キャデラックは米ラスベガスで開催中のCES 2022にて、なんとも独創的なコンセプトカー「InnerSpace(インナースペース)」を発表しました。InnerSpaceはキャデラックの「Halo Concept Portfolio」の新たなプロジェクトとして発表され、将来の電動化および自動運転技術の可能性を表現していますが、最も興味をそそられるのは、GMのUltium(アルティアム)バッテリーの搭載方法でしょう。
キャデラックは昨年、「Halo Concept Portfolio」を立ち上げ、CES 2021で2つの電動コンセプトカーを披露しましたた。そのうちの1つ「Halo PersonalSpace」は一人乗りのヘリコプターの様な形体で、4基のローターを搭載したドローンの上に密閉されたキャビンがあり、渋滞などの影響を受けることなく乗員を運ぶことを目的としていました。
もう一方の「SocialSpace」は、最大6人が乗り込むことができ、他の自動車メーカーが実用化に向けて動き出している自律走行型ポッドカーに近いものです。そして今回発表されたInnerSpaceはこの2つの中間的な位置づけになります。
InnerSpaceには2つの座席を備えた自立走行型のコンセプトかーです。キャデラックは、InnerSpaceを、単なる箱型の輸送車両ではなく、より魅力的でラグジュアリーなものを求める人たちのための自律走行社の可能性をカタチにしたものだと語っています。
キャデラックによると、InnerSpaceは移動中の時間の使い方を見直し、安らぎと休息の空間を提供することをコンセプトにしたそうです。完全な自律性により、運転の責任から開放され、ドラマチックなデザインと先進のテクノロジーにより、キャデラックに乗って目的地に到達する感動を維持すると話しています。
InnerSpcaeは、ルーフとサイドの大部分にパノラマガラスを採用し、かなり開放的な印象のクーペに仕上がっています。フロントフェンダーとルーフまで広がった大きなドアと回転するシートで、楽に乗り降りできます。
ドアを閉めれば、前方には巨大なパノラマディスプレイが広がります。キャデラックによると、このディスプレイには、さまざまなARのエンゲージメント、エンターテインメント、「ウェルネス・リカバリー」のテーマが用意されており、生体認証入力によってナビゲートされます。OTAによって機能が拡張も可能と見られています。
公開されたInnerSpaceの画像はSF映画のセット(というより、SF映画のCGの中)にあってもおかしくないような、未来的なものばかりです。しかし、最も興味深いのは、外から見えていない部分にあります。
InnerSpaceは、バッテリーパックを1つにまとめてホイールベースに収めるのではなく、バッテリーモジュールを分散させて搭載しています。GM Ultiumプラットフォームは、ワイヤレスバッテリー管理機能を備えているため、バッテリーセルが隣接していなくても相互通信が可能だとキャデラックは述べています。また、この設計の自由度により、低い車高、スポーツカーのような極めて低い着座姿勢を実現するとキャデラックは指摘しています。
キャビンの下に大きなバッテリーパックを搭載するスペースを有するSUVやトラックはEV化が進んでいますが、一方、スペース的に制限があるスポーツカーのEV化は遅れています。EVの技術がさまざまな車種に広がっていく中で、このバッテリーの分散搭載が今後のEVの重要なポイントになるかもしれません。
そして、InnerSpaceのもう一つの強みはタイヤにあります。タイヤ内で共鳴音ピーク値を抑制するグッドイヤーの「サウンドコンフォート」を採用し、耳障りな深い音の発生を抑えています。また、タイヤの素材には石油系オイルの代わりに大豆油やもみ殻を原料としたシリカを使用し、タイヤの安全性を維持するためにモニタリングセンサーを内蔵しています。
SUVやクロスオーバーに力を入れているキャデラックが、果たして実際にEVクーペを市販化するかどうか。その可能性はかなり低そうです。実現化の可能性は低いながら、キャデラックはInnerSpaceによりGM Ultiumの予期せぬ新たな可能性の表現の実現には成功したようです。
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