無人トラックの開発会社Starsky Roboticsが解散:CEOが語る自律走行の厳しさとは

米カリフォルニア州に拠点を置く自動運転トラック開発のスタートアップ企業Starsky Robotics(スタースキー・ロボティクス)社が、事業をストップすることになりました。2015年に設立されたStarskyは、自動運転と遠隔操作を組み合わせた次世代トラックを発案し、高速道路における完全な自律走行を確保。自動運転業界において注目を集める企業のひとつでした。

Starskyの計画は、あらゆる状況に対応できる無人トラックを作るのではなく、自律システムと人間の遠隔操作を組み合わせることでした。比較的管理の行き届いた環境である高速道路では、トラックは無人で自律走行します。そうなれば、熟練したオペレーターの必要性は大幅に減るでしょう。

しかし、より厄介な状況―Starsky曰く「最初と最後の1マイル(荷物受け渡しまでの最後の区間)」―では、人間のドライバーが制御を引き継ぎます。ドライバーは実際にトラックの中にいるわけではなく、遠隔操作で遠くから操縦することになります。

世界初の完全無人トラック公道テスト走行の映像。パーキングエリアを出発して高速道路に合流、車線変更も行いながら無事に目的地へ到着した。平均時速は55マイル(約88.5km/h)とのこと。

2019年、Starskyは完全無人トラックとして初めて、公道を走るライブデモを行いました。しかし今、同社は閉鎖されています。創業者兼CEOのStefan Seltz-Axmacher氏は、結果を求める投資家、AIを正しく理解することの予想外の困難さ、そして安全性は魅力的ではないという事実など、さまざまな問題に直面したといいます。そしてこれらの問題は、自動運転業界全体に影響を与えるだろうと述べました。

「自動運転業界にはあまりにも多くの問題があり、ここでは詳しく説明できない。具体的なマイルストーンの欠如、ロボタクシーのビジネスモデルがないという公然の秘密など。そして、最大の問題は、機械学習がその過大な期待に応えられていないことにある。C-3POのような人工知能ではなく、洗練されたパターンマッチングツールだ。」とSeltz-Axmacher氏は分析しています。

人間のドライバーの能力とエッジケースをマッチングさせること―そして最終的にはそれを超えること―が、多くの人が考えているよりもはるかに難しいことが問題だ、と彼は説明します。合理的な条件下では、比較的簡単かつ迅速に走行目標を達成することができます。しかし、予期せぬ状況に安全に対応できるシステムを開発することははるかに困難であり、自動運転AIを改良するにつれて、テストする特定のリスクモデルを見つけるという課題にも取り組むことになります。

自律走行と遠隔操作の組み合わせでトラックを走らせる、という計画は現実味があっただけに解散のニュースは残念だ。

さらに問題なのは、自動運転車に乗るかどうかを聞かれると、“安全性が第一の関心事”と言われることが多いものの、実際には人々を満足させるのは難しいということです。Seltz-Axmacher氏によると、これは投資家も同じだといいます。Starskyは安全工学に2年近くを費やしたものの、「その成果が目には見えないことが問題」であるとのこと。

「投資家は、創業者は嘘をつくものだと考えている。無人走行による死亡事故が起きる確率は100万分の1しかないということが信じられないようだ。無人化するのがどれだけ難しいかわからないのなら、他の誰かが来週できないことをどうやって知ることができるのだろうか?」

2019年末、同社の資金調達計画は失敗に終わりました。現在、会社の解散に伴い特許を売却しようとしています。Seltz-Axmacher氏曰く、自律走行が本当の意味で実現するのは10年先になるとのこと。「安全性についてAIの意思決定にビジネスを賭けるべきではない。」と彼は結論付けました。

世界中のメーカーが苦戦する自動運転車開発。Starskyの失敗により、自動運転業界における多くの課題や問題が改めて浮き彫りとなりました。CEOの指摘は、AIによる自律走行に対する過剰なまでの期待感(あるいは猜疑心)を非難するものでもあります。あなたはこのニュースから、どんな気付きを得たでしょうか?

林 汰久也

愛知県在住 27歳。ハウスメーカーの営業を経て、IT企業のメディア事業に参画。記事制作ディレクターとして店舗紹介記事などの制作に携わる。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。

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