日産は道に迷ったものの、再び道を見つけたようだ。7月15日に発表された新型「アリア」は、今までの日産車とは全く異なる魅力的なEVだった。今、日産が必要としているのは、まさにこのような再発明なのだ。
エクステリアは個性的で、他のEVとは一線を画しているが、最近流行りの目を引くような「奇抜」なスタイリングとは異なる。内装は、下手なギミックにとらわれることなく、ハイテクを感じさせる仕上がりだ。
能力も期待を裏切らない。WLTCベースの社内測定値で航続距離は最大610km(2WD、90kWh)、0-97km/h時速はわずか6.1秒。「EVは退屈」という古い価値観を見事に排除している。
また、ハンズフリーの運転支援システムなど最新技術を搭載している点も見逃せない。
要するに、私たちが長い間日産に求めてきたクルマなのだ。
日産はここ数年、「刺激」という言葉から遠ざかっているように思う。日本では良くも悪くも軽自動車に力を入れ、海外では縮小しつつあるセダンを必死でアピールし、クロスオーバーSUVはダイナミックな走りに欠ける。その一方で、「フェアレディZ」や「GT-R」など、ブランドの先駆けとなるべきモデルはとうに年老いて、世代交代の時期を過ぎている。
EVの分野で「リーフ」は売れ筋となっているが、その人気を活かすことができていない。リーフは他社に先駆けて販売されたパイオニア的なEVではあるが、後続のライバルに追い抜かれてしまい、今や後塵を拝する状況にある。
後継モデルの投入を怠ってきたからだ。率直に言って、車内のデザインは陳腐で、日産というブランドの魅力を損なっている。
したがって、日産が大幅な方針転換を急ぐのも無理はない。日産はすでにラインナップを縮小して販売力の劣るモデルを削減し、老朽化したモデルを置き換えることを発表している。
同時に、これまでよりも頻繁にモデルチェンジを行うことで、少ないモデル数の利点を生かし、ラインナップを新鮮かつ洗練された状態に保とうとしている。
昨年の「アリア コンセプト」では、その狙いが垣間見えていた。東京モーターショーで公開されたアリア コンセプトは、一見すると、私たちが期待していたものとはかけ離れたモデルに見えた。
フレームレスのガルウィングドアもなく、ダッシュボードにホログラムを搭載しているわけでもないし、人の好みを学習して驚かせてくれる自動運転AIを搭載しているわけでもなかった。
その代わりに私たちが目にしたのは、すぐにでも市販化できそうな現実味のあるクルマだった。事実、今月発表されたアリアはコンセプトカーとほとんど変わらなかった。これは、近年の日産に欠けていた、デザインに対する自信の表れである。
まだ実物に乗ることはできていないので、走りがデザインに見合うものかどうかは分からない。それでも、アリアのシンプルなキャビンを見れば、エクストレイルやムラーノのような既存モデルとは一線を画していることは明らかだろう。
大画面のツインディスプレイは最新のメルセデスにも見られるが、アリアほどこれが似合っているクルマは未だ見たことがない。既存モデルにとって付けたようなものとはまるで違う。インターフェースもモダンで鮮明だ。
「数は少ないが、より良いクルマを」
これは日産の言葉ではないが、間違いなく今後採用していく戦略だ。生産能力は5分の1に削減され、同時にモデル数も世界中で削減されていく。新型Zの開発が進められているが、大規模なリストラを実行するからには、そのメリットを証明しなければならない。
日産の改革が成功するかどうか、疑問視する声も多いだろう。しかし、アリアの発表によって希望を見出した人も少なくないはずだ。
確かに改革はまだ始まったばかりだし、アリアの販売価格や充電インフラ、バッテリー劣化に関する不安は払しょくできていない。だが、2021年の発売を今から楽しみにしているクルマである。
もし日産がアリアのようなクルマ(EVに限らず)を繰り返しデビューさせることができれば、改革はそれほど手の届かない目標ではなくなるだろう。
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