日産自動車 EV「リーフ」の使用済みバッテリー 再利用に活路見出す

市販のEV(電気自動車)の先駆けとなったのは、言うまでもなく日産『リーフ』です。初代の発売から長い年月が経過しており、日産はEV用バッテリーの老朽化に伴う課題に早くから取り組んでいるため、他社より一日の長があると言えるでしょう。主な課題は、自動車用としての性能を失った使用済みバッテリーをどう処理するかということです。

日産は、世界中の自動車工場で働く作業員をサポートするロボットに、古いリーフのバッテリーの第二の用途を見出しました。使用済みバッテリーは、組立ラインの作業員に部品を届けるなど、工場内のさまざまな作業に使われる無人搬送車(AGV)に使用されています。

日産の自動車工場で使われるAGVの仕組み

AGVは、磁気テープで作られたルートに沿って移動し、部品などを運ぶ台車ロボットです。AGVを使って部品を配送することで、作業員が部品を探す手間を省き、部品の組み付けに集中することができるというわけです。日産をはじめとする自動車メーカーは、組立ラインでの時間短縮と生産性向上のために、AGVが不可欠であることを認識しています。

日産は現在、世界各地の製造拠点で4,000台以上のAGVを運用しています。工場では、バッテリーを30秒で満タンにできる自動急速充電を行うシステムを導入。また、センサーが搭載されており、決められたルートを走行し、必要に応じて停止することができます。無線通信機能も備わっているため、AGV同士の衝突を避けるために相互に通信することが可能です。

『リーフ』のバッテリーを構成する48個のモジュールのうち、3個をAGVに再利用する。

日産によると、2010年から古いリーフのバッテリーを再利用する方法を検討してきたといいます。初代リーフでは、48個のモジュールを組み合わせて作られた24kWhのバッテリーを使用していました。今から8年前には、そのうちの3つのモジュールをAGV用にパッケージングして再利用する方法を採用。昨年からは、AGVの動力源として新品バッテリーを使うのではなく、使用済みのものを利用するようになりました。従来の鉛バッテリーが1~2年で交換サイクルを迎えるのに対し、リチウムイオンバッテリーは7~8年使い続けることができるとのこと。

もちろん、AGVへの搭載はバッテリー再利用先の1つでしかありませんが、生産工程の効率化や作業員の負担軽減、コスト削減につながっています。また、日産は新型のAGVの開発も進めており、磁気テープを必要とせずに走行できるシステムや、コネクテッドカー技術を用いた統合制御などが検討されています。

林 汰久也

愛知県在住29歳/ハウスメーカーの営業を経て、IT系ベンチャーのメディア事業に参画。2020年よりフリーのライターとして活動開始/愛車遍歴:マツダ『RX-8』⇒シトロエン『C4』⇒スバル『フォレスター』&ホンダ『クロスカブ50』/ゲームはPS派だが、最近ゲーミングPCが欲しいと思っている。

2 Comments

  1. 竹村 六佑 Reply

    大変興味深い取り組みをご紹介いただきありがとうございます。
    3モジュールで1.5kwhですから、充電器の給電能力が高くても30秒で満充電というのはEV用セルの仕様で難しいのではないかという印象を受けました。容量使用率が100%という訳ではないのでしょうか?

    1. 林 汰久也 Post author Reply

      コメントいただき誠にありがとうございます。記事作成に当たり参照した日産自動車のWEBサイトでは、AGVの充電システムについて詳述されていませんでした。改めて調べてみたところ、明確なお答えとなるものは見つかりませんでしたが、自動車工場などにAGVの給電システムを販売している会社の商品紹介などから推測するに、バッテリーをあまり消費していない段階から頻繁に充電しているのかもしれません。
      0%に近い状態ではなく、おそらく半分以上残っている状態で充電することで、バッテリー寿命を維持していると思われます。ですから30秒の急速充電で十分ということなのではないでしょうか。
      あくまで推測に過ぎず恐縮ですが、少しでも参考になれば幸いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です