スマートフォンGalaxyシリーズで有名なSamsungは、電気自動車(EV)が1回の充電でおよそ800km走行できるバッテリーの新技術を公開しました。全固体電池のデメリットであるバッテリー寿命と安全性を改善する技術になっており、これにより従来と同じ重量で、航続距離の長いEVを開発できるようになります。
全固体電池の課題を克服する「析出型リチウム負極技術」
現行のEVに搭載されているバッテリーのほとんどは、液体の電解質を用いたリチウムイオン電池です。しかし、現在のバッテリー技術では電力密度に限界があり、航続距離の長いEVを開発しようとすると大型のバッテリーを搭載しなければならない課題があります。さらに、リチウムイオン電池は穴が空くと破裂する危険性もあります(Galaxy Note 7のように)。
また、リチウムイオン電池の代わりとなる、破裂する可能性が低く容量が大きい、固体の電解質を用いた全固体電池もあります。しかし、バッテリーの電極にデンドライトが発生しやすく、バッテリーの寿命が短くなり、結果的に安全性が低くなる課題があります。
そこで、Samsungは全固体電池に5マイクロメートルの「銀・炭素ナノ粒子複合層」を塗布することで、デンドライトを回避する「析出型リチウム負極技術」を発表しました。これにより、全固体電池の寿命や安全性を改善することが可能になり、全固体電池をEVに搭載することができるようになります。
また、Samsungによると、新技術を利用したバッテリーは、1回の充電でおよそ800kmの走行を可能にするようです。
EVの航続距離を大幅に改善
Samsungのバッテリー技術のイノベーションにより、従来のEVと同じ重量で、航続距離の長いEVを開発できる可能性が生まれました。レクサスが昨年発表したEV「UX300e」でも、航続距離は400km。今回の新技術を用いたバッテリーは800kmだと言うので驚きです。もちろん、実用化には時間はかかりますが、EVの将来はかなり明るくなったのではないでしょうか。