私たちの生活には酸素が必要です。その事実は議論の余地がありません。しかし、約20億年前に地球の大気中の酸素濃度が上昇した過程については、研究者の間でいまだに議論が続けられています。ある研究チームは、大気中の酸素濃度が上昇した理由について、興味深い説を提唱しています。
ドイツのブレーメンにあるマックス・プランク海洋微生物学研究所のジュディス・クラット氏を中心とする国際研究チームは、地球の自転が遅くなったことで一日が長くなり、微生物がより多くの酸素を放出するようになった結果、現在のような酸素豊富な大気が形成されたのではないかと考えています。
地球上の酸素のほとんどは光合成によって生成されますが、その光合成は、シアノバクテリア(藍藻)と呼ばれる微生物が地球上で初めて行ったとされています。シアノバクテリアは24億年以上前に進化しましたが、現在のように酸素が豊富な環境になるまでには長い時間を必要としました。
なぜそんなに時間がかかったのか。地球の酸素濃度に影響を与えたのは何なのか。その謎を解き明かすため、研究チームは、ミシガン州のヒューロン湖(五大湖の1つ)にあるミドル・アイランド・シンクホールで、シアノバクテリアの調査を行いました。
ヒューロン湖のシンクホールでは、湖底から染み出した地下水の酸素濃度が非常に低く、そこに棲む生命は主に微生物であり、数十億年前の地球環境と類似しているのです。微生物は主に酸素を産生するシアノバクテリアで、硫黄を食べる(酸化してエネルギーとする)硫黄細菌と競合しています。
研究チームによると、硫黄細菌は夕暮れから夜明けまで、シアノバクテリアの上に覆いかぶさるように広がっているとのこと。しかし、太陽が出てくると、硫黄細菌は下に移動し、シアノバクテリアが表面に上昇します。そして、光合成により酸素を作り出すのですが、シアノバクテリアが日光を浴びてから酸素を生成するまでには数時間かかることがわかりました。
朝、酸素生成が始まるまでには長いタイムラグがあるということです。つまり、光合成が行われる時間は、1日のうち数時間に限られているということです。このことから、古代の地球では一日の長さが短く、それが光合成のタイムスケジュールに影響を与えているのではないかと考えられます。
最新の計算によると、地球と月が形成された頃は一日が今よりもずっと短く、わずか6時間程度だった可能性があるといいます。その後、次第に地球の自転速度が遅くなり、一日(日照時間)が長くなったことで、微生物の酸素生成効率が高まり、大気中の酸素濃度に影響を与えるまでになったとされています。
コメントを残す