シンガポールの南洋理工大学の食品科学者は、トロピカルフルーツの廃棄された殻を使用して、抗菌性のゲル包帯を作成しました。ドリアンは南国の象徴的な果実(珍味)として見なされている一方、果実のとがった外皮の大部分はごみとして処分されていました。捨て去られたはずのドリアンの外皮が医療の現場で再利用される可能性があります。
包帯に生まれ変わったドリアンの殻
ドリアンは奇妙に見えるトロピカルフルーツです。外観は緑がかった黄色で、多数のトゲで完全に覆われています。研究者は、ドリアンの皮から高品質のセルロースを抽出し、バイオディーゼルや石けん製造の際に出る副産物であるグリセロールと組み合わせることで、シリコンシートに似た柔らかいゲルを作ることができます。このシートは、さまざまなサイズと形状の包帯にカット可能です。チームは、天然酵母フェノールとして知られる酵母から生成された有機分子を追加して、ドレッシングに抗菌性を持たせました。
ハイドロゲルパッチは、薬局で購入できる一般的なものです。ハイドロゲルパッチは、一般的には手術後の傷を覆うために使用され、皮膚の水分を保つことで傷跡の形成を最小限に抑えます。従来のハイドロゲルパッチは、ポリメタクリレートやポリビニルピロリジンなどのポリマーのような合成素材で作られていました。また、抗菌作用のある絆創膏は、銀イオンや銅イオンなどの金属化合物を使用しています。
ドリアンの殻が医療現場で再利用される意義
この新しいハイドロゲルは、生体医療目的での使用が認められている合成材料よりも安価です。マイケル・ファム氏は「抗生物質の耐性菌の脅威がますます高まっていることから、世界は感染症を防ぐための複数の代替手段を必要としている」と述べています。さらに「開いた傷口を保護する効果的な方法は、生体適合性があり、人間が長期間使用しても安全な抗菌包帯を使用することです」と語りました。
ドリアンの殻は非常に厚く、果実の部分のおよそ60パーセントを占めています。通常は廃棄されて焼却され、環境問題を引き起こします。The Straits Timesによると、シンガポール国内だけで2017年に14,300トンのドリアン(推定1,000万個のドリアン)が輸入・消費されました。ただのゴミとして捨て去られる殻が医療物資に生まれ変わるのなら素晴らしいストーリーです。一連の研究から行われたPoC(概念実証)製品では、動物の皮膚の創傷被覆材としてテストされ、最大48時間抗菌効果を示しました。食品科学と技術の基礎研究は様々な領域で応用されています。今後ヘルスケア、生物医学的応用、特殊化学物質などにその知見が活かされると期待されています。
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