米ゼネラルモーターズ(GM)は、3万ドル以下の電気自動車を発売するにあたり、コスト削減と性能向上を目的とした新たな合弁会社を設立すると発表しました。GMは、2025年までに電気自動車用次世代バッテリー「Ultium(アルティウム)」の調達、加工、製造の大半を北米で行う計画で、これにより、これまで肥大してきたサプライチェーンへの依存を減らすことを目指しています。
各自動車メーカーは、積極的な電動化へのロードマップを発表していますが、その実現に向けて頭を悩ませています。その悩みの種の一つは、バッテリーの調達です。GMは、2025年までに30車種以上の新型電気自動車を開発し、2030年には自動車販売台数の50%を電気自動車にシフトすることを目標としています。
ゼネラルモーターズは、すでにサプライチェーンの一部を自社で担っています。GMは、韓国のPOSCO Chemical(ポスコケミカル)社と新たな合弁企業を立ち上げ、北米にリチウムイオンバッテリー用の正極活物質(CAM)の製造に特化した加工施設を建設することになりました。GMのグローバル製品開発・調達・サプライチェーン部門のエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるDoug Parks(ダグ・パークス)氏によると、これは「両社からの多額の投資」により実現するのだそうです。
CAMはリチウムイオンバッテリーの重要な要素であり、バッテリーのエネルギー密度などをコントロールします。そのため、リチウムイオンバッテリーの価格や性能に最も大きな影響を与え、バッテリーセルの総コストの40%を占める可能性があると同氏は言います。バッテリー材料を製造する工場は、北米を中心に展開され、2024年までに開設される予定です。
GMは、アルティウムセルのCAM素材の大半をこの新施設で処理することを目標に掲げ、これらの施設で「すべてではないにしても、できるだけ多くのCAM材料を使用したい」と考えているとパークスは説明しています。生産量や能力に応じて調整したり、サードパーティなど他の供給ルートの可能性は維持する意向だそうですが、計画されている4カ所の工場がすべて稼働すると、合計で140ギガワット時の電池製造能力の提供が可能になると予測されており、GM/ポスコ社の工場で、GMのすべてのバッテリー需要を満たすことができると期待されています。
GMは現段階では、バッテリーのコストをどれだけ削減できるかについては言及していませんが、従来、生産コストと車両価格の両方でコスト増の傾向がある電気自動車のコスト削減には大いに役立つでしょう。パークス氏は、「当社のサプライチェーンに関する専門知識を、新しく設立される合弁会社やGMのサプライチェーンにおける新しい分野に適用することで、多くの価値とエネルギーをもたらすことができると考えています」と述べています。GMは、バッテリー全体のもうひとつの重要な要素である負極の開発にも取り組んでいます。
製造する電池材料は、GMがLG Energy Solutionの合弁会社である「Ultium Cells LLC」がオハイオ州ロードスタウンとテネシー州スプリングヒルに建設中の施設に供給され、GMCハマーEVやキャデラック リリックなどのEV車に使用される予定です。
GMはすでに米国に2つのアルティウムバッテリー工場を建設に向け動いており、GMによると、これらの工場は2025年頃の生産を開始し、約3万ドル(約342万円)の価格で販売されるシボレー・クロスオーバーEVなどの次期車両を担当する予定です。また、パークス氏によれば、バッテリー材料工場の新設により「さらに低価格のEV」も登場するとのことです。
GMは、この新拠点が数百人単位での新規雇用を創出することを約束するとともに、材料の調達に関する見識をさらに深めるのに貢献するでしょう。CAM製造工場の場所や、GMとポスコケミカル社双方の投資などの詳細は、「最終合意書に署名した後、すぐにでも発表する」とパークスは述べています。