ついに日本に上陸した革命的なEV、ポルシェ・タイカン

昨年末にアメリカで試乗したポルシェ初の電気自動車「タイカン」に圧倒された。その未来的な外観、スーパーカー的なの加速、911並みのハンドリングとブレーキなど、その全てが異次元のレベルだった。いつ日本に上陸するのか楽しみにしていた。

ポルシェ初のポップアップストア「ポルシェNOW」が東京に開店

Photo by World Car Awards

そして、その革命的なEV車は先週、日本で発表された。7月9日に国内で初ポップアップストア「ポルシェNOW」が東京・有明に開店された。価格もスーパーカー並みのプライスだ。日本に導入されるタイカンは、「タイカン4S」が1448万1000円、「タイカン・ターボ」が2023万1000円、「タイカン・ターボS」が2454万1000円という価格設定になるという。

さて、このタイカンはどんなクルマなのか。「タイカン」というエポックメーキングなこのポルシェ車は、これからのEV作りを限りなく変えてしまうに違いない。僕の各国の同僚はその性能、走り、パッケージングなどを絶賛しているけど、同車がどれだけ画期的なのか、いや革命的なのか、タイカン・ターボにロサンゼルスで乗ってみた。

試乗した日に「速い! 凄い! タイムトンネルみたい!」と何回言っただろう。タイカンの運転席に座ってアクセルを踏んだ瞬間、2030年にタイムスリップしたような気分だった。その速さ、その走りはまったくの別次元だ。まるで、あの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」を初めて聞いた時の感動と同じだった。その曲は音楽業界を変えた。今、タイカンは自動車業界を変える。

異次元のパフォーマンス

Photo by World Car Awards

2015年に、「ポルシェ・ミッションE」というコンセプトカーが発表されてから、業界は今年9月についに披露されたタイカンの到来を待ちに待った。でも、僕らが期待していた以上の異次元のパフォーマンス、しかもポルシェらしい走りは見事だ。航続距離は420km以上、バッテリー容量80%までの急速充電はたった22分だけ。発表された時は、「ターボ」と「ターボS」の2タイプから選べるけど、当然ガソリンエンジンが搭載されていないので、ターボ自体はない。つまり名前だけ。ターボは680馬力、ターボSは750馬力を発揮し、しかもターボSの最大トルクはなんと1000Nm! モーターは前輪に1つ、後輪に1つという4WDレイアウトであり、バッテリー、インバーター、モーターなどは全て超低いポジションに配置。実をいうと、タイカンの低い車高、そしてその作りというかパッケージングは業界を圧倒している。低重心は911より低いそう。

LAモーターショーで偶然会った某カーメーカーの元デザイン・トップに聞いたら、こんな答えが返ってきた。「タイカンの存在と作り方と性能の凄さに圧倒して、全てのカーメーカーはどうにかタイカンを1台購入して、社内でバラしてその秘密を探るはず」と語っていた。「特に不思議なのは、他のメーカーがこんなに車高の低いEVが作れないのに、どうやってポルシェは911よりも低重心のクルマが作れたかを調べたいと思いますね」という。つまり、バッテリーとかインバーター、または2つのモーターを「どうやってそんなに低く載せられたのか」が、業界で小さな革命を起こしている。

Photo by World Car Awards

よく考えてみれば、僕が話した元チーフデザイナーがいう通りだ。タイカンとは違い、今既存のどのEVを見ても、結構車高が高い。日産リーフ、ジャガー I-PACE、アウディEトロン、メルセデスEQC、そしてテスラ・モデルSとモデルXは皆、その必要なハードウエアを載せるために、かなり車高が高くなっているのだ。

だから、音楽業界に例えると、タイカンはかつての革新的な「ウォークマン」にあたる。携帯業界に例えると、タイカンは「iPhone」と同様のインパクトを与えるはず

0-100km/hの加速は2.8秒

イギリスのトップギア誌によれば、これまでのEVセダンのベンチマークだったテスラ・モデルSをタイカン・ターボに比べて、0-100km/hの加速は2.8秒と、ほとんど同等だけど、タイカンの強みはそういう急加速を8回以上やっても、バッテリーのパワーが落ちないことだ。テスラは2、3回で落ち始めるという。世界初の800V系の駆動システムと4WDのグリップ力のおかげで、ゼロから加速しても、100km/hから加速しても、無限のパワーに驚く。しかも、10ピストンのブレーキはポルシェらしい強烈な制動力を誇っている。さらに、幸せなことに、変なスポンジーな感触の回生ブレーキのフィーリングではなく、ペダルフィールはしっかりしている。

Photo by Peter Lyon

ハンドリングはポルシェらしく力強い接地性と、一流のスタビリティーが感じられた。やはり、同EVはロー&ワイドで、しかも低重心設計になっているので、タイトなS字コーナーで激しく左右に振っても、まったく不満を覚えなかった。

タイカンの凄さは、速さと走りだけではない。EVらしく発進は滑らかで、市内での一般スピードでも、実に扱いやすかった。リアモーターに組み合わされている2段自動変速機構は、スムーズな動作を示してくれる。ドライビングモード切り替えでノーマル、スポーツ、スポーツ+はあるけど、スポーツ+をセレクトすると、かなりスポーティな人工的な音がキャビンに広がるし、加速性がさらにブーストされる。

タイカンの性能、走り、スリル度は実に業界の最高レベルに達している。その革命的な電動プラットフォームは、業界の奥まで響くはず。タイカンはただの新車ではない。これは新しいEVバロメーターで新基準を打ち立てたのだ

ピーター ライオン

1988年より日本を拠点に活動するモーター・ジャーナリスト。英語と日本語で書く氏 は、今まで(米)カー&ドライバー、(米)フォーブス、(日)フォーブス・ジャパン 、(英)オートカーなど数多い国内外の媒体に寄稿してきた。日本COTY選考委員。ワー ルド・カー・アワード会長。AJAJ会員。著作「サンキューハザードは世界の’愛’言葉 」(JAF出版、2014年)。2015から3年間、NHK国際放送の自動車番組「SAMURAI WHEELS」の司会を務める。スラッシュギアジャパンでは自動車関連の記事・編集を担当し、動 画コンテンツの制作に参画する

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