UnityとHERE、次世代車載システム共同開発 3Dナビゲーションなど メーカーに利点も

ナビゲーション開発を専門とするHEREとゲームエンジン開発企業であるUnityは、次世代の車載システム向けプラットフォームを共同開発し、新車向け3Dインターフェースの制作を効率化すると発表しました。最近のクルマでは、タッチパネルのサイズが大きくなってきていますが、ドライバーがスマートフォンのようなインタラクションを期待するようになってきたため、UI(ユーザーインターフェース)の開発が加速しています。

自動車メーカーは、速いクルマ、低燃費のクルマ、家族と荷物をたくさん乗せることができるクルマを作るのは得意ですが、ダッシュボード上のソフトウェア開発はあまり得意と言えるものではありませんでした。そこで、HEREとUnityは提携して、自動車メーカーのソフトウェア開発をサポートすることを目指しています。

HEREとUnityによる次世代ナビゲーションシステム

このシステムは、ゲーム開発で培ったUnityの技術を車載システムに投入するというもの。グラフィックスのドラッグ&ドロップ、リアルタイムの3Dレンダリング、HEREのインタラクティブな地図情報を組み合わせることで、自動車メーカーは従来のHVAC、エンターテインメント、ナビゲーションなどの各機能を、すべてゼロから作ることなく構築することができます。バーチャルボタン、ダイヤル、メニューなどの共通のUI要素を引き出し、メーカー独自のテーマやカラースキームと組み合わせられます。

また、同じ3Dプロジェクトを、サイズや形状の異なるディスプレイに再利用することも可能です。これにより、最初からインターフェースを作り直すのではなく、大画面の高級車にも、一般的なディスプレイを搭載した低価格車にも柔軟に対応できます。

UnityとHEREは、「自動車業界では現在、いくつかの専用HMI開発ソリューションが存在していますが、今回の提携では、自動車用の地図データやサービスの要素と、先進のリアルタイム3Dエンジンを組み合わせ、地図やインフォテインメントなどの自動車のユーザーエクスペリエンスに、ダイナミックでハイエンドなデザイン機能を提供します」と述べています。

建物などが3Dで表示されることで、ナビ案内の可能性も広がるかもしれない。

ゲームエンジンの技術と、スクリーンを多用する自動車のダッシュボードとの融合は、今回が初めてではありません。昨年、GM傘下のGMCは、Epic Games社の「Unreal Engine」を使用して、次期『ハマーEV』の車載システムを構築したと発表しました。これは、ゲームと同じように、自動車にも高速のプラットフォームを提供しようという試みの一環です。

また、Unityが自動車業界へ参入するのも初めてではありません。Byton社は2018年に、コンセプトEVに搭載される49インチのスクリーンに同社のグラフィックエンジンを採用。HEREの共同所有者であるContinental社も、自動運転シャトルバスのコンセプトカーにこのプラットフォームを使用しました。

HEREとUnityのプラットフォームは、ContinentalのElektrobit、NXP Semiconductors、Qualcomm Snapdragonなど、さまざまなハードウェア上で動作します。HEREがこれまでLIDAR、光学画像、衛星データを組み合わせて構築してきた3Dマッピングデータは現在、サンフランシスコ、ロンドン、ベルリン、ミュンヘンなどの75都市で利用可能で、個々の建物のレンダリングだけでなく、入口などのメタデータも含まれています。

HEREの3Dマッピング

こうした情報は、自動運転のための位置情報技術やシミュレーション、都市計画などで重要な役割を果たすでしょう。ドライバーレスの自動運転車は、システムが安全に走行する能力を確約できるだけのデータを持たなければなりません。

一方、今回の提携により、よりリアルな都市環境がゲームに登場する可能性もあります。ゲーム開発者がUnityとHEREの3Dマッピングおよび位置情報データを使用することで、現実世界に近い都市環境をゲーム内に再現することができ、リアルタイムでのアップデートも可能になるかもしれません。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

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