、外観は普通に格好良い高級セダンだけど、そのボディの下に秘められている技術は目が点になるほど優れている。ゼロから100km/hまでの加速は5秒台でありながら、燃費は約17km/Lで、しかも航続距離は1000km弱という極端なメリットを持つクルマを求めるなら、この1台しかないだろう。

このEクラスのボディの下にひめられている技術はかなり優れている。
Photo by Peter Lyon

3役を演じるE350deは数km乗っただけで、その凄さに圧倒

さて、詳しく見ていこう。世の中には、ガソリンによるプラグイン・ハイブリッド車はたくさんあるけど、ディーゼル・プアグインは極めて珍しい。はっきり言って、このような技術は今まではトラックや電車にしか使われてこなかったけど、E350deの登場は乗用車では新しい。

同車の特徴を見ると、1台で3役だ。場合によってはEV、場合によってはプラグイン・ハイブリッド、場合によってはディーゼル・ターボという、3回美味しいクルマになっている。どういう人がターゲットユーザーなのかというと、電気自動車に乗りたいけど、電欠の恐れを気にする人にとって、同車は理想なクルマかもしれない。

僕はステアリング・ホイールを握って数km走っただけで、このEクラスは素晴らしい予感がした。乗り心地、加速性、ハンドリング、高級感は全てトップレベルであるけど、もちろんディーゼルエンジンの独特な音と振動など気になる点もあった。

E350deは、2リッターの直列4気筒ディーゼル・ターボエンジンと電気モーターを組み合わせたプラグイン・ハイブリッド車(PHV)になっている。市街ではゼロエミッションの通勤EVとして使え、週末にはロングドライブのプラグイン・ハイブリッド兼燃費抜群のディーゼルターボとして使用できる。システム最高出力は306psで、最大トルクは何とV8並みの700Nm。もちろん、同車の使い方によって燃費が違って来るけど、平均燃費はおよそ17km/Lで、燃料と電池が満タンなら1000km近い航続距離を誇る。

バッテリーのために、トランクスペースを犠牲にしている。
Photo by Peter Lyon

とにかくモーターだけで走ろうとするEクラス

では、このPHVという仕組みはどうなっているのか。E350deには、通常の走行状態の「ハイブリッド」、電力消費を抑える「Eセーブ」、充電を強制的に優先する「Eチャージ」、そして電力があれば完全電気の「Eモード」のボタンがある。

バッテリー残量に余裕がある限り、E350deはできるだけEVモードで走ろうとする。Eモードは、言い換えれば燃費モードと言っても良いだろう。つまり、Eモードだと、エンジンを使わないうので燃料を消費しないし、同車の優秀なコンピュータが、下り坂で賄う回生エネルギーや回生ブレーキを上手く使いながら、バッテリーを充電しようとする。急加速しなければ、ディーゼルエンジンは作動せずに、バッテリーとモーターだけで走行する。その通り。このクルマは自分がEVだと思っている。市街地で周囲の車両と同じように加速する分には、同車は非常に静かにスムーズに走るし、EVモードだけで十分パワーがある。

これはベンツ初のディーゼル・プラグイン。
Photo by Peter Lyon

もちろん、アクセルをベタ踏みすれば、E350deはV8エンジン搭載車と同様の加速をするけど、ディーゼルエンジンも当然作動する。中高速域では、ディーゼルターボの音や振動はほとんど感じられないものの、アイドリングや低速域では、ディーゼル独特のカラカラという音と、体で感じられる振動がくる。ここで、もう少しの高級感が欲しいかなと思った。でも、このノイズ意外、ロードノイズやパワートレーンから聞こえてくるノイズのような気になる音はなかった。

もう1つなるところはトランクスペースだった。やはり、プラグインハイブリッドを支えるだけの大きなバッテリーパックを積まなければならないため、トランクのスペースは通常のEクラスと比べると、約25%は犠牲している。燃費のためにスペースを犠牲したということだね。

内装の完成度や質感はクラストップ。
Photo by Peter Lyon

リアルワールドではモーターだけで40km走行可能

メルセデスが同車のEVモードの航続距離は50kmと言っているけど、実際リアルワールドでは40kmぐらいだろうか。でも、40kmというと、多くの通勤に使えるはず。朝に会社に着いたら、充電し、夕方に帰宅した後、もう一回充電すれば、週末まで燃料を使わないで済む。こんな使い方だと、満タンはかなり持つと思う。充電をする場合、急速充電器に対応していないので、200VのCHAdeMoで満充電にするのにおよそ1.5時間かかる。しかし、同車のディーゼルエンジンを発電機として充電モードにすれば、大体1時間で満充電になる。

乗り心地はメルセデスらしく、安定していてしっとりしたものがある。路面の凸凹を上手に吸収して、ロードノイズや風切り音をキャビンに伝えない。ステアリング感覚も理想的だ。ハンドルの重さも手応えもちょうど良い具合だし、路面からのフィードバックもしっかり来る。

CHAdeMoで満充電にするのにおよそ1.5時間かかる。
Photo by Peter Lyon

特記しておきたいのは、走行中に、前方の車両の速度に合わせて、レーダーを使いながら、ブレーキを自動的に踏んでくれる機能だ。これはプラグイン・ハイブリッドの特別な特徴で、やはりEVモードで走る場合、回生ブレーキをなるべく使ってバッテリーを充電させようとする仕組みになっている。アダプティブ・クルーズ・コントロールという自動追従モードを作動しなくても、クルマは自動的にブレーキを踏んでくれるのも、少し慣れが必要だけど、安心感がある。まるで、予備ドライバーがいるかのような感じだ。

室内はクラストップの質感や品格がある

やはり、このディーゼル・プラグインハイブリッドというシステムはかなり複雑なシステムになっているけど、E350deは無音のEVからディーゼル・ターボ走行への切り替えの動きはシームレスでほとんど音がしない。ただ、EVモードでのアクセルレスポンスとエンジンがかかった時のレスポンスは回転によって、たまに鈍い時もある。

内装はEクラス並みの質感と品格がある。素材やトリムが綺麗だし、完成度が高い。ドアやシートの本革やウッド調のダッシュボードを触っても高級感を感じるし、イルミネーションもトップクラス。センターコンソールの巨大なディスプレーがハイテクで、画面が非常に美しい。ディスプレー自体はタッチスクリーンではないけど、ステアリングホイールには操作しやすいタッチパッドが付いている。

4つの走行モードから選択できる。
Photo by Peter Lyon

ディーゼル・プラグインという珍しいジャンルとなると、ライバルは当然少ない。ライバルの1つと言えるのは、BMW530eだ。E350deと比較したら、どうなのか。2Lのガソリンターボ・エンジンとモーターとの組み合わせの530eは、E350deよりも200Nm以上トルクが下回るし、燃費も3km/L以上少ない。ドライビング性能が最も優れている高級ハイブリッド・セダンに乗りたければ、BMW530eを選べば良いけど、最も燃費が良くて、エミッションが比較的クリーンで、デザイン性に飛んだハイブリッドセダンに乗りたい場合は、このE350deにすれば良い。価格は、Eクラスの875万円の方が5シリーズより若干高いけど、メルセデスに軍配が上がるかな。簡単にいうと、スポーティに乗りたければ、BMW530e、クレバー(賢良く)に乗りたければ、E350deを選べば良いと思う。

E350 de は最も優れたセダン

ここがいい

  • 乗り心地はクラストップ
  • 航続距離は1000km弱
  • 電気モーターだけで40kmほど走行できる

ここはもう少し

  • 低速域でのディーゼルエンジンの音や振動は気になる
  • 場合によっては、アクセルレスポンスが多少鈍い
  • バッテリーのためにトランクスペースが犠牲されている

僕は仕事上、年間100台以上試乗するけど、このクルマは多少改良して欲しいところはあるものの、最も優れたセダンだと思っている。まだ電気自動車を恐れているあなたには、このモデルが一押しだ。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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