「Chromebook 用CPU」におけるGoogleの目論見と課題

事業の多角化を進めてきたGoogleは、今度はChrome OSを搭載したノートPC用のチップを内製しようと計画しています。Googleが自社製チップセットの開発に力を入れ始めたのは最近のことではありませんが、今年はその傾向がより顕著になっています。特に「Google Tensor」と名付けられたカスタムシステムオンチップ(SoC)を搭載する「Pixel 6」と「Pixel 6 Pro」関連の告知がなされてからはなおさらです。

自社の端末にオリジナルのチップを搭載するとはどのような意図があるのでしょう。すなわち、Appleを始めとした他のテックジャイアントが差別化を図るために切り開いたその道に追随しようというものだと推察されます。

Google自社開発のチップはAppleの影響

Appleは自社でチップを製造しており、過去10年ほどの間、この取り組みは競争を有利にしてきました。iOSと自社製のAシリーズプロセッサーをより細かく統合することで、ソフトウェアのアップデートをより長く、より速く行い、パフォーマンスの向上とエネルギーの最適化を実現しています。こうした利点により、Appleはサードパーティへの依存度を減らし、ハードウェアとソフトウェアの柔軟性とバランスを高めています。

SamsungはExynosプロセッサーで粘り強く対抗しています。Amazon、Microsoft、そして Facebookでさえ、今後発売されるデバイスを動かすために独自の半導体を開発しています。Googleがシリコン製造の決断を下した理由を推測しようと思えば実に簡単です。

Googleは、他のOEM企業と同様に、デバイスに搭載するチップセットをIntelやQualcommに依存してきました。ほとんどの場合、ソフトウェアアップデートの制限を除けば大方この方法でうまくいっています。ところが昨年のPixel 5にフラッグシップチップではなく、クアルコムのミッドレンジの7シリーズチップセットを採用したことで意図せず批判に晒されました。Googleは「電力効率を高めるため」としてこの取り組みを正当化しましたが、端末の処理能力を犠牲にしたという指摘からは逃れられなかったのです。

この状況を打破するために、GoogleはPixelスマホにTensorチップを搭載して進化を見せ始め、Chromebookにも同様の進化を遂げようとしています。Apple社の大成功に触発されて、Google社は将来のChromebook用にARMベースのシリコンを独自に製造しているのです。つまり、すべてが順調に進めば、Chromebookは早ければ2023年にGoogleブランドのプロセッサを搭載するでしょう。

プロセッサを自社開発する背景

Googleは、モバイルOSの開発において世界を席巻する企業の1つです。メーカーを問わず、多くのスマートフォンの心臓部にAndroid OSが搭載されています。Androidが携帯電話に搭載されているように、Chrome OSはChromebookに搭載されて世に放たれています。ASUS、HP、Dell、Acer、Lenovo、Samsungなど、さまざまなメーカーがライセンス契約に基づきChrome OSを採用しているChromebookは、教育市場において現在最も魅力的な選択肢となっています。

特にパンデミックでは、この市場はChromebookが積極的に支配しており、前年と比較して約2倍の販売数を記録しています。この勢いは、この1年半ほどの間に広まった遠隔学習が大きな要因となっています。

Googleがチップ製造分野に進出することは、その圧倒的な優位性を考えれば想定内です。ちなみに、Goolgeはカスタムプロセッサを自社のポートフォリオに含めていますが、それらは機械学習やクラウドデータ処理用に設計されています。GoogleがChromebook用の自社製チップセットを開発していると明らかになったのは今回が初めてです。

GoogleのCEOであるスンダー・ピチャイは、昨年、同社が独自のハードウェアを製造する方向にあることをほのめかしており、それに続いてGoogle Tensorで最初のアプリケーションプロセッサーを発表していました。その時から、Googleが最終的にはPixelデバイスだけでなくChromebook用にも自社製チップの開発に乗り出そうとしているのは明らかでした。ところが今回の報道によると、Googleはすでに他のデバイスにも自社製シリコンの製造を拡大しようとしているようです。

内製化には課題が散見

現在のところ、Chrome OSは、Chromebookに搭載されているIntelとAMDのチップと対になっています。GoogleがChrome OS搭載ノートPCおよびタブレット端末向けに開発していると噂されているチップは、ソフトバンク傘下でもあった英国Arm社の設計図に基づいています。Arm社のチップアーキテクチャは、現在使用されているスマートフォンの90%以上に採用されています。

GoogleブランドのChromebook用プロセッサーに関する技術的な詳細は、現時点では明かされていません。早ければ2023年にも登場すると予想されているため、詳細を把握するにはしばらく待たなければなりません。GoogleチップをノートPCに搭載するという情報は、期待に胸を膨らませるものではあります。ですがそれはメーカーにとっては簡単な道のりではないでしょう。チップの製造には、それなりの投資とコミットメントが必要です。

別の情報源によると、「最先端の5nmチップを設計するためのコストは約5億ドル」との話も出ています。しかし、世界的な部品不足により、Googleは現時点で予測されている今後2年間の期間内にチップを完成させるために、より一層の労力を投じなければならないでしょう。

終わりに

Googleがチップの内製化を進めるのは極めて論理的な戦略です。課題は多いかもしれませんが、自社製のチップセットを使用することで、グーグルは自社のソフトウェアのニーズに合わせてハードウェアをプログラムすることができます。現在、GoogleはChromebookの心臓部はインテルに握られているため、Chromebookで何ができるかはそのチップに大きく左右されています。人工知能、機械学習、音声アシスタントに過度に注力しているグーグルのような企業にとって、ハードウェア面での制約を与えられるのは決して進歩的なものではありません。

自社製のチップセットとChrome OSを組み合わせれば、ユーザー体験をどのように設計するか、その主導権を手に入れることができます。このテーマは、長らくPixel Phoneの文脈で語られてきました(Pixel 6シリーズが発売されても同様です)。最終的には、ソフトウェアのアップデート期間の延長や電力効率の向上など、新たな局面が展開されるでしょう。

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