ドイツと日本が産んだ双子 トヨタ・スープラ v BMW Z4 対決

自動車業界には、違うカーメーカーでも同じDNAを共有するスポーツカーはかなり珍しい。確かにトヨタとスバルが86とBRZの共同開発をしたし、マツダとフィアットがロードスターと124スパイダーに同様のプラットフォームを採用した。

しかし、トヨタGRスープラ (GRはGazoo Racingの省略) とBMW Z4の登場に関して、今まで市場がこれほど騒いだ2台はなかっただろう。この関係はまるでティーンエージャーの時に無理やり違う国に行かされて、そして10年後に再会した双子のようなもの。つまり、DNAが同様だし、プラットフォームやパワートレーンなども同様。だけど、外観や室内、またはフットワークが異なる。

2台とも日本仕様で340psと51.0kgmのトルクを叩き出している。

一社だけでスポーツカーの開発は困難

トヨタとBMWは、この2台を共同開発しようと決めた時、開発費を出し合った。やはり、GRスープラにとって、BMW製の力強い直6エンジンが不可欠だったし、BMWにとっては、トヨタと開発費をシェアすることは重要なポイントだった。今の世界では、元々販売台数の少ないスポーツカーを一社のメーカーだけで作ることは非常に困難な作業になってきた。でも、2社が資金と技術を出し合って作れば、立派なものができる。

さて、今回の2台はどの程度の共通点があるのか。まず、プラットフォームやボディ構造、3Lターボの直6エンジンは共通しているし、8速A/Tも同じだ。また、オーストリアにあるマグナ・シュタイア社の工場でスープラやZ4を組み立てられている。

GRスープラをスポーツモードに入れると、エンジン音は「ブオー」と低音が効き、エキゾーストノートは変化して、「ポポポ」とか「パキパキ」とまるで生きているように叫ぶ。

つまり、異なるのは目に見えるほとんどの部分というこたになる。Z4はコンバーチブルのみで、旧型と曲線も全体的な形もよりスポーティになっている。一方、スープラはクーペスタイル(オープンカー)しかない。その外観は2014年にデトロイト・オートショーで披露されたトヨタFT-1コンセプトからインスピレーションを受けている。

やはり、外観デザインでかなりの差別化を計っている。Z4はどっちかと言うと、運動系でスタイリッシュな女優ジェニファー・ローレンスのような外観になっており、GRスープラはグラマラスなヒップの持ち主の女優・歌手ジェニファー・ロペズのような雰囲気になっている。と言うことで、GRスープラは色気のあるデザインではあるけど、Z4ほど視認性が良くない

スポーツモードでは、Z4の走りの方が全体的によりバランスが取れている感じがする

BMW製の直6ターボが両車に不可欠

スペック的にはどう違うのか? 今回、僕が乗ったZ4は、M40iという仕様で、3.0リッター直6ターボを搭載している。当然、スープラも同じエンジンを積んでいる。2台とも日本仕様で340psと51.0kgmのトルクを叩き出しているし、後輪駆動だし、同様の8速A/Tと組み合わせている。日本仕様と書いたのは、国によって最高出力は多少違ってくるから。例えば、アメリカ仕様のZ4は、385psを出している。日本仕様では両者の加速タイムは同様で、0-100km/hは3.9秒。ちなみに、GRスープラの1520kgに対して、Z4は50kg重い1570kgになっている。

しかし、この2台で一番異なる点はなんといっても、ボディと室内のデザインと、価格だ。GRスープラの690万円に対して、Z4は850万円。その160万円の差で、BMWのデザイナーはZ4に一流の赤い本革シート、10.25インチの高画質モニターやよりプレミアム性の高いハーモンカードン製オーディオを採用したりすることによって、GRスープラの室内より高級感を出している。いっぽう、GRスープラはより扱いやすい8.8インチのタッチスクリーンを使用しているし、12スピーカーのJBL製オーディオを採用。また、黒いレザーのシートに黒いダッシュボードの組み合わせになっている。正直なところ、もう少し色が欲しいところだ。言うまでもなく、2台とも同様のBMW製のiDriveのインフォテーンメント・システムや同スイッチ類を採用している。異なる点はGRスープラのギアノブとゲージ類ぐらいかな。

GRスープラはより扱いやすい8.8インチのタッチスクリーンを使用している 。

スポーツモードを押すとスープラの音が楽しくなる

さて、試乗だ。GRスープラはZ4と同エンジンを積んでいるので、加速性はほとんど同様なのだが、Z4は若干速い感じはした。しかし、GRスープラをスポーツモードに入れると、エンジン音は「ブオー」と低音が効き、エキゾーストノートは変化して、「ポポポ」とか「パキパキ」とまるで生きているように叫ぶ。もちろん、同モードでは、アクセル・レスポンスやギアシフトがより過敏になるけど、微妙なターボラグにすぐ慣れて運転すれば、かなり楽しめる。

同モードのGRスープラは、ステアリングがよりクイックに変わる。ワインディングロードでは、2000回転から下のトルク特性が十分太いし、コーナーでのターンインが正確で、遊びがない。また、路面からのフィードバックが優れているけど、限界では少しナーバスな感じがする。つまり、プッシュすれば、もちろんGRスープラのテールは滑るけど、修正はしやすい。

BMWのデザイナーはZ4に一流の赤い本革シート、10.25インチの高画質モニターやよりプレミアム性の高いハーモンカードン製オーディオを採用した。

Z4の走りはよりマチュアな乗り味

そう言う意味では、Z4は安定している。Z4はGRスープラとはフィーリングが全く違う。まずは、オープンカーであることは大きい。やはり、ハードトップとコンバーチルの乗り味はかなり異なるし、ドライバーに与えるスリル度も違う。GRスープラよりZ4は、ハンドリングは多少優れているし、路面からのフィードバックが充実しているし、もう少しシャープな乗り味だ

特に、スポーツモードでは、Z4の走りの方が全体的によりバランスが取れている感じがする。エンジン音もGRスープラよりも低くて筋肉質を意識した気がするし、GRスープラのエキスゾーストから放出するように「ポポポ」などとは鳴かない。ブレーキの比較では、Z4の方がペダルフィールが優れており、若干の差ではあるけど、Z4の方が制動力が強い感じだった。

Z4はコンバーチブルのみで、スープラはクーペスタイルしかない。

やはり、コスト・パフォーマンスを考えると、GRスープラの勝ちと言える。でも、DNAをシェアするこの2台では、そう簡単には決められない。目的が違うからね。話題性があって色気たっぷりのボディで軽快に走ることを楽しみたい人なら、GRスープラを勧めるもう少し、ステータス性を求めていて、優雅にゴージャスに風を感じたい人なら、Z4に乗るべきだろう。ちなみに、僕の場合、もう少し若ければ、GRスープラを選ぶと思うけど、やはり50歳を超えると、Z4が一番合うのかな。

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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