2020年モデル「Audi S6」レビュー:パフォーマンスとジャーマン・ラグジュアリーの見事な融合

2020年モデルの「Audi S6」は、従来の高級セダン「A6」と、ハイパフォーマンスな 「RS6 Avant」の中間に位置します。いわば3人兄弟の次男。コンフォートな弟分のA6がビジネス街ではやや地味に見えるのに対し、S6はハードなドライブを意識したモデルです。以前のV8エンジンに別れを告げ、より小さいターボチャージャー付きV6エンジンを搭載しているにもかかわらず、その走りには目を見張るものがあります。

Audiの歴史あるスポーツセダン

1968年に誕生したAudi 100を継承するA6シリーズ。「S」は日常性とスポーツを両立したモデルである。

多くのV8マニアは先代モデルの4.0L V8との別れを惜しんでいますが、より小さく、より軽いV6はフロントの重量を減らすことに貢献してします。これによりアンダーステア(曲がりにくい特性)が減り、よりシャープな操舵感が得られ、全体的なハンドリング向上につながっています。

最近はエンジンのダウンサイジングが流行っています。V8でないと我慢できないのであれば、AudiにはRS6 AvantとRS7 Sportbackがあるので、そちらがあなたのワガママを満たしてくれます。ただ、新しいS6に搭載された2.9LツインターボV6は、目の前の仕事を完璧にこなしています。

最大トルク600Nmを発揮するV6エンジン搭載。おとなしめのスタイリングからは想像つかないパフォーマンスだ。

このエンジンの基本はAudi RS5のものと同じですが、S6では48ボルトのマイルドハイブリッドシステムと電動スーパーチャージャーを装備して、さらにパワーアップしています。2020年モデルのAudi S6はトリプルブーストV6を搭載し、444馬力と600Nmのビッグトルクを発生。以前よりも馬力は落ちていますが、新型ではトルクが50Nm増加しています。また、電動スーパーチャージャーを介してより高いブーストに容易にアクセスできるため、ターボラグを緩和し、迅速なアクセルレスポンスを実現しています。実際、コンプレッサーは250ミリ秒以下で反応し、最高70,000rpmで回転します。

シャープなハンドリング性能

0→96km/h 加速が4秒台というのは、かつては一部の大排気量車でしか実現できなかったような、とんでもない速さである。

エンジンはAudiのQuattro AWDシステムを介して、4輪駆動の8速トルコンATと組み合わされています。2020年モデルのAudi S6は、時速0→60マイル(0→96km/h)が4.4秒と、並みのスポーツカーでは勝てないほどのパワーを秘めています。アクティブなトルク配分により、通常時はトルクの60%が後輪(前輪は40%)に供給されます。これは、後輪駆動のスポーツカーのように、背中から押されているような感覚を味わえるということを意味します。しかし、高速でコーナーにさしかかると、AudiのQuattro AWDシステムはトルクの70%を前輪に、または85%を後輪に振り分けることもできます。

4輪駆動システムと適切なトルク配分により、コーナリングでも安定した走行を実現。

ドライブトレインには、よりシャープで応答性の高いハンドリングを提供するために、4つの車輪ごとにブレーキを制御するホイールセレクティブトルクコントロールシステムが備わっています。S6はどこから見ても高級車ですが、爽快なドライブ体験を提供するのに十分な武器を持っています。

セダンならではの低重心を活かした走り。いま流行りの大型SUVに真似できるだろうか。

オプションのキットには、各後輪間のトルクをアクティブに分割するQuattroスポーツディファレンシャル(必要に応じて全トルクのほぼ100%を単一の後輪に振り向けることができる)、アダプティブダンパー付きスポーツサスペンション、およびダイナミックオールホイールステアリングが含まれます。興味深いことに、これらのオプションのほとんどは、V8を搭載するRS6 AvantとRS7 Sportbackにもあります。

獰猛な牙を巧みに隠したデザイン

確かに、591馬力のツインターボV8を搭載したRS6 Avantは3.6秒と高速です。しかし、やや貴族的な外観のS6を見る限り、これと同等の性能を有するとは誰も思わないでしょう。車内はセダンということもあってRS6やRS7ほど広くはなく、アグレッシブではありませんが、細かく見ていくとA6との違いがはっきりと分かります。

見た目の過激さはないものの、ところどころにスポーティなポイントが光る。

新形状のフロントスプリッター、リアディフューザー、小さなリアスポイラー、エアダクトなど、空力特性に有利な形状を得ています。また、2020年モデルのS6は通常のA6とは異なる形状のシングルフレームグリルを有し、20インチホイールを標準装備(21インチもオプション設定あり)、アルミニウム製のサイドミラー、そして「S」専用の4本出しマフラーを装備し、スポーティな魅力にあふれています。

しかし、最も重要かつ最大の進化は、インテリアにあります。以前のS6の内装は洗練されていたもの、当時から見ても時代遅れのデザインでした。新モデルはまったくの新境地に達しています。強化されたインフォテインメントシステムとナビゲーションを備えた、Audiの素晴らしいバーチャルコックピットを採用。当然ながら、古いアナログメーターはなくなりました。

快適性と運転の楽しさを両立したインテリア。物理的なボタンが少なく、とてもすっきりとしている。

新しいS6では、上部が10.1インチ、下部が8.6インチのタッチスクリーンディスプレイを備えたMMIタッチレスポンスシステムを備えています。新しいMMIナビゲーションシステムに加えて、Apple CarPlayとAndroid Autoにも対応しています。ドライバーは3本スポークの多機能ステアリングホイールを握ることができ、同乗者はプレミアムダイヤモンドステッチが施されたバルコナレザーのスポーツシートでくつろぐことができます。

コンフォートでスポーティ バランスのとれた紳士の車

AudiはS6とS7の欧州仕様車において、エンジンをガソリンからディーゼルに切り替えています。349馬力と700Nmのトルクを発生する3.0Lのターボチャージャー付きV6ディーゼルエンジンです。ガソリンのV6と同様に、このディーゼルには電動コンプレッサーと48ボルトのマイルドハイブリッドシステムが付属しています。欧州市場ではディーゼルにこだわっているAudi。他の地域でもディーゼルが標準仕様になるとしたら、V8エンジンとの決別以上に大きな話題になるに違いありません。Audiがガソリンエンジンをどのように扱うのか、引き続き注目です。

2020年モデルのAudi S6の価格は、約74,000ドル(約813万円)からとなっています。繊細でありながら非常に速い高級車をお望みであれば、その希望を叶えることがでます。Audi S6は、A6で物足りなさを感じるものの、RS6に大金をつぎ込む気になれない人にとって、ベストな答えと言えるでしょう。

林 汰久也

愛知県在住 28歳。ハウスメーカーの営業を経て、ITベンチャー企業のメディア事業に参画。現在は退職し、フリーのライターとして活動中。マツダRX-8、シトロエンC4を乗り継ぎ、現在は2010年式スバル フォレスターに落ち着く。

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