ホンダは、米国で電動SUVを2車種(うち1車種はアキュラブランドから)発売する準備を進めています。米国では現在、複数のハイブリッド車と水素を燃料とするFCV(燃料電池車)を販売していますが、EV(電気自動車)は1台も導入していません。また、ハイブリッド車の中でもSUVは1車種しかありません。
この2つの新型車は、GM(ゼネラルモーターズ)のプラットフォーム「アルティウム」を採用します。ホンダとGMは2020年4月に提携を結んでいます。2車種とも2024年の発売を目指しており、2023年にワールドプレミアを迎えると思われます。
ホンダの米国法人の販売責任者であるデイブ・ガードナー氏は、AP通信に対し、新型EVはどちらもSUVであることを明かしました。一方は「Honda」のバッジをつけ、もう一方はホンダの高級車ブランドである「Acura」のバッジをつけることになります。
ホンダが内外装のデザインを担当し、「プラットフォームはホンダのドライビング・キャラクターをサポートするように設計される」とのこと。また、ハンズフリーの運転支援システム、スーパークルーズも搭載される予定です。
ホンダはレトロなスタイリングの『ホンダe』を日本や欧州で発売しましたが、北米には導入していません。コンパクトなボディサイズと220kmの航続距離では、米国のドライバーの期待に応えられないというのが主な理由とされています。
それに対して、GMのアルティウム・プラットフォームを使用する新型車は、ライバルを大きく上回る性能を持っていると期待されます。航続距離は、搭載されるバッテリーの容量や車体重量、要求される性能など、多くの要因によって異なりますが、GMによると、最良の場合で720km以上の走行が可能であるとのこと。また、前輪駆動、後輪駆動、全輪駆動に対応しており、複数の電気モーターを搭載することも可能です。
ホンダがSUVを念頭に置いているのは当然のことかもしれません。現在、ホンダの米国向けSUVの中で電動化されているのは、ベストセラー車『CR-V』のハイブリッド仕様だけ。しかもPHEV(プラグイン・ハイブリッド)ではなく、いわゆるマイルド・ハイブリッドであり、電気のみで走れる距離も1~2km程度と限られています。
しかし、SUVやクロスオーバーの販売は市場を席巻しつつあり、十分な航続距離を持つEVをパッケージングすることも容易になっています。そのため、GM初のアルティウム採用モデルは、傘下のキャデラックから発売される高級クロスオーバー『リリック』と、GMCの『ハマーEV』のようにピックアップトラックとSUVの両方の形態で販売される大型ユーティリティビークルになります。
ホンダとGMは、近年、協力関係を徐々に強化しています。2020年末には、研究開発から購買、コネクテッドサービスに至るまで、幅広い提携を発表しました。このようなパートナーシップが何をもたらすかは、すでに明らかになっています。
2020年初頭、GMが出資する自動運転開発企業のクルーズは、アルティウムをベースにした独自のドライバーレスポッド『オリジン(Origin)』を発表。ホンダは、クルーズのソフトウェアやセンサー技術、GMの電動プラットフォームに加え、エンジニアリングのノウハウを提供しました。その後、ホンダはGMやマイクロソフトなどとともに、クルーズに20億ドルの資金提供を行っています。
アルティウムをベースとしたホンダの電動SUVは、自動運転には対応していませんが、GMのスーパークルーズシステムをどちらか1車種、または両方に搭載する予定です。このシステムは、ステアリング・コラムに内蔵されたカメラでドライバーが注意を払っているかどうか監視しながら、高速道路でハンズフリーの速度維持・車線維持を可能にするものです。最近では、キャデラックの最上級モデルに搭載しているスーパークルーズの “強化版 “に、自動車線変更機能が追加されました。